装具交付の実質審査とは

スマートドライブ

去年の秋、欲しいぃぃ、でも60万んんんん、と騒いでいたスマートドライブ。手動車いすを外付けで後ろから押してくれるモーターである。そのスマートドライブを初めて「交付」された人とお友だちになった。しかし、お引っ越しをされて、自治体が変わったことで、交付が取り消され、修理ができなくて困っているらしい。

まあ、基準外交付だからね。ただ、ちょっとあれっ?と思ったのは、一度交付されたものは、公的決定であるという事実が維持されて、修理の限りは交付が維持されると思ったんだけど?ということだ?

車椅子の2台交付とは

かく言う私も、神奈川県下にいたときは、本来は交付不可の手動と簡易電動2台交付されていた。実家が盛り土の上にあって、簡易電動は持って上げられないから、という理由で、手動は家内用、と、県のワーカーが言い訳を作ってくれたのだ。作成が遅れに遅れ、仕上がってきたときには、横浜に引っ越した後で、上物総取っ替え、というとんでもなく大がかりな修理もやったが、2台交付はそのまま県の決定が維持されていた。で、電動新調したときに「アンタ今マンション住まいでしょうが!」ということになって、手動の交付から外された。以後、手動の修理は自腹だ。それぐらいは、まあいいかと思ったし、将来的に本気で手動必要になったらどうにでもなるさ、と思ったから、引き下がったけどね。伝家の宝刀は、本気の時に抜くもんだ。

なので、修理に関してはそのまま持ってこられるんじゃないかな?と思ってたんだよね。自治体独自の基準外交付は項目がない、っていうことなのかな。

では、この件をどう基準に当てはめるか

ワーカーが理解しやすい形に持っていくとすると、こうなるね。

室内用の車倚子と、外出用の電動車いすを2台同時申請する。
「簡易電動だと、横浜の坂が上がれません」とか何とか言って、住宅地に1軒「ケース」を持ち、普通型を申請するか、「簡易電動はロングフレームなので入れません」と言って手動と併用する(これは事実。簡易電動としてはやたらショートなフレームの私のMSでもここのお宅のトイレには入れない。)

たぶん、これならワーカーは、ホイホイ言って申請受けると思うね。

すでにある装具のオーバーホールでいいと言っているのに、車倚子2台申請。制度的には問題なくて、決定する側としてもホイホイだとしても、納税者としては、腹立つね。
主婦だったら、何が何でも修理!と譲らないところだ。いや、ダンナの小遣いに任せる、というケースもあるか。
申請して通るかどうか試してみたい気はするが(よい子はマネしない。)

なんて下書きコメントをFacebookで書いて、でも、こりゃあんまりだなあ、と、思って投稿せずに置いたらば、なんと。
ワーカーが、全くこの通りの提案を持ってきた、って言うから驚いた。

現物修理は許可しないが、高価な車椅子2台なら交付する?

「装具の修理申請がNGなら、高価なマシンで新規作成申請すれば通るんでね?」という半分冗談半分本気の話。これを、マジでワーカーから提案されたらしいっつーから呆れる。

「横浜市」の特殊性-車椅子クリニック

前住所の自治体では、「簡易電動」の扱いで出ていたらしい。だったら、業者が制度で当てはまる形の修理を書けば出そうな気がしたのだが。なんか正面切ってワーカーに申請したらしい。

よーのすけの場合は、変則技で他自治体2台交付されていたが、修理を、先に業者に相談した。しかし、業者が手に負えず、そのまま直で業者から「車いすクリニック」送りにされたから、区のワーカーが関わった記憶が全くない。
装具に関しては、横浜市は「更生相談」という呼び方はせず、「車いす(装具)クリニック」と呼ぶ。ここで、リハビリテーションセンターのワーカー(更生相談所)、リハビリテーションセンターのエンジニア、医師、業者、本人が、頭を5つ付き合わせて相談する。それで、制度だけにとらわれない新しい開発も含めた、その人に合った装具が提供できる…という名目になっている。

クリニックで交付決定されてしまえば、区の方は決済するほかはない。横浜に来て、装具の話で、先に区に行った記憶って…。バッテリー交換とか、タイヤ交換以外ではないなあ。変なところの故障も、まず業者に直してもらってから申請していたような気がする。何しろ、県内では最古の業者で、制度・装具発展とともに歩んできたような老舗だから、その辺りのノウハウはよく知っていてね。現場では、他社どころかワーカーまで、「これ、公費で出ましたっけ?」とか聞いていた。

なので、本人に話を伺ったとき、なんで、ワーカーだーの、基幹相談だーの、リハセンの地域生活部門(と思われる)だーの、無関係な顔ぶれが、えんえん登場するのか不思議でならなかった。なんで、クリニック一発予約しないんだろう?させないんだろう?ってね。まあ、身体的不具合を伴う修理とかじゃないから、「クリニック」は思いつかなかったのかもしれないけれど。
おそらく「新調」という名目で、今回クリニックへ移送されたんだと思われる。業者を連れて、クリニック行って、これこれこういう条件を満たしてくれ、と言えば…。「やっぱり修理で行こう。」になる気がするが…。
どうかなあ?誰が出て来るかによるなあ。

車椅子クリニックの功罪

装具系を 切り離して専門家に委ねる横浜の方式には、いいところもあるし欠点もある。

うまくいったのはよーのすけのケース

よーのすけの場合は非常に良くマッチした。元々「郡」部の出身で、福祉事務所がなくてワーカーもいない、電動に関していえば、町役場で、「県のワーカーのお出ましを申請するための調査」から申請しないといけないような制度の中にいたのだ。県のワーカーは全県巡るので、調査に入れるのが4ヶ月後、そこまで待たせて、住環境調査と判定、支給決定しかしない。あとは業者に丸投げだ。付けられるだけ項目を付けてもらって、後は業者と私の2者で好きなようにできる、

ここでうまくいけば良かったのだが、手動感覚で設計したため、ドクターストップがかかるようなシロモノができてしまった。そこで担当業者がギブアップ、アセスメントを受けてくれ、と言われ、クリニックを申請した。担当業者の紹介で、最初に相談した医師の、「リハセンまで行くのかったるいだろうから、金沢文庫のケアセンターのクリニックにしな。今の担当は医師も業者の担当も優秀なのが来てるから。」との勧めに従った結果、利用者の少ないのどかな環境の中、実に細やかな、というか、まるで見当外れだった当初の見解から、散々試行錯誤を繰り返し、ちゃんと乗れるものに作り直された。とはいえ、もちろん制度の中の話で、「作りやすさと費用を考えると、新規で作成した方が効率がいいんだけれども」という大改造だった。「総合的な判断」と言いながら、それが実はできていないんだなあ、と、感じる一方、このときごじゃごじゃやったおかげで、私の電動車いす癖みたいなものが明らかになり、自分の電動車いすに何が必要かがわかったのもよかった。
何より、県部にいたときは業者との二項関係で、「注文と違う・違わない」等々煮詰まりがちだったのが、専門性を持つリハセンのエンジニアが噛むことで、歯止めになってくれるのもありがたかった。「私費でもクリニック受けてくれますか?」と聞いたらOKだそうだ。第三者が、しかも業者にとっては何より怖い支給決定権者が、3すくみの一つになってくれるのは実に助かる。

生活から装具が切り離される

しかし、他方で欠点もある。
区が管轄する生活の事柄から装具が切り離されてしまうのだ。
ワーカーも、生活の組み立てとは無関係の、装具オンリーのリハビリセンター所属のワーカーになる。ついでにもっと怖いことを言えば、住宅改造・在宅ハードウエア支援も、区ではなくてリハビリセンター所属のワーカーとエンジニア(主にOT)の役割になり、居宅介護の現況についてほとんど無知な「専門家」が指導、決済をする、という状態になっている。しかもこれが、同じリハビリセンター所属でも、「装具」とは部門が違っているらしく、連環がとれない。

私の場合、幸いなことに、最初申請したクリニックがきわめてのんびりしていて、ごくまれにおやつまで振る舞われたりするという、なんだかすごいクリニックだった。そのため、ワーカーとは、かなりいろいろ話をした記憶がある。当初のワーカー移動後も相談を持ちかけることもできたし、「こんな障害の人がいるんだけど、活動できそうな場所ありませんかね?」と、ワーカーが相談の電話を寄越すほどに、お互いに関心を持ち合えた。そういう信頼関係の中で、ああでもない、こうでもない、こうしたいんだけどどういう順番でやったらいいと思う?という、装具交付にに限らないかなり開けっぴろげな相談ができたのだ。ワーカーの助言は、当たることもあったし外れることもあった。それでも建設的な方向で指針が出せたわけだ。

しかし、本部リハセンターでのクリニックは違う。業者の担当者の派遣が金沢区から引き上げられてしまい、やむを得ずリハセンターに私も移籍した。噂には聞いていたが、スタッフがみな殺気立っている。移籍して3年以上になるが、実は担当ワーカーの名前も顔も知らないのだ。多分、初回に会って聞き取りはされているはずなのだが…。当時の手帳をひっくり返せば名前だけは出て来るだろう。しかし、その後、車いす仕上げるのに丸2年かかってあーでもない、こーでもないとやっているのに、1度も顔を合わせていない。いや、担当は変わっていないらしいから、現場にいることはいるのだろうが、挨拶すらしないほど無関心な関係なわけだ。こうなるともう、こちらとしては落としどころを決めて、まずはふっかけて、値切られて…という駆け引き的な申請しかできない。エンジニアとは、おやつの出るのどかな環境の中、関係を築いた後だったから良かったようなもんの…。

そして、おそらくこれは、「クリニック」が「リハビリテーション」センターであることからして、そういう傾向に陥りやすいのだろう。装具が合わなくて身体が痛い、とか、安定しない、とか、そういう「装具そのもの」についてのスタッフの関心も専門性も高いのだけれども、その装具をどういう場面で、何と組み合わせて何のために使うか、については、驚くほど関心が薄い。つまり、支給決定に限定された、「医師の診断」の範囲のことについては高い専門性を持ち、「ちゃんと仕上げるまでやる」のだけれども、暮らしとか生き方から、何が必要か、様々な社会資源を勘案しつつ、それに身体状況も加味して、総合的に導き出すことは、どうやらものすごく苦手らしい。

という状況の下、規定項目にないブツを交付に持ち込むのは…やっかいだろうなあ。この人は、引っ越し前は制度の内側にいた人らしいので、おそらく自治体のファクターのクセを無意識に使いこなしていたんだと思う。
やるとしたら、何よりもまず、スマートドライブを今やっている業者に、横浜市の指定業者を取ってもらうことだろうか。その上で、その業者を連れて、現状の条件に当てはまる装具を新規で作れますか?業者はスマートドライブしかないと言ってます。使えるものができるまで、半年ごとに新規作成しますよ、と、判断を投げることだろうか。私の母は、三十余年前にこの脅しをかけて、現物給付を助成給付に切り替えさせた強者だが…。

でもなあ。交付しなくても、決定する側は痛くもかゆくもない、ってところが、腹立つところなんだよね。

やっぱ、実質的なクリニックに持ち込めるかどうかがキモだな。んで、どのエンジニアと医師が担当になるか…。