国際福祉機器展2019レポート

自操するクルマ

従来、日新自動車とフジコンの2社がほぼ独占していて、大手の子会社や小さな企業が浮かんでは消えていた障害者向け改造(架装という)事業を大きく推進させている オフィス清水。…あっ、今年も話に熱中してて写真撮り忘れた!
私も運転して30年(!)だけど、ずっと懸案だった車椅子の車載用リフトで実用に耐えるものをやっとここで架装してもらえた。そのご縁で、いろいろ見せてもらっているが、少しずついろんなパターンが増えてきているのがすごい。
言っちゃなんだけど、老舗の2社は、私が運転しだしてから、新しい製品ほとんど出てないんだよね。しかも大きくなりすぎて、営業が取扱品を正確に抑えきれなくなっているあたりがまずい。

オフィス清水のハンドコントロール車改造のメインが、ハンドルリング式のハンドコントロール車、って言っても普通はわからないね。ハンドルにハンドルと同じサイズのリングが少し浮いた状態で載っかっているのを2本まとめて握り、リングをハンドルに近づけていくとアクセルが吹かせる、というタイプ。ブレーキは、別のバーで操作なので、ブレーキ中は、片手ハンドルになる。ブレーキ踏みながらハンドルをグルグル回す車庫入れとかどうするんだろうね、と、思いつつ、まだ疑問解消していないんだけれど。自分が用がないもんで、つい。
両上肢の比較的高い機能が要求される反面、クルマの運転してます、っていう気分は味わえるタイプのハンドコントロール車改造だ。

で、このハンドルリング式のハンドコントロール車改造が、オフィス清水のメインだったのが、それでは頸椎損傷とかには難しいね、ということで、コントロールバーと、ハンドルノブのパターンも始めたとか。フロアからバーを立ち上げるフロント式ではなくて、ハンドル下からバーを伸ばすコラム式を選択するあたりが、なんか、らしいな、と、思いましたよ。小さい力での操作や微妙な調整がしやすい代わりに、クルマの構造が変わってしまうフロント式に対して、構造を大きく変えなくても済むコラム式。後部のバッタンドアをスライドドアに変えようか、って改造をする人たちが何言ってんの、という気もしますが、運転席本来の足元の空間がそのまま維持できるのが魅力。デモ車はベンツでコラムシフトチェンジレバーしたが、フロントシフトチェンジレバーで、ベンチシート、とかだったら、かなり多彩な乗り降りパターンが実現できそうです。

私が昔、教習車に使わされた、アクセルから手加減なしで手元につながっていた、身長170センチの男性を想定したコラム式ハンドコントロール(我ながらよく乗れたと思う)とは違って、アクセルは電気制御なので軽い。ブレーキは、うちのフロント式に比べたら重いけど、反時計回りに30度、グリップの角度を変えたら実用になりそうな気がしたな。バー部分や受けはオーダーだそうなので、おそらく詳細な位置設定が可能。ただ、オーダーなだけに、バッチリ決めるのが大変そう。付けちゃってから、右、とか、もっと回して、とか、小さい調整ができるという点では、日新自動車のフロント式ハンドコントロール・プロトタイプに軍配が上がりそうです。無骨だけどね。ちなみにスマートな新タイプは日新自動車でも微調整効きません。蛇足ながら。

天井に車椅子を収納するキャリーも、今期からスウェーデン製の輸入取り付けを始めたそうです。国産品は壊れやすいそうで、顧客から要望があったんだって。
対してスウェーデンのそれは、北欧の白夜厳冬吹雪の中でも大丈夫に作られている代わりに、残念ながら、我が国では天井積載量規制に引っかかって20kgの車椅子体重制限があるのだそうな。
車椅子の体重制限に引っかけないために、国産品は華奢に作って、壊れやすいのかしらん。

「要望があれば、やってみたいじゃないですか。やってみたい、というお客さんがいれば。」と、社長。
そうなんだよね。この障害者業界、やってみたいユーザーとやってもいいよというベンダーが、双方でリスクとビジョンを共有しないと、まっとうな成果が上がらないんだよね、本当は。

いろいろ厳しい自動車業界。もともと、「障害者が自分で運転すること」には消極的でなかったけど。
2006年にトヨタがハンドコントロール車でラウムを発売したあたりが最大瞬間風速だったよな。
今年、メーカーは、何十台と出していたけど、とうとう1台も実車出してこなかったもんね。ホンダがマルチマチックのシミュレータの、「まだつながっていないんです」というのを持ってきてた以外は。
どっかのメーカーがテニスの国枝さんのインタビュー流しっぱなしにしていたけれど、あんな人が介護用車に乗るとは思えん…。いや、ああいうスーパな人なら、免許の問題さえなれば普通のクルマだってどうにか運転しそうでコワイよ。

こないだヨッテクで意味不明の相談をされた。「今、架装の人たちが、多様な要望に合わせていろいろな改造をしている。メーカーではもうできない改造だ。しかし、何かあったときに、中小企業で体力のない架装会社が責任を負うことになる。メーカーの想定しない改造はやめてもらった方がよくないか?」
「障害者」が運転することも想定して、架装のための構造を最初から考慮しなければならないところ(これだって差別解消法の想定内だ)、架装のための基本構造をどんどんなくしていて(と、架装会社の人が言っていた)、何寝とぼけたことを言いやがる。

トヨタ・ジャパンタクシー

やっと出てきたトヨタのジャパンタクシー。身内の販売会社からもポロクソだった一昨年去年はいなかったんだよね。タクシー会社の人がたかって質問攻めにしているところへ顔を出したらしくて、嬉々として乗せてくれた。助手席、後部座席はすでに畳まれた状態からのスタート。「慣れれば5分、すごく慣れれば3分。すっごくいっぱい改良したんです!」、と言っていたが、ほんとかいな。というか、そういう「慣れたドライバー」って、「ジャパンタクシーの営業マン」以外、どういう環境で生まれるのやら。常連さんのご指名?かしらん。

去年のヨッテクでは、「入るには入るが固定ができない。」ということで、ボツになった私のJXX-1MS2。固定できるかと聞いたら、以前は後ろのどこかへ引っかけていたのをキャスターパイプに引っかけることにしたらしい。
「シートベルトもしてもらっていいですか?」というギャラリーの声でフル装備して完成。
降ろす方はひそかに二人がかり。

「ここで乗れました、ってことで、拒否られたら伝えてください。」…そっちかい。ちょっと違うな。

やはり、スロープを降ろすだけの道幅が必要なのと、坂道では乗降できないのが、本気でユニバーサル導入しようとしている会社にはネックになるようで。あと、普通型電動が入らないことな。ちなみに、「簡易電動車椅子」って、日本固有の車椅子なんだよね。ジャパンタクシーって、オリ・パラの外国人観光客対策でしょ。いいのかなあ。みんなインバとベルモ、クイッキーで来るで。イマセンの普通型電動なんてミニカーみたいに見えるやつ。

「トヨタの販売店にタクシー呼んでもらえれば、乗降できるようにお触れを出してます。」って、販売店までタクシー呼ぶのかね。自分ちが坂の上で大変だからタクシー呼ぶんじゃないのかね。

業を煮やした販売店が、去年のヨッテクにメーカー呼びつけて、行き来交う車椅子を片っ端から乗せてみて、どれ一つ乗れない!というショック療法を試みたあとの頑張りは評価するけどさ。やっぱり根本的に残念なんだよな。

何十台と出品された介護仕様車で、どれ一つ、横から車椅子を積む設定がない、という段階で、やっぱ無理なんちゃうかね。
もっとも、皆が右にならえで、何も考えていないから、かもしらんけど。

ヤマハの簡易電動ユニット・カッパーカラー参考出品

ことしのヤマハは地味。おざなりに簡易ユニット並べました。試してください的な。オプションもなにも展示ないです、みたいな。

とはいえ、参考出品のモーター部分のカバーとホイールのセット。私はカバーに黒を入れているんだけどね。
暗くて遠かったのでブレブレでごめん。スポークとリムがカッパーで、カバーには黒字にカッパーで「Y」の連続意匠が入ってるの。
カッパーカラーでもいいけど、フレームの色と合わせて「Y」の意匠欲しい。ユニットごとは無理でもカバーくらいなら製品化できるんじゃね?

DSC_1528

階段昇降機

伊勢佐木3(2?)館と商店街とか、港南台タウンカフェと周辺商店街とか、階段物件だらけのところでこういうの共同で導入しないかな、と、このところ展示会のたびにつぶやいてますが。
民設の市民拠点って、みんな不良物件化した安いところに作るから、階段物件ばっかなんだよね。周囲を巻き込むという積極的なまちづくり求心力への意味を込めつつ、こういうの共有しないかなあ。

降ろし始め。

関内のボロビルに共闘オフィスを構えた某市民団体が、これの簡易版を、公費を取って導入したけれど、結局、怖くて実用にできなかったんだよね。一枚目の後ろに移っているやつ。小さくて軽い簡易版は、操作が難しくて、かなり熟練しないと使えるようにならないんだわ。で、よほどの覚悟がないと、実用化するほど熟練する前に諦めて放置しちゃう。

降ろしているところを後ろから見た。
手元にモニタがあり、進行先が見える。

これは、リフト先の階段まで見えるモニターが付いていて、傾きとかもジャイロが制御しているっぽい。
エレベーター工事中の駅とかで使われているけれど、いっぱい来るから操作員が熟練するせいもあるけれど、昔のアレとは全然違うのよね。

まあ、これが耐えられる強度が階段室にあるか、という問題はありますがね。

モルテン社製アシスト型簡易電動車椅子

さて、もう帰ろうか、というときに、ばったり出会った仲良しの車椅子屋さんに、「モルテンのオートクルーズ車椅子見た? アシスト型の。」見てない。だって、モルテンってお布団売ってるところでしょ? (←誤認です。スポーツ用品から始めて、ゴム製品の製造会社)

モルテン社製アシスト型簡易電動車椅子 「wheelly」

いわゆるアシスト型簡易電動車椅子なんですが、動きがシンプルというか直感的というか。ヤマハのアシストって、触った人しかわからないけどかなりクセがあるというか。手動感覚でばっと漕ぐとウィリーするし、道傾いてる、と思って、押さえるとブレーキかかっちゃうし、不随意な力のブレをいちいち拾って急アクセル急ブレーキかけるし。諦めきれずに何度も試したんだけれども、やっぱり扱える気がしなくて。

で、これ。だいたい思ったような動きをするの。多少漕ぎ方が不整でも、気にされない、というか、簡単にまっすぐ進む。ヤマハはまっすぐ進めるのが難しいというか、常に不随意制御しないといけない。左右差が大きくて、いい方の手と腕で悪い方のノーコンをカバーする、変な漕ぎ方をしていると思われる私の場合、アシストが過剰反応するっぽい。

停止にかなりの力をかけないと停まらないから(というか、握るとバタッと停まってとウィリーするヤマハの記憶が残っててびびったのかもしらん)、そこがもう少し柔らかくなるといいかもな。
本体+キ5ロの重量だそうで、電源切っても変わらないのが魅力。
あと、やっぱりユニット化して欲しい。で、OXに戻りたい。

やっぱりまだ手動に未練があるのよね。小回りきくもの。特にトイレとかさ。
私の場合、駅までの外歩き500mをクリアできれば、手動の方がいいよね、と思うことは多々ある。現実の今の体力を直視すると、もう無理かもしれないんだけど。

Wheeliy ウィーリィ 日常を旅するクルマイス

OXエンジニアリングのGWと日進医療機器のMSⅢ

なんかその、「車椅子を自分に合わせてガツガツ乗る」ような発想の車椅子の展示が相変わらず低調だなあ、と。目を惹くワンポイント機能!で、「素敵!」と言わせる車椅子メーカーはボチボチいるけど、「座面角変えられる?バックレスト角はどこまで変わる? バックレス高はどこまで上がる?アームレスト高どこまで下がる?車軸前出しどれくらい?座面と背面の張り調整は?」てなことを聞くと、答えに詰まる、ひどいと、「何ですか、それ?」になる。
やっぱり、私の使い方って変則的なのかなあ。それに、私、それほど規格外の体格とも思えないんだけど。身体障害者としては。
まあ、乗る方に合わせます、って、ベンダーとしては、めんどくさくて儲からないパターンではあるが。

そんな中、やはり盤石なのがOXエンジニアリングと日新医療機器。
いつも仲間内で盛り上がりすぎてて寄りつきにくいOXと、業者同士の接客で盛り上がりすぎてて寄りつきにくい日新。今年はどうにか取り付けたど。

OXのGW-JWX1、もっと真面目に検討するのだったよ。なんちゃって座位保持などと悪口言われることもあるOXのフレームだが、たぶん私には合っている。今回、割とベテランで実務家っぽい人に当たったのだが、作成時には、ない、といわれていた、コントロールバーのオプションや、座面角の調整なども結構できることが判明。
座面角とバックレスト角、って、姿勢の基本だと思うのだけれど、それを調整できるのにも関わらす、試乗の段階で試せない、というのは、かなり痛い。もちろん、全部分解して組み直さないといけないから、ものすごい手間であることはわかる。しかし、プライベートな試乗ではなく、「無駄なく良い車椅子を作るための装具クリニックでございます。」と、専門家が4名、雁首そろえて評価するのであれば、試乗の手間賃をちゃんと業者に支払って、実質的にアセスメントすればいいんだ。テキトーに見切り発車せざるをえない状況に追い込んで、作るから、あとからあーでもないこーでもない、という、改造をかけなきゃいけなくなるんだ。準備費で出費するか、修理費で出費するかの違いだと思うけど。
腰痛と体重移動のしづらさがあって、クッションのアセスメントを車椅子屋には勧められているところ。いっそ、修理と称してフレーム交換するとか。ちゅなこと言い出す奴がいるから、「ブツにしか金を出さない」という現行制度は一考した方がいいと思うよ。

次はOXのフレームかなあ、と決意を固めつつ、日新に寄ったら、現騎乗機の次世代フレームMSⅢのJXW1が。バイブが一回り細くなり、Xバーも1本になって座面下もすっきりし、サイドガートは丸パイプから扁平パイプに変わってわずかながら軽量化した。車載クレーンを落とした手前、少しでも軽量なのはいいことだ。パイプが細くなったことで、ベビーカーや自転車に取り付けるグッズと多分親和性ができると思う。
元々バイク好きが「かっこいい」と思える車椅子、というコンセプトだから、OXはパイプをゴツくする傾向があるし(たぶん、ガンダムよりザクがいい、というメカ好きのセンスだね、ありゃ)、調整幅が大きい分、接続部品も増えるから、どうしたって重くなる。

うーんうーんうーん。

住設・南4階

オリ・パラのあおりで会場が多層分解したらしい今年の国際福祉機器展。エレベーターの場所自体も変わっちゃったせいもあって、コミュニケーション支援とか、差し迫った用がない階のホールに行く余裕がなかったのよね。
エレベーター渋滞には巻き込まれなかった。例によって正門じゃないホール階から潜り込んだしね。多分、以前の車椅子もベビーカーも1台ずつしか乗らない2機が、2階までしか行かないエレベーターで、放火扉の向こう、スタッフ通用口みたいなところにある4Fまでつながっている大きい2機が新設されたやつなんだな、きっと。見つからないわ、トコへ出るやら不明だったけど、あまり待たなかったな。

レポート6の階段昇降機、最初はアビリティーズで見つけて、メーカーを聞いたら4Fだと言われてあまり行く気がなかった住宅設備の南4Fには行ってみた。

立ち上がりやすい=転がり落ちやすい? TOTOの最新便座

エレベーターの前でTOTOが出展していて「いろいろな人が使う場所のトイレ」というモデルを出していた。それで。
実は、横浜ワールドポーターズの汎用トイレ、2015年の改装以降、車椅子用のトイレがいろいろガタガタになっていて、汎用トイレとしての基準そのものを満たしていない、というレベルになっているのだが、便座の形状もすごく不安定なものになっていて、先日、小用ではない方の用足しをしようとしたら、安定して座っていられなくて、とうとう用が足せなかったのだ。こういう現象、ここ2,3年の便座にリニューアルしたトイレで時々起きる。何がいかんのだ?と、展示してある最新モデルを見たら、便座の後ろが大きく傾斜している。犯人はたぶんコイツだ。聞くと、立ち上がりやすくするために傾斜している、という。立ち上がりやすいということは、転がり落ちやすい、というわけだ。どこからも文句出なかったのかね。
せっかくなので文句言ってきたけど、どうかな。

噂のウィーログ

お布団とトイレとリフト展示の南4Fで、登録型バリアフリーアプリ「ウィーログ」のチラシを配っていた。まあ、当然、使ってください、と、押しつけられたけど。興味がないわけではないのだが、今ひとつ萌えないんだよなあ。
あれだけバリアフリーマップ的なものを作っておいて何を言うか、と、言われそうだが、他人の「バリアフリー情報」に縛られたくないんだよな、きっと。
「このイベント、バリアフリーだから行きましょう!」という誘われ方すると、途端につまらなさそうに見えてくるのね。ひと様を連れて行くときは、絶対的バリアフリー前提で徹底的にリサーチして安全確認して行きますが、そうでなければ、自分で好きなように探したい、というか、たぶん、教わって行くのが嫌なんだろうな。
まあ、いくらバリアフリー情報があったとしても、設備がないところにゃないんで、それくらいで行くのを取りやめるようにはなりたくないし。行ってみて「げげっ」ってのがなければネタにも何にもならないし。
むしろ、「こっちにきっと何かある!」という野生のカンを磨く方がいいなあ、私としては。