ルノワールとパリに恋した12人の画家たち展@横須賀美術館

ルノワールとパリに恋した12人の画家たち展に行ってきました。

ルノワールとパリに恋した12人の画家たち展の立て看板。モディリアーニ・バージョン
モディリアーニ『ポール・ギヨーム』

「ルノワール」は、大衆動員のためのウリ、本当は、ポール・ギヨーム et ドメニカ コレクションです。正式名称は、「ジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクション」ですが。
資本主義が原形をとどめていた時代、聡明で教養豊かな女性が富豪の奥さんになると、こういうすごいことになるんだなあ、という。

個人コレクションというものはとかく面白いもんです。集めた人の趣味の世界だから。(自国の画学生の教育のため、という上から目線で買いあさった松方はちょっと毛色が違うけど)。ここ3年くらい、ビュールレ、フィリプス、バレル、と、個人コレクションの来日が増えていてうれしい限りです。ストーリーが見えるんだよね。
今回はあのオランジェリーの基礎となった、若くして成功し、若くして亡くなった画商ポール・ギヨームと長生きしたその奥さんが集めたコレクション。あのオランジェリーが、個人コレクションスタートだとは知らなかったよ。旦那の方は現代につながるモダンが好きで、奥さんの方は過去の結果としてのモダンが好きだったのかな、というのが私の印象です。

モネ好きの私が見たことがないモネが1枚。「きれいなモネ」です。私としては出色だったのが、セザンヌとマティス。両方とも私は「好き」とは言えないのですが。
セザンヌは、構成と面、という特徴がものすごくよくわかる絵ばかりで、「そういうことか」と思ったし、マティスの「長椅子」良かったな。色の構成ってこういうことか!と、これまたよくわかりました。
目玉のルノワールも良かった。ポスターになっている奴、現物と色が全然違います。ルーブルお買い上げの完成品は多分どこかで見ていると思うのだけれどあまり印象がないんですが、今回のこれは印象強かったな。って、勘違いしてるかもしれないけど。
ルノワールの「桃」もいいです。ルノワールの描く学童期の少女がそのまま桃になったみたい。
実は夫妻のお気に入りは、アンドレ・ドラン という聞き慣れない名前の画家で、今回たくさん来ています。キューブ、フォーヴ、古典、ひょっとしたらシュールレアリスムと、転化したようで、おそらくこの人を軸にして見ると、この展覧会の筋が読める気がします。
ルソーはとびきり変なのが来ているし、ピカソもある意味ピカソらしくないのが来ているし、オランジェリーだから、絶対どこかで見ているはずなんだけど、コレクターを軸にして組み立てると、なんか新鮮。

絶対混んでいる、と、思ったので、開幕に近い日程で行かなければ、と焦りつつ、おやつ食べて気合い入れて、夕方入ったら、肩透かし食らいました。今日は「ことのほか空いていて、とはいえ昼間はそこそこでしたが。」とのこと。
間抜けなことに、老眼鏡も単眼鏡も忘れて。まあ、混むつもりで、必殺身障者手帳を使って、閉館前の空き時間狙いで何度か行くつもりだったので、それはいいんですけどね。1日で見られる予定じゃなかったのよね。(去年のモネは出遅れたのか異常だったのか。)
めがねがあると色が変わるし、めがねがないと形が変わる。

個人コレクションと言えば、来月から東京三菱一号館美術館で、「吉野石膏コレクション・印象派からその先へ」が始まります。こちらは、社員が勤務時間を楽しく過ごせるように、一部屋に一つずつ買い集めたアートだそうで、こっちも楽しそうですよ。