事業所の命運をつなぐ計画相談の運営とは

シンポジウム「障害者の未来をつなぐ計画相談の運営とは」。というより、「事業所の命運をつなぐ計画相談の運営とは」だな、こりゃ。

区役所と基幹相談室には、「計画相談に移行しないと支給決定しないよ」と脅され、業者仲間からは、「計画相談なんか事業として運営していけないよ。」と忠告されて、進退窮まっている多くの事業所の実情が、非常によくわかる内容だった。主催は、地域活動ホーム=区役所に迫られて何とか計画相談事業所を増やさないといけない基幹相談室。ほんと、ひねりも何にもありゃしない。

しかも、「目指せ!計画相談100%!」
…そもそもそれが誤解なんだってばよ。
計画相談100%じゃなくて、ケア計画100%なんだってば。

相談員ひとりが何件受け持ち、何人体制でこなせば収支が取れるか、に、ほぼ話は終始した気がする。月に、150件/1相談員、で、十分な黒字、100~130件で黒字、50~60人でトントン、だそうな。コスト意識を高め、業務をマニュアル化・形式化してルーティン化し、加算を取りこぼしなく全て取り、徹底的に効率化を図れば高収入事業化も夢ではないんだそうな。
要するに「普通にやったら赤字」と言っているわけだ。敏腕経営を前提にしている段階で、制度として破綻しているんじゃないかい?と、コンシューマーとしては単純に思うのだが。

「目指せ!月間200件!」を掲げているという事業所の主張の中で、それはアリかな、と、思ったことが一つ。「数をこなさないと手駒の数が増えない。担当者会議等で、その人に関わるファクターに強制的に関わることで、提案できる社会資源が増えていく。そして支援員の質が上がる。」
要するに、大量に効率よくこなすことは、経営に資するだけでなく、サービス向上にもつながる、というわけだ。それはもっともな話だ。自覚的にやれてればね。
他方、効率よくこなす、というのがどういうことかといえば、モニタリングで「うまくいった」と見なせるケースの手は抜き、「うまくいかない」ケースに力を入れるしかない。相談者の主観に依存するわけだが、これ、利用者としては「自分はうまくいっていない」と思っていても、「ほかから見たらすごくマシ」ということで「うまくいっている」になってしまうわけだ。相談員たちの腕が上がったとしても利用できないんじゃなぁ。
結局、「ある程度力がある」利用者は、自分で対処するしかない、と、いうことになる。それじゃ今と同じじゃん。

「基幹相談室」の役割が高く期待されていた。迷える相談員たちを導き、力づけよ、と言うのだが、これまたなあ…。

実際には、ほとんどの相談員が担当者会議を負担に感じていて、「手駒を増やす」というところまで行けていないのが実情だ。加えて、担当者会議に出てこられるような「ヒマな」担当者は、担当者会議専門要員で、利用者との面識どころか派遣ヘルパーとの面識すらない、という剛の者の会社もある。モニタリングとしての価値がどれほどあるのかはかなり疑わしい。
しかも、そこで入手する手駒は、もっぱら「福祉サービス」カテゴリーの手駒だ。自宅ではずっとヘルパーと一緒、日中活動は障害者施設で提供を受け、外出は移動支援か施設の遠足、家族とお出かけ、そしてステイやグループホーム暮らし、的な暮らしはフォローできても、その中に「一般社会との接点」が出来ると、もう想像が付かなくなる、らしい。
「福祉サービス社会」と、「一般社会の中にある」ことの間には、どうやら断絶があるらしい。両方の間にいる身には、ごく当たり前に連続しているのだが、「福祉サービス社会」の中でサービス提供している人たちには、「受給者」の生活は「福祉サービス社会」の中で完結してしまうエイリアンに見えてしまう傾向があるようだ。このギョーカイで多忙に仕事をこなせばこなすほど「世界が狭まる」「興味も狭まる」。
「福祉サービス社会」の中で暮らしを完結させるユーザーには、この「計画相談」は、優秀な人が付けば頼もしいだろうが、そうでない人にとっては、計画相談員の社会性を育てる力がどのみち必要になるだろう。
その結果、社会に接点があるなしによる、障害者の格差と分断はますます広がっていくだろう。

計画相談というものの業務が、一体どこからどこまでなのかが未だに不明なので、なんとも言えないのだが。
拙宅出入りの現職相談員たちも、「計画に合わせて事業所を探す」「手駒の5、6軒は問い合わせるが、それでダメだったら利用者に自分で探してもらう。」「計画書書くのとモニタリングだけ」(書類タイプするだけなんて交通安全協会かいっ!)と、さまざまだ。やっぱり、自分にとって計画相談の何が何がメリットなのか、ますますわからん。

このシンポジウム、「こういう運営をすれば、計画相談がこういう実質を持ちます。」「こういうサービスを実現するためにこういう運営をします。」的な話題は話題は一切なく、効率化すれば採算は取れる、という話と、離職をさせないために管理者は何をするか、という話題に終始した。

このシンポジウム、「行ってください」という依頼が、派遣事務所から来たのだが、一体何を期待したのやら。ユーザーに聞かせちゃいけない話ばっかしてんじゃん。

「障害者の未来をつなぐ計画相談の運営とは」チラシ