上肢1級障害でイヤリング。痛くない「ぴあり」

装着用補助具があるイヤリング「ぴあり」。聞いた妹が即座に言った。「それ、健常者仕様なんだよね?」そう。障害者自助具では決してない。決して。

京都の清水坂ガラス館 -Kyoto Glass Studio- が特許を持つイヤリング。耳に当たる部分はウレタンでできている。金属アレルギー対応の痛くないイヤリングである。S~LLまでサイズ展開があって、耳の厚さに応じて選ぶ。Ω型クリップ式で手を離した瞬間に滑り落ちるような私の耳でもM寸だ。もっとも、私の耳か標準的イヤリングと相性が悪いのは、耳かめっちゃ固いから、という説もある。

突然イヤリング装着機能を獲得する3ヶ月ほど前に、ネットで見つけてはいた。興味は引いたが、目をつぶってえいやっと買える値段ではなかったし、京都じゃさすがに見にはいけないし、と思っていた。それが、つい最近、近所の百貨店で催事販売に来ていたのだ。店先で販売員さんの指導を受けたら小一時間ではまってしまった。態勢の悪い店頭で装着できれば、自分チでコンディション整えてやれば実用レベルに達するはず。

すでに、普通のイヤリング装着機能は獲得していたし、迷ったのだけれども、新しいものを試したいのと、できるようになったら情報発信したいのと、そして、同じ「全身性」CPで、金属アレルギー、自称「すごい福耳」の友人、Yさんのことを思い出したのと。私がこれ実用レベルに達すれば、私よりは上肢障害のレベルが軽い彼女なら行けるはず。アレルギーまでは責任持てないが。
さんざん迷って、別のイヤリングやイヤーカフと重ね付けできそう、と選んだのがこのカプリコーン。出店期間はあと10日。できるようになってから連絡、と、必死に練習…しなくても、なんかあっさり着けられるようになってしまった。

で、Yさんに、イヤリングごときで遠路はるばる来る?と聞いたら、行く!と。

Yさんも、店頭で販売員さんに付ききりになってもらって練習。「役所の窓口もこれくらいきめ細かく教えてくれればいいのに。」とは、Yさんの危険発言。「役所どころか、PTによるリハビリだって、こんなにきめ細かく付き合ってくれないぜ。」と、私はもつと危険なことを考えたが黙っておいた。
まあ、自分より両上肢とも軽度だし、とたかをくくっていたら、伏兵がいた。Yさんは、隻眼で弱視で…ってことは、鏡がちゃんと見えていないのだ。イヤリング等装着において鏡が見えない、って、それ、すっげえ重度の障害じゃんか!ちょっと考えりゃわかりそうなもんなのに、見るまで思いつきもしなかったよ。すまぬ。
普通の人でもちょっと苦労する利き手と反対側への装着は、すごく大変そうだったが、背後から見ていると、マヒの左右差がなさそうだったので、左手でやれば?と言ったら、なんかあっさりクリア。左右差の大きい私は、利き手の右手一本で着ける。まだ左の付け方がわからなくなることがある。(挟みづらいのに加えて、補助具の構え方によって、ぴありの裏表が変わるのでごちゃごちゃになる。)
結局、1時間程度で両方できるようになった。どれが似合う?と店先にあるもの片っ端から着けてもらった私と違って、着けやすそうなものの中から気に入ったものを堅実に選んだ彼女。私の方がいささかノー天気でずうずうしいようだ。
店の方も、サイズ上デモ品ではなかったが、「着けられなかったら困りますから」と心配してくれて、新品を開封して試着もさせてくれた。

向こうのショーケースの前で試着してた女性も、耳を真っ赤っかにしてたから、最初はみな手こずるんだね。

で、彼女の方は、今のところアレルギーも出ず、福耳も痛くならず、3回目には装着完了しているらしい。私の方も似たり寄ったりの成功率だね。絡まりやすく時々外れるチェーン部分を外せば成功率は少し上がるけど。

以上、1級障害のふたりにできたイヤリング「ぴあり」のご紹介でした。

着替えや整容介助(私は洗髪後のドライヤー入れてるけど)を入れるほど重度ではなく、さりとて、人並みのことができるか、というと、そうでもない、私やYukiさんみたいな半端に重度の人にとって、いろいろ細かいところでの工夫と努力が結構必要なんである。より「重度」の人には、「できていいわねえ」とうらやまれるけど、「そりゃ、わっちの努力のたまものだい!」と言い返すわけにもいかないしね。いわゆる支援の「専門家」たちも、より重度の人たちの支援は、わりと「福祉」の範囲で「そこだけ」解決すればケースは終了するから(本当は続くはずなんだけど)、「福祉」の外のあれこれについては、情報を持たないし、そもそも興味も薄い。

これだけは経験的に言えると思う。「情報発信するところに情報は集まる。」今回だってYukiさんが、Ω型のシリコンイヤークリップが…って話を発信していなかったら、私もアンテナ張っていなかっただろうし。
こういう日常の情報を共有する何かを企画したいな。YOTEC…?じゃ、上述の理由からして、お話にならんしな。キッズフェスタ…?じゃ、年齢制限はるかにオーバーだ。バリアフリーフェア…?じゃ、私が過労死する。

とは言ってもこういうのって、「自助具」では断じてないし、たぶん、「障害者」のラインで持ってきたら、興味を引かない。ある意味ディープなネタなんだよね。うーん。