OX/MA−1日誌 8

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1センチこっきりの調整となかなか買えないクッションと

2007年7月17日  HCR2005で、悩んでいたX軸のガタツキをものの見事に解消して頂いて以来、懇意にして頂いているOXのS氏、担当地域が変わってしまったために、日程のすりあわせはいつも難航。「自立支援法完全移行の前に、修理交付をかけたいですね。」なんて言っていたのは、どこへやら。GW前から真面目に日程を出し始め、ようやく落ち合うことができました。場所は、なぜか某大学のロビーです。

 リクエストの内容は

  1. すねが余っている気がする。
  2. アームレストが高すぎて、肘がつっかえる気がする。
  3. バックレスト角が浅くて落ち着かない気がする。バックレストを起こして、高さを下げて、張りを甘くしてみたらどうか。
  4. 痛みなどがあるわけではないが、クッションのホールド感がもう少し欲しい。
  5. 相変わらず、ガタツキの締め直し。締め方教えてください。

の5点です。1と2は、前回、合わない別クッションで下に市販品を敷いてみて、ということで、勘で調整したら、やっぱり外れてた、という話です。やはり、座る部分は車いすの肝心要なんですね。
 それゆえ、やり方としては、

  1. 現在のクッションを基準にして、フットレスト・アームレスト・バックレストを調整し、後日クッションを変えて、平行移動する。(そんなんできるのか? 可動域の問題もあるぞ)。
  2. 適切(?)なクッションを決めて、それに合わせて調整(ほとんど初めからやり直し状態)

のいずれか。ネタが多すぎて、順番を間違うと、収拾がつかなくなると思われ、慎重に考え込むS氏。とはいえ、「ま、簡単な所から手を付けましょう。」 ごもっとも。

アームレスト

 肘がアームレストの内側に入ってしまう状態でした。「2センチ余地がありますね…。下げますよ…。何? 届かない? じゃ1センチね。」

バックレスト

 「バックレストを起こしたい? うーん、それは私としては、リラックスができなくなるのではないか、という点で、ちょっと心配なんですが…。背中を押すのがお好きなら、張りを強くしてみましょう。それで物足りなければ、起こしましょう。」 前回もそう言って、背シートの張りをいろいろやってみてくれたS氏、シートの張りを思い切り強くしました。けれどもやはりもの足りません。背フレームで腕が押されている感じです。やはり、フレームを起こすことにしました。車いすを降りて、調整です。

 そうなると、腕を後ろに回すのに、背フレームが邪魔になります。しかし、「よーのすけさんの車いす、たしか、バックレスト低い設定になってましたよね…。下げしろがあったかしらん。」 以前のマシンでは、漕ぐ邪魔にならないように、バックレストをギリギリまで下げたのですが、疲れるのと、頭が後ろに振られて、バランスが不安定になっていたので、ミディアムタイプにしたんですが、失敗でしたかね、とぼやくと、S氏曰く、「いや、そのときは方向性としては間違っていなかったんだと思いますよ。乗ってるうちに欲が出て来ただけです。あ、2センチ下げしろがある。よかったですね。」

 2センチ下げて、座ってみたところ、「わっ、低う!」 これまた、たったの1センチの調整になりました。たったの1センチ違うだけで、全然違うこのオドロキ。もう少し、お尻が奥に入るといいな、ということで、さらに背シートの張りを調整します。バックレストは、1,2週間乗り回してみないとわかりませんからね。これで様子を見てみてくださいな。」

フットレスト

 フットレストも、前回勘で下げたのが、思ったよりクッションがへたれだったため、足が余る状態でした。よーのすけ、足首の反りもあまりよろしくないので、余ると足の収まりが非常に悪くなります。まず2センチで下げてみると、届かない。足の短さ実感。これまた1センチ下げて、あらぴったり。「よーのすけさん、ご自分のベストポジションがわかっているから、話が早くていいわあ。」 どういうことですか?と尋ねると、人によっては、これとそれとどっちがいい?と聞いても「うーん?」と首を傾げてしまい、上げたり下げたり、出したり引っ込めたり、何回やっても決まらない、とのこと。この人は、そういうお客さんのベストポジションが決まるまで、ちゃんと付き合ってるんだなあ、と感心しました。しかも、自分が売ったわけでもないよーのすけの車いす調整にまで付き合ってるし。

 これで一周してみてください、と言われ、雨の中ちょっとだけ外に出ました。上り坂で力任せにバックレストに突っ張ってもぶれなくて安心感がありいい感じです。

おきまりの、X軸調整…か?

 車いすを売った業者には「気のせいだ。あなたが敏感すぎる。前の車いすと比べるからだ。」と言われて調整できず、S氏のお世話になるきっかけとなった走行中及び停止中のガタツキ。X軸の締め加減の微妙さらしいのですが、締めてもらって1ヶ月程度ですぐに揺れ始めます。

 S氏:「ヘンですねえ…。ひと月しかもたない原因として考えられるのは、(1)締め付けが甘い (2)使用がヘビーな事 (3)使用環境がヘビー、くらいなんですが、思いあたることはないですかね?」
 よーのすけ:「いやあ、所詮はコンジョなしのCPが使ってる車イスですからねえ。外出時にしか使ってませんし、使用がヘビーだとは思えませんけど…。せいぜい週2,3回、レンガ道を200mほど走るとか…(泣きそうになるほどスピードが落ちます)。でもこの程度で天下のOXがヘビーとは言わないですよねえ…。」
S氏:「そりゃ、ヘビーとは言いません。けど、天下の、は間違いで…。」
よーのすけ:「その先は言わない方が…。自分でできるかどうかはともかく、締め方教えていただけませんか。」
 なぞと、事前に漫才のようなやりとりをしつつ、真面目に考えていた件です。いつも気になるんだもん。

 「締めるのは、Xバーがメインフレームに繋がっているところ。六角2本で締めます。あれ? そんなに弛んでないな。それから、Xバーの真ん中。あ、これが弛んでる。…おっとっと、これはあまり締める必要がないんだった。締めすぎると畳まらなくなります。…あれえ、じゃあ、今回のはどこなんだろう。」 まさかとは思うが、と言いつつ、締めてくれたのが、キャスターをフレームに止め付けているネジ。これが当たりだったようです。普通はこれくらいのゆるみ締めたって感じないんですけどねえ…、と首をひねるS氏。よーのすけとしては、作った当初から、キャスター周りが怪しげに感じていました。最初はエア抜けしてたし、エアなおしたと思ったらがたつきだしてそれっきりになってるし…。

やっぱりなかなかクッションは…

「クッションですよね…。うーん。これはしばらく使ってみないとわからないし…。それに、すいません、私、以前にお貸ししたクッションが何だったか忘れちゃったんですよ。どんなクッション使ってます? 3センチハードと2センチ低反発ですか。低反発2センチでは意味がないですね…。私のお薦めとしては、市販の低反発クッションを車いすサイズに切って、市販のハードウレタンを下に足して、その下にベニヤを一枚入れるんです。クッションカバーはそのまま付いているのを使えばいいんです。今のクッションでお尻が痛くならないんでしたら、それがいいんではないかと思います。ウレタン? いや、安いウレタンでいいんです。ただ、厚さはいりますよ。最近、私、専らこれで作ってるんです。修理で付けるのなら作りますし、これくらいなら、よーのすけさん、ご自分で作られても…。」 とS氏。そりゃ、作っちゃう。作っちゃうけどね。Sさん、あなたってひとは、なんでこう、儲からない方向に話を持っていく?

 ついでに、アンダーネットについて聞いてみると、これまた何故か「作り方」を教わる方向に行ってしまいました。3Dにしなくても、四角い布に引っかけるものを付けて不下ればできちゃいますよ、と。

安定感倍増

 多分、このセッティング、見かけの不安定さと、乗った安定感、全然違います。ほとんどキャスターが浮かなくなっちゃいました。登り坂で、バックレストにふんぞり返って寄りかかっても全く平気です。思い切って寄っかかれる分、身体も安定します。その分、キャスターの抵抗も増した気はするけれど、まあ、こんなものなのかなあ。

 各々1センチずつの調整で、全く違う乗り物のできあがり。

NISSIN製アンダーネット

2008年2月1日 「お宅、OXも扱ってますよね。電動デモのとき、3Dアンダーネットを持ってきてくださいよ。」 絶対忘れてくるだろう、と、思っていたら、ちゃんと持ってきた業者のM氏。しかい、はい、と手渡されたのはNISSIN製。OXの、って言ったじゃーん、と文句を言ったらば、「同じものだから。それに安いし。」との答えを残し、料金を請求し忘れてお帰りになりました(20年近い付き合いになるんだけど、必ず何かを忘れて行く人なんだ、この人。)。NISSINって、後ろからこぼれないタイプのアンダーネットだったっけ?と、思いつつ、開いてみると、出て来たのはただの四角いアミ。どこが3Dじゃい、と思ったものの、OXのS氏のお薦めは、むしろ真四角だったよな…と思い出したので使ってみることにしました。

 よーのすけの車いすは幅が狭い上に、ショートフレームなので、縦も横もかなり余り気味です。

 で、実際に使ってみると、結構便利です。よーのすけの車いすは、スポークホイールなので、横からの出し入れができず、また足の間から出し入れするのは、ブツが大きいと難しい。で、アンダーネットに突っ込みたいものは、かさばるものばかりです。となると、「後ろに手を回して突っ込む」のが一番やりやすいんですね。これ、後ろがふさがっている3Dアンダーネットじゃできない。S氏、いい勘してます。

 今の時期、中では暑くて着ていられないコートを突っ込んで歩くのに重宝してます。

 もう一つ、これは真四角タイプの意外な使い道。相変わらず、迷子になってうろうろし、通りがかりのビジネスマンに助けを求めたよーのすけ。このビジネスマンが親切な人で、目的地まで押して行ってくれたのですが、最初押しにくそうにしていたのが、ちょっと待って、と後ろでごそごそしていたと思ったら、急に普通に押し始めたんです。後ろのことなので、何が起きたのかわからなかったのですが、そう、ご自分が抱えていたビジネスバッグをアンダーネットに乗っけたんですね。真四角タイプのアンダーネットは、介助者利用も考慮するのならば、3Dよりも使い方の幅があるのかもしれません。

限界に挑戦? 前出し6センチ! マジかよ

2008年3月12日 どうも前が重い。気のせいだと思ってはいました。キャストアップできるはずなのに、上がらなくて突っかかる。何ということはない段差で突っかかってもがき、助けてもらうのは、よーのすけとしては恥ずかしい。こういうマッチョ的発想は、障害者的にはよろしくないんだけれども。なにより、日々通っている下り坂のレンガ道、ここで、漕いでも全然スピードが出ない気がする、というのがとにかくおかしい(車いすコントロールがろくにできないくせに、下りで漕ぐなよ、って声が聞こえる)。一漕ぎで進む距離が短くなった気がする。タイルカーペットごときでめり込んで前に進まない気がする。ここしばらく、ほぼドア・ツー・ドアの生活だったのですが、久々に車いす+電車外出をし、「こいつはダメだ」と思いました。歩道がろくに歩けない。近々、電動車いすの連中と出かけるというのに、これじゃあついて行けない! 困ったぞ。

 というわけで、今回はOX関東S氏に泣きつくのを断念し、納入した業者に連絡を入れました。急いでいるのもさることながら、自宅では、調整の後、「じゃ、その辺一周してきまあす。」が難しかったので、隣接する大都市のリハビリセンターで週1回開催されている「補装具クリニック」に紛れ込むことにしました。よーのすけの住まいは「県域」に属しており、県にもリハビリセンターがあって、週1回、業者が集まるらしいのですが、これが、2時間や3時間では辿り着けないほど遠くにあるものですから、よそ様のリハビリセンターに行った方が早いんです。

 さて、どうするか。どうするかってったって、よーのすけは何のアイデアも浮かばない。前出し、っていったって、もう既に5センチ出してます。どう見たって「脳性マヒ・アテトーゼ型」の人間が乗る車いすじゃなくなってます。

 「重い? 突っかかる? じゃ前出し…2センチしましょ。」 いや、もう前出しするっていうわけには…。「なんで? できますヨ。穴がまだあるもん。」 いや、だから、そうじゃなくって。これ以上前に出すと、ナンボなんでも転倒の恐れ、っていう奴が…。「怖いですか。じゃ、とりあえず1センチ出しましょ。それで、回ってきて、大丈夫だったらあと1センチ。」 …多分、前出しするくらいしかネタは出ないだろうな、とは思っていたけどさ…。でも、前出し6センチだの7センチだのの車いすなんて、脊損の人でもあまり乗らない不安定マシンだよな…。大丈夫なんかいな。

 「ああ、あとこれだ。キャスターにゴミが巻き付いて、回らなくなってますよ。これでは重いわけです。これも掃除をしておきますよ。」

 珍しくビビってるよーのすけです。前出しを済ませて戻ってきた業者が言うのには、「すいませんけど、これでもう前出しは限界ですね。ブレーキの位置が、これ以上前に出ないんです。ブレーキ、固くなっちゃってますけど、大丈夫ですか?」 固いのは大丈夫だけど、ちょっと触るとすぐに外れるのが不安です。けど、けど…。ワタシの車いすはこうでなくちゃ、というこの感じの、この軽さに戻りました。とりあえず一周してくることにします。

 とはいうものの、段差とか坂道って、入らないところにはたくさんあるのに、欲しいとなるとなかなか見つからないのですよね、手頃なのが。リハビリセンターの玄関先の段差はとくに問題もなく、地下の車庫に外から来るまで降りていく、一部急な坂道も、「怖いかも」と思いながら降りて登ってみましたが、まあまあ大丈夫そうです。「慣れ」という感覚的な問題もあるから、もう少ししないとわかりませんね。しかし、キャスターとホイールを結んだ面積が狭くなってますので、不安定になっていることは確かですね。グラグラ感が増してますし、実際、勢いよく背中をバックレストにぶつけると、前がふわあ、と浮き上がります。まさか後転することはないと思うけど、微妙にゆがんだ地面にいるときは気をつけないと危ないかもしれないです。ネジのゆるみに気をつけて、車いす自体の不安定感を押さえてあげないと、不随意運動で転けやすいかもしれません。それとか、背中に荷物を背負ったりとか、背負った荷物を後ろ手にいじるときとか、後ろからアンダーネットの荷物をいじるときとか、どうかな、大丈夫かな。天井を仰ぐと前が浮く、と言うことはなさそうだけど。あと、思いがけないことに、前のめりにも倒れやすくなりました。

 車に積むための持ち上げは、感じられるほど軽くなりました。こんなのは初めてですね。ただ、前出しをする度に、自分が乗ってないときに、後ろに転げやすくなるのですよね。荷物を後ろに掛けっぱなしで立つと車いす倒れるかもしれないです。あと、坂道での移乗が不安かな。いつもの移乗している勾配では一応できたけど。

 今回の1センチ前出しは、これまでになくはっきりと感じられるほど、軽さに違いが出ました。バックレスト角を変えただけで、実はこんなに重くなるものなんだ、というのも驚きでしたけど。コンパクトになりすぎです。何かどっかで設定を間違えたんじゃなかろうか、という気がしなくもないです。


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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[Mail_ocean@mbc.nifty.com]