OX/MA−1日誌 6

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座面角を調整

 3月10日  前回の調整で、キャスターの引っかかり?を解消するために、キャスターフォークを上げました。あれだけ「座面の後傾はやあよ」と言ってたのに、前が上がる→座面後傾、という、ごく当たり前なことをすーっかり忘れていた間抜けなよーのすけ。上げた時に調整すりゃ1回で済むものを、まだ業者さん呼び出しです。今回は自宅に来てもらいました。「養護学校で風邪もらっちゃって。」と絶不調気味の業者さんです。

 「後傾なくしちゃうと、キャストアップしにくくなるよ。」とちょっと不満そうな業者さん。びっくり反射が出る脳性マヒには、普通そういう車いすは処方しないんじゃないのかい、と思いつつ、長時間座れないからと言って後ろを1段上げてもらいます。後ろが高くなったので、当然ですが、転倒防止も上がりますから、それを下げました。キャスター角を調整して乗ってみます。

 普通の椅子に近い角度になり、楽にはなりました。が、今度は椅子の奥行きのなさが気にかかる。前に滑り落ちそうです。「なんだか、腰が浅くて落ちそう」と言うと、「どこがきつく感じる?」と、背シートを上から押していって確認し、背張りシートを調整してくれました。

 ドリンクホルダーを購入。

エアキャスターをコアキャスターへ

 6月3日  なんだかガタつく。よーのすけのヘボスピードで走っても足元がガタガタうるさいです。 慣れてきたせいかもしれないけれど、全体的にカタカタ言うのが気になるようになりました。静止状態で体重移動すると、おしりの下でもかたんと言います。

 しかも、うまく言えないのですが、全体的にバランスがよくない感じがします。 重心が「高くて後ろ」に来ているような。今ひとつ、体重がちゃんと後輪に 乗っかっていないような、そんな感じです。力が逃げていくような。キャストアップもしたい時にはすんなり行かず、予想外のところで上がって転倒防止のお世話になります。

 チャットルームでぼやいてみたら、背もたれの角度のと前出しのバランスが合ってないんじゃないの、とか、MA−1って介護保険対応用に無理して作った安物フレームだから、よーのすけさんみたいなそこそこヘビーユーザーが使うマシンじゃないよ。フニャフニャなフレームだから、びっくり反応が出るような脳性マヒの人には普通勧めない機種だよ、なんていう根本的指摘まで飛び出す始末です。

 そう言えば、すっかり忘れていたけれど、「垂直軸のベアリングではないか?」と、業者氏も気にしていたキャスターのガタガタ音の件はどうなったんだろ。思い出したので、また業者さんを呼び出しました。

 「体重が後輪に乗らない? 重いってことかな? 足元から音がする? あ、キャスターのエアが片方抜けてますわ。これ、クレームが多くてね。ウチも困ってたんです。もうこれ扱いがないんでコアにしちゃいますわ。」今はエアが主流です、エア抜けなんかしませんよ、昔のエアとはモノが違いますから、と言って、こっちの心配をよそにエアキャスターを自信持って勧めた人はどこのどなたでしたっけ。つい半年前のような気が…。

 「全体的にガタガタする? そうですかねえ。別にどこも弛んでませんが…。ずっとOXの乗ってます? 前のと比べてません? …ませんか。OXのってつなぎ目にクッション入ってて、それが衝撃を緩めてるんで…。こんなもんだと思いますけどねえ。」

 「キャストアップしたい時にはすんなり行かず、予想外のところで上がる? こういう時はこうなって別の時にはこうなると言われても困るんですが…。キャストアップしやすく、とか、安定させて、とか方向決めてくれなきゃ。…よーのすけさん、キャストアップ出来ないんでしたっけ。キャストアップが安定して出来るようにならなきゃそこら辺思うようにいくわけないですよ。そうだ、7月に見本市があって出店するんだけど見に来てくださいよ。で、それまでにキャストアップ出来るようにしといてください。」…おいおい、アテトーゼ型脳性マヒにキャストアップ出来るようになれってか。しかも、キャストアップ出来るようにならなきゃ車いすは乗れないってか。それは車いす業者、しかもシーティングと調整で「あと10年で誰でも乗れる車いすを作る」と公言してる天下のOXエンジニアリングのFC店としてはどうなんだ。

 15分ほどキャストアップ指南。まず、車庫の入り口に置いてある段差解消用の鉄板(スロープ)上に後輪を乗せ、乗り上げると自然に前輪が浮く。その状態で、「浮いている」という感覚を掴む。
 次に、壁を背にして、キャスターを上げて、浮いている感じを再現する。介助が付くのなら、X軸にロープを結んで後ろに立ってもらい、転びそうになったら引き上げてもらうとよい。

 「はい上げて…。足が上がっちゃいますね。足上がっちゃうとバランス崩れるからね。」 …だからアテトーゼなんだってば。

 キャストアップ出来なきゃ車いすには乗れない、と公言してはばからない業者はけしからん、とは思うものの、出来ないよりかは出来た方が楽しいに決まってますので、とりあえずはおとなしく言うこと聞いときます。というか、だめよ、こういう自分が楽しいことしか勉強しないタイプは、何を頼んでも。

 面白いもんで、数日後、30分ほどスロープでバランス取る練習したら、完全コントロールはにはほど遠いですが、そこそこ空中停止出来るようになりましたさ。

 チャットで、膝下に下げられる「ユースフルポーチ」なるものが便利だと聞き、持ってきてもらって購入しました。とはいってもあまりCP向け、というか女性向けではなく、改良の余地がありそうです。

頭に響くコアキャスター

 さて、このコアキャスター、確かに軽い。かなりエアキャスター運が悪かったらしく、エアが完全に入った状態で取り回せた期間はほとんどなかったようです。リノリウムの床を転がした時、感動するほど軽かった。

 しかし、これが一歩外へ出ると、いきなり駆動効率が悪くなります。エアキャスターではものともとしなかった微細なでこぼこで、キャスターの推進力が阻まれ、スピードが出ないのなんのって。サスペンションって、こういう意味なんだ!と初めて実感しましたね。レンガ道や点字ブロックの振動ときたら、足がフットレストから滑り落ちるほどです。以前の車いすはコアキャスターだったわけですが、「私ってば、こんな乗り心地の悪いモンにずっと乗ってたんだ。」と感心しました。次はやっぱりサスペンション付きキャスターフォークかなあ。それとも、待てばもっとまともなエアキャスターが出るかしらん。

ようやくドクターにお披露目

7月16日  年金の等級の再申請でドクターのはんこが必要になり、ついでに車いすを診てもらうことにしました。「できました、とだけ言って、不満は言わんといてね。いくらでも直しに行くから。」とはくだんの業者さんの弁。そう言われましても… なにしろ「障害」が専門の医師ではなく、装具は出入りの業者に任せきりの整形医ですので、OXは初めて。業者さんも神経質になっていたようです。

 医師曰く、「リムに近すぎるね。肘曲がりすぎだよ。」とのお見立て。「今までのよりかはだいぶ遠くなってるんですが…(今までそんな意見言ったことがないくせに)。だったら、座面をもっと高くした方がいい、ということですか?」 医師曰く、「そんなことができるの。」 座面位置もバックレストの角度も全部いじれます。今、あちこちいじってもらってて、それで見せに伺うの遅くなりまして。」 「精巧に出来てるねえ。面白いねえ。いろいろ試してみられたらいいですよ。」 好きにしてみ、ってことですのね。ホント、みんなテキトーなんだから。

なんと! 前出し4センチ

7月29日  キャスターコアになったおかげで、真っ平らなところはいいものの、やっぱり戸外の効率悪すぎ、ということで。見本市で調整させることにしました。いくつか試してみたいことがあるのですが、ちょっと危険なニオイがする実験です。調整して、会場を一回りして様子を見て、また調整試してみてダメだったら元に戻そう、という魂胆。

やってみたかったのは、

  1. 漕ぐ時肘が曲がりすぎる気がするので、座面をもう少し上げてみたい。
  2. 背もたれをもう一段起こして、車軸をもう1センチ前出ししてみたい。

いずれも、転倒の危険も増しそうな感じがする、ヤバそうな調整でしょ。

  「リムが近すぎ? うーん、そんなことはないと思うけどなあ。車軸を前に出したら漕ぎしろが出るし、また感じが変わるし。背もたれもねえ。起こすと窮屈になるよ。」ということで、とりあえず前出しを1センチ出すことにしました。

 とりあえずこれに乗ってて、と渡されたのが新製品のSS。ヒョウタンツギ、じゃなかった、ヒョウタンツフレームの新製品です。今回の見本市ではSSしか持ってきていなかったようです。転倒防止付けてないから気をつけてね、との声を背に、走り出してちょっと驚きました。軽い・ガタガタしない・力が逃げない。剛性感がある、というのはこれを言うのか。いや、こっちと乗り比べてたら、多少高くても、多少重くても(これは悩むけど)、剛性感がある方を選ぶな。買った時、値段はそれほど気にしてないから、って言ったつもりだったんだけどなあ。何せ40万のソプールが選択肢に入ってたんだから。転倒防止なし・結構前出しを気にしながら、会場の外にも出て外を走ってみましたが、でこぼこでの抵抗感もかなり少ない。

 ウワサの日進医療製4WD電動にも乗ってみたりしながら一回りして、自分の車いすに戻りました。「ほんじゃ、一回りしてきてください。こわいようなら戻しますから。」と言うことで、会場内と会場の周りをくるりと一周。移乗の時がちょっと不安定なだけで、結構大丈夫そうです。勢いを付けなくてもいい分、キャストアップのコントロールもしやすそうだし、心配なのは上り坂でしたが、軽くなる分、これもむしろキャスターが上がりにくい感じです。心配したほど変化なし。

 とはいうものの、でこぼこでの抵抗は、相変わらず大きい。「やっぱ、サス付きフォークですかね、重くなるけど。」と問うと、業者さん答えて曰く、「そういう時こそ、キャストアップして走るんだよ。そういや、キャストアップ練習した?」 …だからさ、キャストアップ走行が出来たら脳性マヒじゃないってば。自力で電車乗り降りできて、エスカレータも自力で使う人だって、キャストアップ走行と電車を前向きで降りる、というのは出来ないのが普通なんだから。脳性マヒの緊張を甘く見ちゃあいけないです。よーのすけ、脳性マヒでなかったらなんで車いすなんか乗るもんか。

 「フォーク交換は、修理交付申請ということになりますね。前出しは大丈夫ですね。じゃまたということで。」

 かくて、私、よーのすけは、前出し4センチなどという、半年前には考えられないような、びっくり反応で反っくり返る(ことがある)アテトーゼ型脳性マヒがいいのかい?という車いすに乗ることになったのでした。知ぃーらない、っと。

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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[Mail_ocean@mbc.nifty.com]