これから車椅子を作る人へ -2

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車いすの種類

「車椅子なんて、どれも同じじゃん?」

 とんでもない。車椅子の種類によって違うのはもちろんですが、同じ「自走式・手動車椅子」、つまり、「車椅子」といって、まず最初にイメージする見慣れた「車椅子」、つまり、このサイトのトップを飾っているような車椅子でも、実はメーカー、対象ユーザーによって、取り回しは大きく変わってきます。
 本来、「車椅子を作る」という話をするのであれば、電動式、補助動力つき、手動式にしても、介助型にストレッチャー型、ハイバック…等々、いろいろ説明しないといけないのですが、よーのすけ自身、使ったことがなく、説明の能力を持たないので、触れません。
 以下、「車椅子」としているのは、車椅子各部の名称と働き」に載せられている、よーのすけが使っているタイプの車椅子のことです。

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車椅子は乗り手の身体に合わせるもの

 一般人にはあまり知られていないようですが、車椅子は原則として、ユーザーの体型に合わせて作ります。少なくとも、自分で取り回すケース、また、長い時間にわたって座る車椅子は、体型に合わせなければなりません。最近、介護用品ショップ・通販などで、車椅子を売っていますが、あれはやはり間に合わせ的なものです。あれで一日の大半を過ごす、なんてことは出来ません。
 よーのすけ程度の運動能力があったって、腰とお尻と背中、全部痛くなってしまいます。

 体の状態に合わせて、座面の前傾・奥行き、背もたれの高さ、椅子の高さなどを調節します。長時間座る人にとっては、疲れ具合に関わってきます。シート幅、シートの高さとタイヤ位置の関係などは、駆動効率に関わる重要なポイントとなります。

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レディメード・オーダーメード・モジュール車椅子

 病気などで、一時的に使う場合、また、普段は使わず、特別な場合だけ使う人は、レディメード車椅子を購入することが多いようです。比較的安価なものが多く、「交付」の対象内になります。とはいえこれもたいていS ・ M ・ L と3サイズ程度は展開しています。よーのすけ程度だと、Sでも大きくて手に余ります。

 つい数年前まで、日本では、車椅子を常用するユーザーの車椅子といえばオーダーメードに決まっていました。これに対して、欧米では、車椅子は様々な規格の部品を組み合わせて作るイージーオーダー的な「モジュール車椅子」が早くから主流になっていたそうです、最近になって、舶来もののこれらの車椅子は、そのスタイリッシュに洗練されたデザインから、注目を浴びるようになっています。

 もちろん、モジュール車椅子はデザインの点からだけ注目されているわけではありません。初期に注目されたのは、その「長持ち具合」、アフターケアの点です。日本の車椅子は通常5年の消却期間をめどに作られています。そのためあまり堅牢に出来ていないと言われています。確かに、障害の程度は変化することを考慮すると、5年乗換は適当といえるのかもしれません。しかし、「元気で力持ちの車椅子ユーザー」にとっては、あまりにも「ちゃち」なものなのだそうです。力入れて漕ぐと折れたりするらしいです。モジュール車椅子は、基本フレームを身体に合わせたら、そのあとは部品を入れ替えることで調整していきます。ぴったり合わせた基本形を変えることなく使っていくのが基本構想なので、大変丈夫にできていると言います。また、オーダーメード車椅子は破損したとき、車椅子を丸ごとメーカーに出さなければなりません。欧米滞在中に受傷し、あちらものの車椅子を使っている分には、破損部品の型番を電話で発注すれば、航空便で2、3日あれば届き、簡単に付けられるけれど、日本製だと修理に出してから出来てくるまでに半月以上かかる、なんて話も以前はよく聞かれました。オーダーメード車椅子の場合、致命傷でなければとりあえず応急処置でしのぎ、部品が来るのを待つ、というわけにはいかないのです。よーのすけも、ほんの一昨年同じような目に遭ってます

 ついで、モジュール車椅子の利点として、乗りながら調整することができるということが挙げられます。まず、購入する時点で、「乗ってみてから」買うことが出来ます。おおかたのスタイルを決め、あとは実際に乗ってみてから、少しずつ調整していくことができるわけです。このシステムによって、意外なことにオーダーメード車椅子よりもしっくりくる車椅子ができることもあります。
 「服を買う」ことを考えてみて下さい。スタイルブックを見ながらデザインを考えて、自分の寸法で作ってもらっても、なかなか自分の思った仕上がりにならないことの方が多いものです。やはり、実物を着てみて、少し手直しする程度の方が、イメージ通りになることが多いのではないでしょうか。さらに、購入してからあと、乗り方の変化に応じて、調整することも可能になります。車椅子は、乗るほどに実は上達します。逆にまた、できると思ったことが、やっぱりできないことがわかったりもします。そうしたら、それに合った形で、部品を替えていくことも可能なわけです。

 国際福祉機器展で、モジュール車椅子にちょっかいを出していたところ、試乗させてくれたあるメーカーの人に、「ずいぶん大きい車椅子に乗ってますねえ」と言われたことがあります。いつも、「あんたの車椅子、小さい」と言われていたので、びっくりしました。その後、現在の車椅子の幅をどうやって決めたんだっけか、と頭をひねっていましたが、やっと思い出しました。
 「冬のコート着用」を考慮して決めた幅だったんですわ。冬と夏では、身体の幅、8cmやそこらは違いますもんネ。ハンドリムの位置、身体から4cm離したら、タイヤの駆動効率、相当変わりますわ。当然、身体に近くコンパクトな方が力が入ります。とはいえ、いっぱい着込む冬の場合、ぴったりサイズの車椅子だと車椅子に乗れなくなる、または、乗ったはいいけど抜けなくなる可能性があります。
 大きさが固定されないモジュール車椅子は、もちろん製品にもよりますが、そういう場合の調節もたやすくできるというのも、大きなメリットだと思います。

 他方、オーダーメード車椅子にも、メリットはあります。モジュール車椅子は、現在比較的値段が高く、交付の対象になりにくいと言われています。理由は後述しますが、自己負担金が増えるというだけでなく、場合によってはそもそも対象にならないこともありえるようです。また、今のところ選択の幅が狭いように思われます。身体状況によっては合う車椅子を見つけられないかもしれません。「脳性マヒ」という、どうも規格化しにくい身体の持ち主であるよーのすけは、特にそう感じます。それと関連して、まだ出始めたばかりのモジュール車椅子は、実際に、ユーザーに車椅子を合わせる技術を持った技師・そうした情報を持っている医療機関・福祉機関が不足しています。技術者側の知識の蓄積としては、やはりオーダーメード車椅子の方が圧倒的に多いようです。

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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[MailTo_ocean@mbc.nifty.com]