乗り方によって、車椅子の条件も変わる
大きなポイントは、医師や理学療法士、装具士が考えるでしょうから、ここでは、相談する前に、ユーザーとして知っておく方がいいことをいくつか挙げておきます。車椅子制作者に希望を伝えるためのポイントとなるものだと思います。
車椅子の使い方はユーザーによって違います。例を挙げてみましょう。
- 車椅子に座りっぱなしかどうか。普通の椅子や、車に乗り換えたりしないか。
絶対に車椅子から降りない、という人の場合、折り畳み機能などは無用の長物になります。
- 自力で漕ぐか。
背もたれ(ハンドル)の高さが変わるし、ハンドル部にブレーキをつけるかどうかの選択。力に自信がなかったら補助動力を付けてみるか、とか。
- 車椅子ごと抱えられること(おみこし)の可能性は?
この車椅子ではおみこしがあるトコへは絶対行かないぞ!と割り切れるかどうか。おみこしの可能性がある場合、あまり大きくて重いものは不利になる。補助動力つきも駄目。
- 自分で車椅子持ち上げたりとかする?
車への積み降ろし。力がない人は軽量化の努力をしないと…。あるいは積み降ろし用のリフトやクレーンを探してみるか。
- 車椅子への乗り降り
一旦立って座るか、腕の力だけで乗り移るか。立ってから座る人の場合でも基本的に立てない人が立つわけだから、足置きの可動性、スカートガードの形などに気を使いたい。
使うシチュエーションを具体的に考えて、条件(希望)を挙げていきます。以下に車椅子の使い心地を左右する条件を3点挙げてみました。いまいましいことに、この3つは相反する条件なんです。並び立つことはなかなかありません。上で例を挙げた車椅子の使い方をにらみながら、優先順位を決めることになります。でも、たとえ現状で相反したとしても、あなたの挙げた条件を機に新しい技術が生まれ、後進の車椅子ユーザーに貢献できるかもしれません。自分の条件を満たす車椅子を「作れ」とがんばってみるのもいいかもしれませんよ。
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駆動効率の良さのポイント
腕が十分に動かせること
- 背もたれの高さと関連します。背もたれが低い方が、肩の動きが妨げられない分、腕の振りが大きくなり、駆動効率が良くなります。その代わり、姿勢の維持が難しくなります。腹筋・背筋が弱く腰に力がない人や、上体が不安定な人は、うまく座れなくなります。しかし、こういう人は、当然腕の動きも良くないわけですから、腕の振りを妨げられるのもこれまた困ります。どこかで線引きせざるをえませんが、その落としどころが問題になります。[姿勢保持能力と相反]
- シートの幅。なるべく狭い方が、身体に腕が近づくので、力が入りやすい。
お尻が椅子からずり落ちないこと
姿勢維持能力と関わる点です。姿勢が保持されないと漕ぐのにも力が入りません。
しかし、ここでも、駆動力を高めるための姿勢保持と、身体に負担をかけないための姿勢保持は、少しズレがあるように思われます。
- シートの後傾角度。標準は4cmとなっています。人間は座るとき、実は腹筋と背筋と足で身体を支えています。だから、足に力がないと、椅子からずり落ちやすくなります。車椅子の場合、前進中は前向きの力がかかってますから、車椅子が急に止まったりすると慣性の法則に従って前に飛び出してしまいます。しかし、一般に、疲れない作業椅子は、前傾気味の方が望ましいとされています。後傾していると、長時間座り続けるのはつらいという場合もあり、難しいところだど思います。
ちなみに、よーのすけの場合、後傾差は1cmとなっています。落ちることよりも、背中・腰痛の回避を重視した選択です。
- 普通の折り畳み式車椅子のシートは、ビニールレザーかナイロンキャンバスでできています。これが両方ともよく滑る。車椅子用のクッションを敷きます。これは、裏に面ファスナーがついており、車椅子シートに固定されます。車椅子作成時にオプションとして追加します。クッションの高さ込みで座面の高さを決めるので、クッションは作成時に指定します。
車軸の前出しというものです。普通、市販の車椅子は、背もたれフレームの延長上に後輪の中心が来ます。後輪の中心が後ろに行くほど安定感が増す代わりに、前輪への負担が増え、駆動効率が悪くなります(重くなる)。反対に、後輪の中心が前に行くほど、体重は後輪に乗るので、軽くなりますが、その分後ろに倒れやすくなります。そして、後ろに倒れやすいということは、前輪上げがしやすいということでもあります。標準は背もたれフレームの延長上。上級者になるに連れ前出しということになりますか。転倒防止の補助輪を後ろに付けることも可能です。
よーのすけの車椅子は、現在標準仕様で作られています。
ハンドリムの握り具合と材質
- 材質が堅いほど、駆動効率はいいです。
- 堅い材質とは、金属ですが、これは滑りやすいという欠点があります。
- ブラスチック素材もあります。これは、あたりがやさしく(冬も冷たくない)、滑りません。さらに滑り止めのため波形になっているものもあります。しかし反面、夏は手にひっつきすぎて、摩擦でやけどしそうになります。
車椅子そのものの重さ
意外と言えば意外。当たり前と言えば当たり前ですが、車椅子そのものの重さが重ければ、漕ぐのにも力がいります。
Yoonosuke Hazuki[MailTo_ocean@mbc.nifty.com]