椅子の折り畳みは、基本的に、車椅子の椅子としての機能を犠牲にして、コンパクトさを追求するものです。キャンバス地一枚の椅子なんて、座りやすいわけがありません。ディレクターズチェアなんて、しょっちゅう立って怒鳴っているディレクターだから座っていられるんで、あれで、デスクワークは考えたくないでしょう。聞くところによると、何もかもが大きいアメリカでは、車も大きいので、車椅子は畳まずに車に乗せられるのが普通だとか。畳まない車椅子のほうが一般的らしいです。そうなると、車椅子は移動手段としてよりも「椅子」としてとらえられ、座る機能が充実します。
キャンバス地一枚のシートは、お尻が痛くなるというのもさることながら、安定感がないので、姿勢が悪くなりますし、姿勢を保つために、腰に負担がかかります。専用の座布団を入れることで、姿勢保持能力はかなり高まります。また、下半身を全く動かさない方の場合は、じょくそう(床ずれ)防止の高機能座布団を入れることもあります。
お年寄りなど、ほとんど車椅子からずり落ちかけているのが気になります。レディメード車椅子を使っている人、自分では漕がない人でも、座布団だけ、ちゃんとした車椅子用座布団を入れると、腰が据わりますので、うごきが楽になります。
また、車輪に対して座面が高くなりますので、力が入りやすくなります。デパートなどの貸し出し用車椅子で、レディメード車椅子を使った経験からすると、これらの車椅子は、座面とタイヤの高低の差が小さいようです(よーのすけの背が低くて腕が長すぎるだけか?)。骨折などで一時的にレンタルして、なんだか動きにくいなあ、と思う人も、クッションを入れてみて下さい。2枚組800円とかの普通の化繊のクッション入れるだけでもだいぶ違います。(この場合、シート幅より広いクッションを詰めて入れるか、ひもなどで固定すること。クッションはナイロンキャンバス地の布目に沿って良う滑りまっせえ。)
かくいうよーのすけですが、初代車椅子は座布団無しで乗っていました。車に積む車椅子というコンセプトでしたので、車に積み込むにあたり、座布団を外す、という作業が増えることを疎んじたためです。車椅子を車に積むということ自体、できるようになるかどうか危ぶんでいた状況だったので、少しでも手間を省きたかったんです。当時はまだ長時間車椅子に座っているという経験がなかったので、車椅子は純粋に移動の道具と割り切っていました。
しかし、車椅子で遠出する機会が増えると、このキャンバス地シートは、腰にこたえます。それで車椅子買い換えにあたり、座布団を入れたわけです。それによって、駆動効率が大変高くなったのは驚きでした。ちゃんと座ることの大切さを知りました。
とはいえ、座布団が入ると、畳むのがめんどくさいのもまた事実。雨の中、車に積むときなんて、「きいーっ」と言いたくなりますよ。外で誰かに畳んでもらうときも、座布団外しから指示しなきゃならないしね。
前項からもおわかりのように、この条件を高くすると、座り心地の条件が後退します。このことは、心に留めておいてください。
いくら座り心地が悪くなるといっても、現実の車椅子移動環境を考えると、車椅子のコンパクト化は必須の課題です。リフト付きの車椅子用車両が増えてきたとはいえ、タクシープールでリフト付きタクシーを拾うことはまず無理ですし、リフトバスの普及も当分先になりそうです。自分で運転する車椅子ユーザーともなれば、なおさらのこと。車椅子ユーザーのドライバーを想定した車椅子の積み降ろしのアイデアは、まだまだ貧弱なものです。
とはいえ、車椅子を車に積み込むにあたって、必ずしも二つ折りにしなければならない、ということはないのでは?という気もします。椅子の部分は座ることに徹してがっちり作って、車輪の部分だけ外してもいいわけです。普通のセダンのトランクなら、それで入るでしょう。実際、今の車椅子、タイヤはワンタッチではずれるんだし。車椅子ユーザーが自分で積むのはしんどそうだけど、誰かに積んでもらうのなら、それもアリかな、と思うんですが。でも、よーのすけの寡聞によれば、今のところそういう発想はないようです。
車椅子の軽量化は、ここ10年でかなり進んだと思います。車椅子ユーザーのドライバーが増えてきたせいでしょう。
まず、素材が変わりました。スチール製約20Kg!から、アルミ製10Kg台前半への転換は画期的でしたし。チタンともなれば、さらに1〜3割程度の軽量化が見込めるようです。ハンドリムのプラスチック化、カーボンシャフトなどを組み合わせることで、さらに重量を削っていける可能性もあります。
車椅子の構造も、重量に関係します。部品やジョイント部が少ないほど軽くなります(当たり前)。押す人用のブレーキはもちろん、フットレストの折り畳み、背もたれ部の折り畳み機構を取ってしまうことでも、幾分軽くなります。
実は、車椅子を重くする機構の一つが、車椅子の二つ折り構造だったりします。それにより、車椅子の強度が落ちるため、強度を増す工夫が必要になるわけです。とことん軽量化を図ったものでは、座部から足置きまでを一体化し、後輪のみを外すようにしたものもあります。それによりアルミでも7Kg程度の重さが実現できたものもあります。
し、しかし。車の運転席でタイヤと本体バラしたり組み立てたりできる人なら、10Kgの車椅子を車に引き込むくらい、何でもないような気がするけど。
持ち運びやすさには、重量だけではなく、手掛かりの有無にも左右されます。重心付近に手を入れる隙間を開けるなどの工夫で、体感重量は結構違ってきます。