脳神経外科的に説明すれば、筋肉の過緊張のメカニズムは、神経の過剰な興奮によって引き起こされる痙縮だと説明されています。 まず、脊髄からの過剰な刺激が神経を伝わって筋肉を過度に緊張させます。本来なら脳がその興奮を抑制(コントロール)する働きをするのですが、脳が傷害されたためそのコントロールが効かず、筋肉が緊張を強いられる状態が続くのです。 脳性麻痺は脳(特に大脳皮質)の損傷及び形成不全による運動機能障害ですから、障害そのものの進行性はありません。
しかし、他方、食べる、息をする、話す(動作で意思を伝える)といった生きるのに必要な基本的な動作さえたやすいことではありません。そうした身体的な障害がもたらす影響は、知的、情緒的発達をも阻害していきます。また、これらの困難が生み出すストレスは予想外に大きく、将来にわたって本人と家族の命まで縮めかねないほどのものだといわれています。
脳性マヒの特徴である不随意の異常な緊張・緊縮・運動は、加齢とともに身体的な二次障害を生み出します。脊椎、膝、腕、股関節など各部に変形をもたらすだけでなく、各関節に無理なストレスを与え続け、関接が擦り減り神経を刺激して、激痛をもたらすことがあるほか、変形・股関節の脱臼といった深刻な事態を生じることもあります。
また、脳損傷という障害そのものは進行しませんが、しかし、乳幼児期には認められなかった緊張や不随意運動が、年長になるにつれ、現れてくる、ということはあります。
よーのすけの経験から言っても、緊張の形は、歳ともに変動があります。もっとも、これにはメンタルな部分も大きくかかわっていますので、一概に言うことはできませんが。乳幼児時代から児童時代にかけての変化はとりわけ著しく現れます。もちろん、乳幼児期の発達の激しさを考えれば、当然のこととも言えますが。乳児期にはアテトーゼ運動は見られませんでしたし(というか、転がってるだけの赤ん坊が、手足振り回してたらコワイ)、とりわけ、言語発声の形か、現在のような激しいものではなかった、と聞いています。
したがってリハビリは二つの観点から行われることになります。
まずは「機能の回復」第二は、加齢とともに起きる変形・二次障害の防止です、痙直型の場合はとりわけこれが重要になります。この点ではアテトーゼはしばしば放っとかれますが、しかし、激しい不随意運動に対抗しうるような柔軟性の確保・筋肉の強化など、適切な運動の開発・指導は、絶対に必要だと思われます。
訓練によるリハビリテーションが可能だという場合、それは以下の仮説に立っています。
というわけで、正しいハイハイの仕方、とかの矯正が、訓練のメインとなります。一つ一つの動作を分解し、正常な動作を身体からインプットすることにより、脳の組織を作り直そうというわけです。
今日では、理学療法と平行して、薬物投与が行われることもあるようです。
また、激しい筋緊張を軽減するため、筋弛緩剤を常時服用するケースも少なくありません
これに対し、「脳の損傷」「神経系統の混乱」を重視する場合には、筋肉的トレーニングによる、「回復」を疑問視します。つまり、不随意運動は、運動伝達信号の異常であるから、訓練によって、その正常化が図れるわけがない、というわけです。こちらの人々は、過剰な神経伝達をする部分を外科手術によって除去ないし減少することで、異常な緊張を軽減しようとします。膝や大腿部の異常に緊張する筋肉を除去したり伸ばしたりすることで歩行を可能にします。この手術で歩行できるようになるのは、痙直型の人が多いようです。数年おきに複数回受けることになる人も少なくありません。
しかし、いずれも、機能の向上が認められる乳幼児期、せいぜい児童少年期を対象にした「リハビリテーション」です。成年障害者の「機能維持」、つまり、健常者以上に早く進み、かつ深刻な結果をもたらす「老化」の防止のための手だては、全く手つかずになっているようです。
「現状維持・膠着状態」が、研究の対象になりにくいのは、よーのすけも論文を書く人間のハシクレ、わからんでもないけどね。論文にならないもんね、「変化なし」じゃ。
よーのすけ、「障害児」でなくなった(=機能回復の見込みがなくなった)18歳以降、「障害」に関する医療機関から完全に放り出されちまって、結構困り気味。