駅の上下移動を考える-4

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駅員依存システムの問題

 本当は、人手がないと電車にも乗れない。なんていうのは、そもそも異常な事態である、と、よーのすけは思います。たまたま、圧倒的多数の人が階段という上下移動システムを使うことが出来ているだけです。そして、階段が使えるというのは、たまたま多数派に属しているというだけのこと。階段が使えないというだけで、電車移動から排除されていいわけはありません。しかも、エレベータという代替システムがすでにあるにもかかわらず、です。また、エレベータを設置できないような小さな駅ならば、駅の作りを工夫することで、階段なしにすることだって不可能ではないかもしれません。障害者関連問題をとかく「ソフト」の問題にしたがる傾向にありますが、よーのすけに言わせれば100%ハードの問題です。むろん、「障害者は電車なんか乗るべきではない」という意見がまかり通るというのなら、ソフトの問題も入ってくるでしょうけれど、そのレベルの問題が一応クリアされるとすれば、後はハードの問題の問題しか出てこないのではないでしょうか。
 したがって、「周囲の手助け」を強調する話にも、よーのすけは疑問を持っています。実際問題、乗客があまりいないとき、また、夜など酔っぱらいだらけで、あまり手を貸して欲しくない人ばかりのこともあるわけです。そういう人に限って手伝ってくれたがるんですけどネ。乗客が安全に移動できるということに対し、旅客業者は責任があるはずです。子どもだろうが、女性だろうが、身長が2m越えようが、誰に対しても同じでしょう。少なくともシステム上、最初からこうした人々の利用を排除することは出来ないはずです。身長何cm以下、何cm以上の人の安全は保障できかねます…とか堂々と言い放ったら、大問題になりますよネ。これに対し、車椅子ユーザーというのは、今のところ、はなからこうしたシステムから排除された存在だと位置づけることが出来ます。現在、車椅子ユーザーである私たちは、システムからして想定外のところへ無理ムリ押し入っているというのが正直なところでしょう。押し入られた方が泡を食って対応している最中なんです。その意味で、実力行使じゃあ、と言って突破口を開いてくれた数々の先輩たちには、心から敬意を表したいです。
 さて、幾多の車椅子ユーザーの押し込み進出を受けて、システム変換中の昨今です。しかし、気になるのはやはり、依然としてエスカル・エスカレータといった、駅員に依存するシステムが、変換後のシステムの中に最初から組み込まれていることです。駅員の介助を必要とするシステムは、たとえどれほど整備したとしても、駅側の都合に左右されます。それは、車椅子ユーザーにとっては、本質的には、「おみこし専科」と変わらないのです。ただ、駅員の供出人数が少なくてすみ、駅員の腰痛のタネが減り、けつまずいて階段から落とされる危険が減るだけのこと。もっとも、後者の現実的意義は多大ですが。「何かあったら」と言いますが、「何かある」ようなものを作ってしまう方が問題のはずなんです。それに気が付いていないとしたら、それは途方もない勘違いだと言えます。駅員が「お世話をする」ことを前提としたシステムは、車椅子ユーザーがまだそれほど出て来ていない状況を前提としています。オフィスタイムからずれた時間に移動したり、同駅に車椅子ユーザーが二人現れただけで混乱を来すようなシステムなんて、よーのすけとしては、すでに破綻していると思いますが、一般には、そう思われていないようです。
 システムの欠陥は、何かが起きないと認知されないようです。90年代の初め頃でしたか、車椅子ユーザーの女性が駅のエレベータ内で一晩置き去りにされる、という事件があり、その後、駅に設置されたエレベータのコンソール類が改善されたりもしました。きっかけを作るような大事件の当事者にはよーのすけはなりたくはないですし、誰にもなって欲しくはありません。しかし、多くの車椅子ユーザーが表に出ていくこと、それは、もちろん車椅子ユーザー当人にとってはまだ多くの危険を伴う大きな冒険でしょうが、それこそが、現状の根っこを着実に掘り崩し、システム転換を迫る「事件」なのだと思います。
 「外出」なんぞが「冒険」にならなくなる日を、そして、こんなテーマのサイトの存在が無意味になる日を心から願いつつ。


*「駅員依存システム」という言葉については、
川内美彦:バリア・フル・ニッポン―障害を持つアクセス専門家が見たまちづくり , 現代書館, 1996
を参照しました。

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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[Mail__ocean@mbc.nifty.com]