ハンディキャップトイレはこう使う4

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「誰でもトイレ」の大問題

「ユニバーサルデザイン」の観点から、「誰でもトイレ」と称して、ハンディキャップ、こども連れ、お年寄りが「誰でも使える」ことを目指したトイレです。それによって、広くて手すりのあるトイレが増えてきたことは喜ばしいことではありますが、それは裏を返せば、一般のトイレがいかに使いにくくできているか、ということでもあります。実際、子連れなどの使用者が多く、本来の「ハンディキャッパー」が使おうとしても使えない状態となって、結局、鍵をかける事態に陥ったりします。是非はともかく、おむつ替えスペースがハンディキャップトイレに設置されている以上、それでは意味をなしません。それで、警備員を呼びつけて鍵を開けさせる度胸のあるお母さんはいないでしょう。車椅子ユーザーのお母さん、という想定もありですが、ハンディキャップトイレのおむつ台は、車椅子ユーザーには使えません(高すぎ)。また、一般トイレも使えないことはないけれど、できたらハンディキャップトイレの方が安心だな、という人も、警備員を呼ぶのを躊躇してしまいます。
 ハンディキャップトイレを「誰でもトイレ」と称してユニバーサル化するのも結構ですが、そのために、ハンディキャッパーに特化したトイレ設備が減ってきているのは気になります。たとえば「長いトイレ」。このごろよーのすけの行動範囲では全くお目にかからなくなりました。この長いトイレを苦手にしているハンディキャップトイレユーザーが多いのも確かです。長いトイレのユーザーは、ハンディキャッパーのなかでも少数派です。しかし、だからといって、「誰でも」のために、ほとんどの人に使いやすい丸い便座で席巻してしまっていいわけはありません。これでは、大半の人が使えるから階段。エスカレータでOKという従来の発想と同じになってしまいます。ハンディキャップトイレのユニバーサル化が、かえって少数の特殊な便座のユーザーの選択を狭めてしまうのは問題です。
 逆に言えば、丸い便座のユーザーは、便座に関しては、一般トイレユーザーと共有できる、ということです。では、彼らがハンディキャップトイレを使うのはなぜですか。それは、一般トイレに車椅子が入らず、また、手すりがないから、というだけです。そして、車椅子が入るだけの広さは、こどもを連れて入ったり、ストッキングを履き替えたり、といった使い方にとっては、ぜひ欲しい広さです。手すりだって、ないよりはあった方が立ちやすいに決まっています。ハンディキャッパーにもハンディキャッパーでない人にも使いやすいもの、その部分をどう発見し、膨らませていくか、それが鍵になりそうです。実際、一般トイレの中には大抵ある、一番奥のデッドスペースを利用して、仕切り方を変えるだけで、車椅子ユーザーの使用に耐えそうな場所もたくさんあります。
 ここまで、ハンディキャッパーがアクセスできないトイレを「一般トイレ」と呼んできました。そして近年の動向として、ハンディキャップトイレを「ユニバーサル化」する傾向にある、と言ってきました。しかし、なんといったって、「一般トイレ」の「一般」は、英語では、まさに「ユニバーサル」です。「誰でもトイレ」というのなら、どうしてみんなが使うトイレを誰でもトイレ」と呼ばないのか、というのは、素朴かつ根元的な疑問です。一般トイレの「誰でもトイレ」化が進まない限り、本当の意味での「ハンディキャップトイレ」を充実させることはできません。


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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[MailTo_ocean@mbc.nifty.com]