ハンディキャップトイレはこう使う3

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扉と鍵

ハンディキャップトイレの扉と鍵には、手動型と電動型があります。
扉はいずれもスライドドアでなければなりません。そして、当たり前ですが、トイレコーナー全体の入り口に扉がある場合、その扉もスライドドアでなければなりません。
一般の男女別トイレの内部に設置してある場合、外側のドアが、バネ式の重い扉で、開閉できないことがしばしばあります。
手動型には手動式の鍵が付きます。電動扉の場合、通常、扉の開閉は鍵と一体になっています。

電動扉

上が「開く」下が閉じるのボタン 電動扉の場合、右のようなボタンが付いています。直径10cm程度です。ボタンを押すには、存外力がいります。最近では手をかざすと反応する赤外線式スイッチも出て来ました。
 この電動扉は、いくつかのかなり重大な欠陥があります。この扉は、「」を押し、一定の期間放置されると、自然に閉じる仕組みになっています。この時間の設定がうまくいっていない場合、ぐずぐずしていて挟まれることがあります。また、どういうわけか、内側の「」ボタンを押して閉めてしまう人も相当数いらっしゃいまして、混乱の原因となります。こういう無骨な扉に慣れていない健常者が使って、なぜか、外ではなくて中のボタンを押してしまうようです(某駅のチップトイレのおばさん談)。システムによっては外側に「」ボタンがないものもあり、それが混乱の一因になってもいるようです。内側の「」ボタンの位置を、外から手が届かないところに設置するなどの工夫が必要でしょう。そもそも、車椅子ユーザーの場合、扉近くに設置されると、膝やタイヤが邪魔になり、いちいち向きを変えなければならず、押しにくかったりするものです。そういう「事故」が多い上、普段使用されていないため、使っているとそうした事故ないしいたずらの類と勘違いされて、力任せに開けようとする人もいます。で、扉の出来によっては、開くことがあります
 また、開けっ放しになっているのを、幼児がいたずらしていて、下の「」ボタンを押してしまい、上の「」ボタンに手が届かず、閉じこめられるという事故も起きています。上下をひっくり返すか横並べするなどの工夫がいります。

手動式扉

手動式扉は、原則として「吊り戸」を使わなければならないとされています。つまり、床にレールを敷いたりサンを切ったりしてはいけない、ということです。
 しかし、それ以上に重要なことがあります。それは、扉が開いたまま止まらなければ、車椅子ユーザーは中に入れない、ということです。なぜか、ハンディキャップトイレの扉は、しばしば重い鉄の扉が使われています。「吊り戸」にすることと関係があるのかもしれません。そうした重い扉の開閉を軽減するために、扉は自然に閉まるようにバネが施されています。車椅子操作には、両手がいる、ということは、当たり前なんですが、しばしば忘れられがちです。跳ね返ってくる扉を押さえながら、進むというのはなかなか難しいですし、接地面はタイヤなんですから、自力だけでは扉を止めることはできません。
 そのため、扉の後ろには、ドア止めが付いているはずなのですが、これがちゃんと作動しないことが結構あります。壊れやすいということもあるようですが、新築のものでも作動しないことがありますから、設置ミスも多いのでしょう。
 軽くて、止めたいところで止まってくれる、という扉がいいのですけどねえ。

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スリップ事故

 トイレは、その他の場所と違って、車椅子からの移動、という特殊な動作をします。このとき、車椅子には、斜めの強い力がかかりスリップしやすくなります。そのため、リノリュームてはなく、滑りにくい素材の床であることが望ましいです。

排水口と踏み込み式水洗ボタン

足踏み水洗ボタンと排水口。水洗ボタンはともかく、こんなド真ん中に排水口作らんでも…。 車椅子ユーザーにとって、足許の安全の確保は重要です。ほんのちょっとのくぼみ、出っ張りでも、スリップ・つまづき、転倒事故の原因となります。ハンディキャップトイレには、しばしば足踏み式の水洗ボタンが付いています。手の不自由な人のためか、はたまた単に介助者のためか、真意は測りかねるところですが。
 この水洗ボタンは、通常、便座のごく近くに設置されます。そのため、立つ人はしばしばつまずきます。車椅子から直接乗り降りする人の場合、これが手すりの近くにあると、ちょうどタイヤが乗ってしまい、スリップ・転倒の原因になります。  排水口も同様です。排水口は、金属でできているので滑りやすい上、そこに向かって床が傾斜しているので、便座周辺に設置されると、便座周辺の床が傾いてしまい大変危険です。実際、排水口上にタイヤをどれか一つ乗せると、後輪のどちらかが宙に浮き空転します。排水口、水洗ボタンとも絶対に手すりの近くに付けてはいけません。
 しかし、他方、上肢が不自由な人への配慮としては、このボタンは、手すりに掴まり立ちして届く範囲に付けなければいけません。ボタンを押すのは難しく(水洗ボタンはどこもかなり固い)、足で踏みたい。しかし、ボタンを踏むには手すりに掴まらないと不安定、という人もいます。
 しかし、足踏み水洗ボタンのみというのは論外です。(車椅子ユーザーってのは、どんな人ですか。)
 

椅子に座って手が届く範囲

車椅子ユーザーにとっては、当たり前に思われますが、なぜか実践されないのが、「全ての設備を、車椅子に座った位置で操作できるようにする」ということです。とまれ、「こんなトコに付けちゃ、手ェ届かないでしょうが。」と指摘すると、「そういやそうですねえ。車椅子使ってないもんでわからないんです。」と応えられることがあります。しかし、「ハンディキャップトイレ」という設備の定義が「車椅子ユーザーがつかうもの」である以上、最低限の知識は、設置する人の常識といいたいです。「車椅子に座って手が届く範囲」などというのは、車椅子がなくたって、普通の椅子を持ってきて手を伸ばしてみればわかるんです。いくら男性の技術者だからといって、洋式トイレの便座を裏返しに付けることはないでしょうし、女性技術者が男性用小用器を胸の高さに付けたりはしないでしょう。ハンディキャップトイレも同じことです。


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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[MailTo_ocean@mbc.nifty.com]