トイレで一番重要なのは、便座への移動と衣服の着脱です。トイレが使えるかどうかは、これで決まります。したがって、まず、車椅子ユーザーが、どのように便座に移動するか、を説明しておきましょう。
手すりも、床も、アイテムの配置も、全てこれが基本となります。
全く立つことができないが、上肢の力だけで移動ができる場合、車椅子を便座にできるだけ接近させ、手すりを使って、身体を便座に引き上げます。
この場合、一般に想定された洋式トイレの座り方ではないので、いくつかの問題点が出て来ます。またがる場合、便座にはある程度の奥行きが必要だからです。
その要請をクリアするため生まれたのが、当サイトで言うところの「長ーいトイレ」です。こんな形をしています。
しかし、これらのトイレは、腰掛けてみればわかりますが、またがらない場合、大変に座りにくいです。体重を支える尾てい骨あたりの部分がそっくりないんですから。優れたバランス能力と、腹筋、背筋がないと、安定して座ることが出来ません。それで、考え出されたのがこの「ひょうたん型」です。
よーのすけ、寡聞にして、実物は見たことがありません。前後どちら向きでも座れる、と言うんですが、正直言って、座りにくそうだなあ。先割れスプーン的発想で、どちらに使っても使いにくそうな気がする…。
もっとも、上肢だけで移動するひとでも、この長いトイレを好まない人もいるようです。よーのすけが考えただけでも、これで長いスカートとか履いてたら、いくら前向きに座っても、スカート落ちそうな気がするし。
「完全な車椅子ユーザー」でも、またがらずに腰掛ける人もいます。その場合、
ということをします。これだと、「丸い便座」の方が座りがいいんでしょうね。通常の便座の方が、今のところ汎用性が高い、ということか、最近、ハンディキャップトイレは、通常のO型ないしU型の便座が設置されることが多いようです。しかし、「長い便座」でなければ用足しができない人もいる、ということは忘れられてはいけません。
とはいえ、その場合でも、前向きに座る、ということの特殊性は絶えず配慮されなければなりません。図を見ていただければおわかりのように、前向きに座るには、まず、便座と壁の間に十分な間隔が空いている必要があります。便座上で身体を前に倒して移動するので、またがった状態で、頭が壁に突き当たらないだけの広さが必要です。(よーのすけ、指摘されるまで全然気付かなかったけど。言われて注意してみると、ほんと、トイレって、どんなに広くても、便器は壁にくっついているわ。タンクを背負っている奴もあるし。)
また、ホテルなど、高級っぽい場所では、暖房&洗浄機付き便座を設置してあるところも出て来ました。この便座の場合、コントロールパネルが、便座横に付いていると、またがることができません。リモコン式にして、壁に設置する必要があります。
車椅子ユーザーでも、立つことができるという人は、健常者が思っている以上に多いです。こちらの人々は、トイレに関しては、選択の幅が広くなります。多少出来のよくないハンディキャップトイレでも、何とか使うことができます。健常者と同じように、後ろ向きで腰掛けるため、設置ミスがそれほど致命的にならないからです。(どんなにひどい施工者でも、自分が腰掛けられないトイレは作らない、ということ。)
しかし、立ち座りは困難ですので、配慮が必要です。一般に、便座が高い方が、立ち座りは楽になります。「立ち上がる」よりも、「便座から降りる」という感じの方が、楽な人が多いのではないでしょうか。
しかし、反面で、形成不全症系の障害を持つ人の場合、体格が小柄になりますので、便座が高い位置に来ると、届かなくなってしまいます。
配慮の外に置かれやすいのが、障害を持ったこどもです。親が抱えて用を足すことができたりするので、つい忘れられがちになります。こどもはお尻が小さいので、通常の便座では落ちてしまいます。障害のあるこどもは、座るのが下手なので、障害のないこどもに比べて普通の便座が使えるようになるまでに時間がかかります。しかし、車椅子で入れて、かつ、小型の便座も設置されてあるトイレはごくわずかです。