かっこよく介助を 3

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車いすユーザーと居合わせたら

決してやってはいけないこと。

電動車いすに手をかける

 漕がないのに動いている車いすには、決して手を出してはいけません。電動車いすは、人間を入れて、軽いものでも70キロ弱、重いものでしたら100キロはゆうに越えます。生身のあなたの手に負えるものではありません。

 エレベーターなどの狭い空間にぴったり入ろうとしたり、はまりこんだ所から出ようとするとき、電動車いすは何度か切り返しをします。そのとき、つい、「こっち向きに引き寄せてあげたら簡単に出られるんじゃないか。」と思ってしまうようです。でも、100キロの物体を、あなたが動かすことはできません。しかもその物体は、あなたの思わない方向に動くことがあるのです。ぶつかられれば、あなたが怪我をする危険性があります。あなたが車いすに手を触れている限り、電動車いすユーザーは、車いすを動かすことができません。複雑な動作をしようとしているように見える車いすユーザーには、むしろ近寄らないようにして、スペースを空けてあげてください。

危なそうなことをやっている車いすユーザーに声をかけたり、手をかけたりする

 あなたから見て、アクロバティックな怖いことをやろうとしている車いすユーザーに、「危ない!」とか、「私がやります!」とかいってひったくってはいけません。例えば、階段を自力移動中だったり、エスカレータを単独利用していたりするときです。「何もなければ大丈夫」という想定の下で自信を持ってやっていますので、想定外のちょっかいを出されると危険なんです。

できたら気をつけて欲しい身のこなし

 基本は、深呼吸して、落ち着いて、自分の立ち位置を決めること。

車いすの行く手をふさがないように

 普通に歩いているときに気が付かないのは仕方がないし、お互い様だと思います。

 エレベータや、出入り口の扉を押さえるとき、ちょっと落ち着いてみてください。扉を押さえているあなたのせいで、車いすが動けなくなっていませんか。

ドアを開けておくとき

ドアを押さえる。ドアの端を押さえれば通れるが、ちょうつがい側を押さえては通れない出入りする所をふさがないようにドアを押さえる習慣を。普通はドアノブを持って開けますので、そのまま押さえればいいはずなんですが…。

右図の右のように、戸口に仁王立ちになってドアを支えてしまう人がいます。ちょうつがい側で重いドアを、腕を震わせながら押さえるのはなく、一度ドアの端の方に移動して押さえて頂けると、車いすユーザーとしても、「足を踏んじゃうんじゃないか、お腹を擦っちゃうんじゃないか。」という心配をせずに通れます。

エレベータのドアを押さえる

 ホームエレベータや、よほど古いエレベータでなければ、車いすユーザーが挟まれることは絶対にありません。エレベータのドアの戸袋を覗いてみてください。赤い光が出ていたり、ドアのへり、下から30センチ程度の所に直径1センチくらいの穴が開いています。これが赤外線センサーで、この位置に物があるときは、ドアが閉まることは決してありません。安心して先に出てしまってください。

 心配でどうしても開けておいてあげたい、と思ったとき。そのときは必ず中にとどまってコンソールパネルの「開」ボタンを使うか、先に外に出た場合は行き先ボタンを落ち着いて上下見極めて押してください。自分が出てから、ドアを押さえくれる人が多いですが、よほど大型のエレベータでなければ、あなたの身体と車いすが戸口に並ぶことはできません。車いすユーザーがよけなければいけないのは、あなただけではなく他の乗客もなのです。戸口は完全に開けてくれるのが一番ありがたいのです。

視界を下に向かって広くしよう

 人間、意外に上を向いて歩いているようです。歩いている人にとっては、車いすって、忽然と足元に湧いて出るもののようですね。すごい人だと、後ろから追い抜きざまにフットレストの間に足を突っ込んできて、「痛え」と叫ぶ人がいます。全然視界に入っていないみたい。車いすなら踏むと痛いから気が付くけど、子どもなんか踏んでも気が付かないんだろうな。言葉で言わないからわからないけど、子どもなんか結構踏まれているんじゃないかしらん。

 ショルダーバッグもナップザックも、ちょうど良く車いすユーザーの鼻先をはたいて行きます。しかし、あたったことには気付かないようです。ぶつけついでに自分が車いすに当たると気が付くようですが、多分、車いすユーザー側も当たったことに気付かないこともあるのでしょうから、お互い様かもしれません。

たまには気障なくらいかっこよく

 横浜のNPOが行った調査で、「あなたは車いすユーザーが混雑したエレベータに乗ろうとしたとき、降りてその人に譲りますか」というアンケートに、「はい」と答えた人が100パーセント、という結果が出ました。でも、どの車いすユーザーに聞いても、譲ってもらえた経験がある人はまず少ないです。「これは乗れないや」と思ってやり過ごそうとしたら、後ろから来た人が乗り込んでいった、ということはよくありますが。

 あまり気を使われるのも、車いすユーザーとしては気恥ずかしい部分はありますが、たまには「私、降りますからどうぞ」と言ってみましょう。あなたにつられて何人かが降りてスペースができれば、この国も捨てたもんじゃありません。誰もつられなかったら…そうね、降り損ではあるけれど、そういうことができるあなたの立ち居振る舞いは、きっと誰かが見ています。

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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[Mail_ocean@mbc.nifty.com]