秋の京都小ネタつくりの旅 4

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関東とも、名古屋とも違う地下鉄の乗り方

 ビジネスホテルらしく、カギをポストに放り込めばチェックアウトは完了です。相変わらずギリギリ時間で京都駅へ。エレベータまでが結構遠い。

 プリペイドに慣れきった身には切符を買うのがちょっとした恐怖です。だって、自分で電車に乗り始めた頃は、自販機なんか車いすでは手も届かなけりゃ、そもそもパネルも何も見えないしで、お呼びじゃなかったんだもん。駅員さんか並んでいる人に、行き先を見て買ってもらうしか手がなくて、自販機がバリアフリーの対象になった頃にはプリペイドカード人生になってましたし。あわあわしながら切符を買って、改札で行き先を告げると、「ホームの一番後ろで待ってて。」 はいぃ?

 ホームへ行くエレベータは改札の近くにあり、すぐに見つけられたのですが、前とか後ろとかってどっち? ホームは一本だよね。烏丸線とか、なんとか線とか、何本かあったような気がするけれど…。国際会議場行き? それはいったいどっちなの。聞いたことないよ。普段、自分の判断で乗っていないのがバレバレですね。普段、ホームまで駅員さんに誘導され、言われるままに言われるところから乗せられて降ろされてますからね。自分で意識して乗ってないんです。というか、駅員さんの誘導がないと、エレベータやエスカレータ、エスカルを乗り継げない、っていうせいもありますけどね。その点はこの地下鉄は自信があるんですね。でも、問答無用で「自力で後ろに行け」というのもどうかい。乗務的には効率よさそうだけれども…。

 どっちがよーのすけが乗るべき電車で、その後ろってどっちだろう? 初めて見る地名と、苦手でいつもわからなくなる電車の前後左右の判断に、半ばもうろうとしつつ、こっちかなあ、と思った方向へ。やはりというか何というか、エレベータはホームの反対の端っこだったらしい。行き先方向だったらしい電車が一本通過していきました。ここが一番後ろかしらん、と思ってしばらく待ち、ふと、向こうを見ると、もっと先に、「渡り板」を下げた駅員さんが突っ立ってます。あれ? ひょっとして一番後ろって、あそこかい? ようやく来たか、という顔の駅員さんでしたが、土地の人じゃないんだからさ。

降りた駅でもどっちがどっち

 目的の駅は「今出川駅」。ここでも、渡り板は出してくれるけれども、エレベータはあっち、と指し示すだけ。改札階に上がり、改札で「エレベータは?」と尋ねると、これまた「あっち」。看板は出ているのだけれども、どうも看板から予想される場所とは違う場所にエレベータが出てくるのは気のせいなんだろうか? ともかくも、地上に上がり、案内図を開いて、しまった!というか案の定、案内図に指示された「最寄り口」とは違う出口に出たよ。案内略図には、最寄り口からのルートしか書いてないし…。こうなることがわかっているのだから、「楽々おでかけネット」で、エレベータの出口の確認をしておかなければならないのですが。通行人に方向を尋ね、平らな道で行けそうなのでほっとして…。最寄り口からは、知った顔がぞろぞろ出て来ました、こっちから出られれば、押していってもらえたのにぃ。これだから車いすルートは嫌なのよねえ。

無人改札の衝撃

 二泊目は、四条駅から徒歩1分というホテルです。これは楽勝、と、途中下車してホテルまで一緒に行こう、という友人を断って、電車を降りました。ここでもホームでは渡り板を出して、「エレベータはあっち」。 エレベータは、ホームの反対側の端の、これまた廊下の先。うう、このぉ…。でも、明日の朝はちょっとは近いか。

 改札階に上がると、そこは無人改札。しかも、自動改札が車いすユーザー対応になってない! はいぃ? ほかの改札につながっている様子はなし、どうすれば出られるのだろう?

 途方に暮れていると、親子連れに「どうしました? 出るんですか?」と声をかけられました。そうだ、というと、自動改札の端のインターホンを押し、「車いすのお客さんが出ますよぉ」と一言。すると、構内全体に響くような音量で、天井のスピーカーから「はーい」という返事があって、有人改札の柵が開きました。関東では、こういう場合、インターホンから声が出るのが普通なんやけど…。切符は、そこのポストにぽい、と入れればおしまい。はメイン改札じゃないのね、きっと。だってエレベータが付いているんだもん。

 改札は出たものの、エレベータの方向は依然としてわかりません。改札で聞くつもりだったんですもん。構内図を探し出し、大体の方向を検討付けましたが、まずいなあ、何カ所か曲がり角があって、方向がつかめない。方向音痴が引っかかる典型的なトラップ・パターンです。とはいえ進んでみると、すぐに「エレベータはこちら」のサインが見えました。あ、間違ってなかった、と思いながら、ずんずん進んで、進んで、進んで…。とっても遠かった。しかし、エレベータにたどり着き、地上に上がるとそこは「四条」という大きな交差点でした。

 地図によれば、駅から1分というからすまホテル。1分なら見えてもいいはずなのに、影も形も見えません。通りがかりの人に地図を見せて尋ねると、予想していたのとは完全に反対の方向です。5分以上車いすを転がしてようやくたどり着きましたが、確かに玄関脇、ほとんど敷地内に「地下鉄・四条」の出口がありました。やはり、エレベータの出口は違う所だったんですね。それにしても遠いなあ。明日が大変だわ。

バリアフリールーム…らしい

 ロビーはやはりふかふかの絨毯敷き。小腹が空いていたので、フロントの人に手伝ってもらって、ホテル内のスターバックスでテイクアウトをし、部屋に入りました。ずいぶん古いホテルらしく、カギは普通のカギ。電気の自動点灯・消灯もありません。カギは普通にテーブルの上へ。

 「普通のシングルルーム」と聞いていましたが、これは、多分、「バリアフリールーム」です。たぶん「デラックスルーム」あたりで出していたのが埋まらなかったんでしょう。ベッドはツイン。バストイレは…? はいぃ? バストイレが別。洗面室も別室です。吊り引き戸の中に大きな車いすユーザー仕様の洗面室があり、右手にれまた吊り引き戸が設置されたトイレ。車いすごと入ってドアを閉めるのは厳しいけれど、開けっ放しなら使えそうです。手すりもきちんとあるし。左手にはバスルーム、というより「風呂場」があり、風呂桶の外で身体が洗えるタイプ。ここ、もともとビジネスホテルじゃないですね、きっと。15センチほどの段差はありますが、手すりが洗面所側と風呂場側の両方に付いており、タオル掛けも、細くて掴みにくいですが、外れることはなさそうです。風呂桶の周りにも手すりが付いているし、ラッキー、これなら風呂に入れる。

 とはいっても、完全な「バリアフリールーム」ではなく、ソープ・ディスペンサーは、立たないと手が届かない位置にありますし、大体、蛇口が、今どきない、「お湯」と「水」の2つの水栓をねじって、水量で温度調整をするタイプでして。シャワーひとつかけるんでも大変。

 完全なバリアフリーとはいえないにしても、トイレはまあ安全に使えましたし、よーのすけとしては、部屋全体が傾いているよりは、よほど快適で安心だなあ、と思いました。

別の駅に行ってたらしい

 翌朝、夕べの場所まで戻るのはしんどいぞ、と思いつつ、おそるおそるフロントで、地下鉄の入り口はどこかと尋ねました。すると、すぐ隣だと言います。エレベータは?と尋ねると、ある、という返事。変だなあ、と思いつつ、外に出ると、ちゃんとエレベータの表示がしてありましたので、素直に降りてみました。さて、どこに降りるのでしょうか?

 降りてみて、人々が行き交う通路まで出たところ、確かに記憶にある場所です。確かにここを通過して左手に進んだ覚えがあります。ということは、右へ行けば夕べの改札へ出るはずです。しかし、そうだとしても、どうしてこのエレベータを見過ごしてしまったんでしょうか。天井の標識を見て、はたと納得しました。

  左図は、通路と標識です。下の方から上へ向かって進んでいったよーのすけ、この「エレベータの表示」を見て、「左へ折れる」とは思わず、「この真っ直ぐ先にエレベータがある」と思ったんですね。夕べは、阪急電鉄の四条駅に出てしまったらしい。それは遠いわ。

 日曜の朝9時頃でも改札は無人です。切符を買って、どうするのかな、と思いつつ、インターホンを鳴らし、「車いすなんですけど、今出川まで」というと、ホームの後ろでお待ちください、というアナウンス。今日は近くていいけどね、と思いつつホームに降りました。それにしても、自販機は特別「障害者対応(札や小銭が入れやすく取りやすい)」になっているわけではないし、不案内な人にはわかりづらいエレベータ位置だし、知らないと使いにくいバリアフリーだなあ、と思うことしきりな京都地下鉄体験でした。

車いすルートの下調べは、やっておかなきゃダメですね。

 知らない所へ、車いすを十分に漕ぐのが難しい人間が、エレベータ位置を調べないで、ぶっつけ本番一人旅をやろうというのは、やっぱり無理がありましたね。ちゃんと目的は果たして、事故もなく帰っては来ましたげれども。

 部屋全体がスロープ!?を始め、思いがけず「バリアフリーの小ネタ」をたくさん仕入れることができてしまい、こっちの面でも重宝に使ってます。

 今回は「お仕事」で行った京都でしたが、いずれ、改めて仕事抜きで遊びに行ってみたいなあ、と思った旅でした。


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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[Mail_ocean@mbc.nifty.com]