サンダーバードとおみこしで行く伊豆湯けむりと河津桜の旅 3

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旅館と、そして温泉

セーフティルーム和洋室

 本格的なバリアフリールームって、実はよーのすけ初めてなんですよね。なので、あまりに豪華な「バリアフリールーム」に妹くんと2人で驚きましたよ。

車いすで楽々入れて中でターンもできる更衣室+お風呂と、お手洗い 広い個室風呂 広いトイレ

ターンもできる広々とした通路。手すり付き。
広い通路

 これに6畳の和室の小上がりが付いてます。

温泉旅館なんだから、やっぱり大浴場

 内風呂はそれなりのバリアフリー設計でしたが(利用しなかったので使い勝手はレポート不能)、温泉旅館で小さな内風呂に入っても仕方がありません。大浴場は2つ。「石風呂」と「檜風呂」で、男女入れ替え制になっています。1日目は、「石風呂」でした。浴場・脱衣所までは、車いすのまますんなりと行けます。

 「歩けるというほどには歩けない」部類の障害者にとって、「風呂場の床材」は重要なポイントです。足の裏が手のひら以上に柔らかく、しかも変な足の着き方をするため、痛くて歩けなかったり、「なんでぇ」という場所を切ってしまったりします。

 脱衣所の床材はちくちくするパーム材でした。滑らないのと吸水性がよいので、大浴場によく敷き詰められているあれです。歩ける人にはどうということはないのでしょうが、よーのすけにとっては苦手な素材の一つです。痛くて歩けない。内反気味に着地しているため、小指の爪を剥いだりします。やだなあ、と思いつつ、何とか服を脱ぎました。そこに用意されていたのは、車いすではなくてシャワーチェアでした。便座状のものにキャスターが付いているものです。それに腰掛けて、妹くんがガラガラとイスを引いて浴室へ…浴室へ…あれ? どこへいくの? 壁と仲良しになったシャワーチェアの傍らにかがみ込む妹くん。

 「ちょい待ち。このシャワーチェア、まっすぐ進まないんだよ。ありゃあ、キャスター片っぽ、何かが絡まってて動かなくなってるんだわ。しょうがないね、これは。」

 「よーさんにはあまり足触りよくなさそうだけど、でも立てないほど痛くはないと思うよ。でも、膝をついて床に座るのは無理そうだね。いすのままの方がいい。」かかり湯をして、湯船へ。床と湯船の差は10センチ程度。縁の幅は30センチといったところでしょうか。入るところに緩やかな階段と、ステンレスの手すりが付いています。あまり深くはないので、手すりの近くから離れなければ大丈夫です。水風呂と、温かい風呂と、交互に入って長風呂ができます。「アタシ、ヘルパー2級持ってますんで、お手伝いしましょう」と申し出てくださったお客さんもあり。最近、こういう方、多いんですよねえ。はたから見たら、どう見えるんだろ、このコンビ。

 露天偵察してくるけど、大丈夫だよね? との言葉を残し、しばし外へ出た妹くん。「寒くて、露天、気持ちいいよ。でも、やっぱり岩風呂なんだよね。一箇所くらいなめらかでアクセシブルな場所を作っておけばいいのにね。せっかくだから行ってみるかい。」ということで、外に出てみることにしました。でも、ちょっと待って。このシャワーチェア、痛いんだけど…。ふくらはぎの後ろがしみるんだけど、何かなってない? 「あ、これは痛いよ。座面のへり、ビニール切りっぱなしで、ギザギザじゃん。よーさん、座るとき足縮こめちゃうから、そりゃすごく痛いはずだわ。どうしようか。」いすのへりを覆うようにタオルを掛けてカバー。

 まっすぐ進まないシャワーチェアを引いて、狭い扉をくぐって岩風呂へ出るのはなかなか高度なテクニックでございます。一応手すりが付いているので入れなくはないものの、やはり、出るときにしくじって流血の大惨事(左の小指を切った)。十分に長風呂はしたから、まあいいか、ということで、一度上がることにしました。よーのすけがもそもそしている間に妹くんは素早く浴衣を引っかけ、ロビーに走ってバンドエイドをもらってきます。やはり、風呂で怪我する人は多いらしく、防水バンドエイドがすぐに出て来ました。健常者でも怪我するようなお風呂、いちおう「バリアフリー」を看板に架けるんならなんとかすればいいのに。

 食事は食堂でとることになっています。食堂での食事のいいところは、食べにくいものが出て来たときに「なんとかしてくれ」と言えることです。エビ・カニの類、全部バラしてもらえます。

 言うまでもなく、就寝前にもう一度お風呂。お約束ですね。さすがによーのすけは露天には再度チャレンジしませんでしたが…。今回は、身体や髪を洗ったわけですが、自分で動かせない車いすって、ほんとにやあね。ちょっと身体の向きを変えれば手が届くシャンプーもセッケンも、すぐそこにあるのに届かない。その都度、「妹くーん」と呼ばないと何もできない。まるきり動けない不安。真正の重度障害者って、きっとこんな感じなんだろうな。

 翌朝は、ひのき風呂。温泉宿泊で朝風呂はお約束でしょう。脱衣所の作りは全く石風呂と同じです。湯船が総檜造りというのを期待したのですが、何のことはない、湯船のへりが「古代ひのき」というだけのことでした。ことによると露天はひのき?と期待したのですが、こちらは、石風呂の方と全く同じ岩風呂です。それでも性懲りもなく出てみて、今度は右の中指を流血したよーのすけ。

 帰宅後、古いWE'LLを引っ張り出してみたら、この熱川ハイツ、バリアフリーな旅館として、大きく特集が組まれていました。けれども、「温泉」の状況については全く触れられていなかったんです。「バリアフリールーム」の紹介だけ大きくしてお茶を濁してます。温泉旅館の推薦記事で、しかも障害当事者が混じっていると思われるバリアフリー専門誌で、「温泉」のバリアフリー情報が掲載できない。それほど、浴場のバリアフリー化は難しく、また稀だっていうことなんですね。

 個人的には、靴下とか履いて入らせてもらえたら、何とか流血せずに入れそうな気がしたけどな。一部だけでも浴槽が木製でできていると、滑らないし、足も痛くないしで快適なんですけどね。洗い場の床も、浴槽も、よーのすけには当たりがちょっと痛かったです。突然突っ張り反応蹴飛ばし系の不随意運動がある人は、すりむく確率が大きいです。


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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[Mail_ocean@mbc.nifty.com]
Photos by 妹くん