「ちょっと手伝って下さい。」と頼むケースのうち、段差にはまったのを引き上げるのに続いて多いのが、おそらく、「車椅子を運んで下さい」じゃないでしょか。車椅子から、自動車(タクシーなど)・椅子などに乗り移ったとき、車椅子をどこかに片づけてもらうように頼むことはよくあります。
でも、五体満足・健常な人にとっても車椅子というのは、存外大きくて重いもの。一発で軽々持ち上げられる、という人は意外に少ないようです。ハンドル握って持ち上げようと四苦八苦する人、勢い余って車椅子抱えたまま転ぶ人もいて、本人が持ち上げる以上に危険なこともあります。
畳んだ車椅子を運ぶ場合、自分が乗っているわけではないので、我が身に危険が降りかかることは稀ですが、手伝いを申し出てくれた人に、どこをどう持つと、車椅子を運びやすいか、を、口頭で説明できるようにしておきたいものです。
車椅子からトランスした後で、「そこ持ったって持ち上がらないよ。そこ持つの、そこ」と、怒鳴るのって、結構悲しいものがありますので。
車椅子は、重心さえ知っていれば、わりに簡単に持ち上がります。ご自分で車椅子を上げる方は誰でも知っていますね。アクティブタイプの車椅子は、せいぜい10kgちょっとですから、健常者なら、片手でも持ち上がるはずです。 車椅子の重心は赤の矢印のあたりにあります。
「タイヤの上のフレームと、車椅子を押すハンドルを持つといいです。」
重心のあたりを、車椅子が開かないように、肘おきを2本とその内側にあるシート枠のパイプを2本、合わせてしっかりと握ります。男性だと、これだけで持ち上がります。念のため、ハンドル部分に手を添えてバランスをとります。
以上は、かつてよーのすけが車椅子講習会で習った持ち上げ方。
でも、実際にはこういう持ち方ができるのは、体の大きい人みたい。
手が小さい人の場合、肘おきとシートをいっぺんには握りきらないですし、ハンドルを持ってしまうと前輪を引きずります。
そういう人の場合、重心付近のフレームを、一組ずつ左右に持つようにいいましょう。これだと背が低くても、高い位置まで持ち上げられます。
それでもうまくいかない、という場合、重心を中心として、上図青の矢印の範囲を2カ所、持ってもらうといいです。
「肘のところと膝のあたりを持つといいですよ。」
これで通じるかな。
ちなみに、背が低くて手が小さくて力がないよーのすけは、■の部分を持ちます。あちらとこちらのフレームを一組ずつ互い違いに持ちます。
一番多くて、一番「おいおい」と思うのが、何が何でもハンドルを持って、運ぼうとする人。前輪が上がらないとなると、とりあえず後輪だけでも上げてみる人もいます。
また、タイヤの部分だけをつかんで上げようとするケース。整備が悪くてブレーキがゆるんでしまっている場合、車椅子自身の重さでくるくる回り、困っていたりします。
こういう状態の車椅子。これを、指示なしで広げられる人は、うーん、5人に1人かな。看護婦さんでもときどき広げられない人いますよ。
手のひらで座面のフレームを押す |
指を外に向けてはいけない シートのフレームとシート受けフレームで指を挟んでしまいます。 |
思いのほか多い謎の行動です。歩けないヒトがどうトランスするのか、知らない人にとってはドキドキものらしい。慣れないせいもあって、動転してる人が多いようです。
パニックは伝染します。こちらまで動転して、転ばないように。
以下、初心者が取るかもしれない行動パターン。
広げられたからといって畳めるとは限りません。「シートの真ん中を持って引き上げて」もらいましょう。