彷徨日記

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2006年分

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06/30 代官山・ライブハウス・3F・エレベータなし

6/30日の「梶原茂人&中田しんいちろう Duo Live『風』」に伺いたいと思っています。 当方、車イスユーザーなのですが、伺いましても大丈夫でしょうか。

代官山ノマドは3Fだということですが、エレベーター等ありますでしょうか。 もしなければ何らかの形で対処して頂いてもよろしいですか。 表参道 LAPIN ET HALOT の、風民ライブにも伺っているのですが、このときは 会場の狭小階段を車イスごと抱え降ろして頂きました。ちなみに、車イスと 本体合わせて 55Kg 程度です。

また、代官山駅からノマドまで、急坂や階段がないかどうかも合わせて お教えください。

会場での対処が難しく、また会場までの道のりが険しいようでしたら、 ライブに参加すると思われる友人達の中で手伝ってもらえる人が見つかれば、 参加、ということになります。

 今になって冷静に考えれば、実に妙てけれんな問い合わせをしたもんだ、と思います。会場はライブハウス代官山ノマド。全く未知の場所で、駅より徒歩6分。自分の身体能力を考えれば、「駅でタクシー拾えますか。」って聞くのが多分常識的な線です。しかも、低姿勢と見せかけて、「主催者側で対処しなくても、あたしは行くぞ。」と、脅しをかけてるし…。
 こんな問い合わせに対し、「エレベータはありません。こちらもスタッフがいないので、お店の方に頼んでおきました。大きな坂もありませんので、どうぞいらしてください。」という快いご返事を頂きました。

 当日、はっと気付いたこと。代官山駅に6時頃。これって、もろにラッシュ時じゃないですか。しかも、いつでも超満員の東横線です。これはマズイ、と予定を早め、4時台に東横線に乗ることにしました。

 横浜駅の地下1階、自由通路から上下へのアクセスは今のところ最悪です。あの大量の人々に対して、東横線用8人乗りの仮設エレベータが1台あるきりです。手動車いすが2台やっと乗れる、というサイズ。ベビーカーでも2台が限界。地上と地下で乗っていっぱいになってしまうため、途中階から乗り込むことはまず無理なので、ラッシュ時は警備員さんが整理に立っています。よーのすけが着いたのは、ちょうど警備員さんが配置される時間だったようです。2人の警備員さんが後ろから追いかけてきて、上ですか下ですか、と尋ね、よーのすけが下だ、と答えると、では上で空けて降ろします、と、上に上がっていきました。程なく、またいっぱいのエレベータが降りてきましたが、数人が降り、乗り込むことが出来ました。東横線の改札は地下3階です。

 自動改札も通れるようになっていますが、サービス室経由で人を頼むことも出来ます。ラッシュ時でしたし時間は十分あったので、普通電車で行くことにしました。幸いにして車内はガラガラです。

 思ったより時間がかかりました。何しろ行き先はエレベータがない3階です。駅には立派な優先トイレがありましたので、そこを使いました。久しぶりに水分調整が必要なケースです。

 「北口から出て、高層マンションADDRESSの中を通って、八幡通りに突き当たったら右へ」と案内されているのに、車いすが通れる改札は南口と東口のみです。しかも東口は階段です。「北口に出たいんですが。」と駅員さんに尋ねると、「ADRESSに行きたいんでしたら、そこの出口を出て、すぐ右に行ってください。」とのこと。で、「そこの出口」を出てみると、タクシー乗り場&いきなり急坂です。ダメじゃん、と、再び改札で確認すると、「そこの出口」とは、「公衆便所→」と大書してある出口でした。どう見たって、これは駅の出口じゃなくて「公衆便所入り口」だよ。

 歩道橋をずっと歩くと、ADDRESSのアーケードにたどり着きます。下層階が高級ブティックと大丸ピーコック。軽く何か食べたいところですが、時間が少し押していましたし、迷わないとも限らないので、そのまま向かうことにします。途中に1軒くらいは何かあるだろう、と、思いつつ。

 八幡通りとおぼしき道に出たので道なりに歩き始めました。あまり歩きやすくない普通の歩道で、緩やかな上りになっています。ただ、住宅地と違って駐車場のための歩道の切れ込みがないので、往生するほどのことはありません。とはいえ、確信が持てない道を歩くのは嫌ですね。余裕を持って歩いているわけではないから、後戻りが難しい。道を尋ねようにも、両側の店舗はすべて、1段から3段の階段があって、声をかけることすら出来ません。「軽く食べる」どころの話じゃありません。どうにか段差5センチのブティックを発見、この通りが八幡通りであることを確認し、さらに進んでいくと、今度は緩やかな下りになりました。これを降りて違っているとまた登らないといけないので、再び決断のしどころです。

 「進む」と決断しました。目印はガソリンスタンドとコンビニエンスストアなんですが、コンビニはともかく、ガソリンスタンドがあるような道には思えない。不安半分でしばらく進み、やっと目印発見。コンビニで何か、と思ったらば、これまた高いところにあります。だめだこりゃ。開場までには時間がある中、どうしようかな、と思いながら近づいていくと、いきなり頭の上から「よーのすけさん」の声が降ってきました。1時間間違えた、という友人でした。友人曰く、「エレベータは…あ、ないの。ま、そのうちみんな集まってくるから、みんなで上げればいいよ…。何?お店の人が手伝うって? 確認してくるよ。」

 このアーティストの系列のライブ…。確かに顔見知りが必ず何人か混じっているせいもありますが、ライブハウスですよ。普通、車いす使う人は絶対、とまでは言わないけれど、まず行かない場所ですよ。そんな場所で、「いて当然」っていう感じで取り扱われる、っていうのは、今の日本じゃ、すごいことなんじゃないか、という気がしますが…。ひょっとして、よーのすけこの感覚、もはや時代遅れだったりします? 車いすで四肢マヒ、言語障害持ちの人間も中に混じっていて当然?

 集まってきたお客さんかつ友人の一人が、じゃ、僕が負ぶうよ、と申し出てくれましたが、それは断りまして。狭い外階段をスタッフさんが2人がかりで運び上げます。うち1人が、「あ、僕この前表参道でお運びしてますから。あのやり方でいいですね。」横に並ぶ隙間がないので、前後に一人ずつ、というパターン。さすがに怖かったですねえ。最初、うっかり確認しなかったため、後ろの人が「タイヤ、回るんですね。」これは確認しなかったよーのすけが悪い。踊り場で一度下ろし、ハンドルかテッピングバーか、ということで、テッピングバーを支えることにして、残りに挑戦。途中直角に折れる場所があり、これは冷や冷やもの。

 運んだ先が受け付けです。よーのすけは確認しませんでしたが、お手洗いもそこにあります。お金を払ってチケットとドリンク引き替えのピックを受け取り中へ。入り口は、ちょっときつめのスロープです。出るのが最後になってしまいますけれど、奥に詰めてもらえませんか、と言われたので、言われるままに一番後ろの奥に入ります。後ろと言ったって、小学校の教室くらいしかないんだもん、あまり違いはありません。「今日はおひとりですか」と聞かれ「はい」と答えると、スタッフさんがドリンクメニューを持ってきてくれ、ドリンクを運んでくれました。

 ぼちぼち人が集まり、友人が友人を紹介し合い、ということをやっているうちに開演となります。

 終演後、ロビーで演奏者としばしご挨拶。直前の忙しい中、ライブハウス側に対応を頼んでくれた中田さん(演奏者自身が「問い合わせ先」になっていた。)にお礼を言い、梶原さんには「お久しぶりです」のご挨拶をして、今度はスタッフさん3人がかりで降ろしてもらいます。

 行きに上って下ったということは、帰りも上って下る、ということです。上りが終わったところで、友人達に追いつかれました。こんなことなら階段の下でもう少し待ってりゃよかった。きれいにライトアップされたADDRESSの中を通り、代官山駅へ。中の一人は横浜まで一緒です。

 10時過ぎの東横線の混み方! 半端じゃないです。自由が丘で特急に乗り換えようとしたら、とてもじゃないが乗り込めず、Uターンして元の普通電車に戻りました。ちんたら横浜まで戻り、横浜駅の改札階でトイレを使うことにして、友人と別れます。この時間だと、さすがにエレベータ待ちはありません。

このライブのアーティストのサイトです。中田しんいちろうHP

03/01(水) -02(木) サンダーバードとおみこしで行く伊豆湯けむりと河津桜の旅

02/XX(木)冗談きついぜ、の戸山サンライズ

 「新宿にですね、戸山サンライズという身体障害者施設があります。そこなら大丈夫でしょう。」
 新宿の戸山? 当サイトに訪れる東京都民の方々が時折話題にする場所です。たしか、車いすの判定とか、障害者系医療機関が集まっているところだよね。午後に市ヶ谷で用事があったこの日、午前中に東京の装具屋さんと打ち合わせをすることにしたのですが、都内での地理に疎いよーのすけ。東京で・身体障害者関係施設なら、大丈夫だろうと軽く考えて、そこを待ち合わせ場所にしました。むしろ問題は「方向音痴の聖地・新宿駅」です。構内は駅員さん任せになるとして、そこから先に行けるだろうか。

 交通は不便なところだと聞いてたので、バス利用は覚悟の上でした。まずは戸山サンライズのサイトで交通を確認しました。大江戸線の駅から徒歩10分、都営バスのバス停から徒歩5分。普通の歩行の倍時間見る感じになりますので、これだと地下鉄はきつい。すでに何度か都営バスには乗っていたので、バスなら使い方はわかってます。東京都交通局のサイトで路線を確認したところ、この路線、駅は病院と療養所と障害者関連施設ばっかりです。これならさぞかしリフトバスも充実していることだろうと時刻表を見たところ、なんと「リフト」マークが一つも付いてません。これは、全部リフト付きということかな、と思えば、わざわざ「リフトマークの付いてるものはリフトバスで運行しています」という断り書きが書いてあります。ということは…困る。

 戸山サンライズのサイトによれば駐車場もないことになってます。ということは、リフト付きシャトルバスでも出しているのかな、と思い、戸山サンライズに電話で問い合わせました。

 「バスの運行状況ですか…。何時台? ああ、少々お待ちください…。10分台、40分台…。は? リフトバス? リフト付きでないとダメなんですか?」 ダメですか、ってアンタ、だから、さっきから車いすで行くからリフトバスの運行状況を、って聞いてるんじゃない。普通のバスに車いすで乗れるわけ? そりゃ横浜市営バスでは快くみんなで乗っけてくれたこともありましたけどさ。リフトバスの運行状況は把握してないんです、だと? じゃ、みなさん車いすの方はどうやって来てるんですか、と問えば、タクシーだという。タクシー? この距離だと片道4千円くらいかかるよね? 1年に1度か2度頑張って出かける人ならともかく、 ♪ ガンバレ月は流れて東へ西へ〜♪なぞと唱えながら日々東へ西へとうろちょろしてる人間にその交通費は…。日帰り旅行が出来ちゃう。なおも聞いてみると、「全部リフト付きと聞いているけど、確たることはわからない。」という。そう、それが聞きたかったのよ。初めからそう言えばいいじゃない。念のため、都バスの配車センターを探して確認すると、大丈夫、とのこと。車いすユーザが身体障害者施設への交通手段を調べる、というごく普通の行為に、何でこんなに手間取るんだ。

 「ひょっとして、バス停から現地までの間に何かトラップが…。」と、嫌な予感が頭の隅をかすめたものの、気付かなかったことにしました。で、当日、JR戸塚駅にて湘南新宿ラインに乗り、一気にJR新宿駅へ。とにかく西口へ、とお願いすると、いくつかのエレベータを乗り継いで西口へ出ました。別のホームを経由したりしましたし、「→西口」という看板とは違う方に連れて行かれたりもしたので、エレベータづたいに単独行動は、ルートを知っている人でないと無理でしょう。とにかく西口へ出してもらい、バス停に行くには交番を過ぎたところのエレベータでと言われて送り出されました。

 とはいえ、乗りたいバス停は、ロータリーの向こう側、小田急ハルクの前です。地図を見た直感では、地上で繋がっているようには思われません。おそらく、歩道橋か地下道かどちらか。ちょうど目の前に都バスの営業窓口があったので、尋ねてみると、やはりそこのエレベータから行けと言う。小田急デパートのエレベータで上がって建物づたいに行くのが正解なんじゃないかなあ、と思ったけれど、方向音痴の勘ほどアテにならないものはないですから、言われたとおりにエレベータを上がると、そこはロータリーの中。目指すバス停は遙か彼方です。そこを目指してロータリーを横切っていくと、案の定、渡ることは出来ませんでした。で、Uターンしまして、案内係らしい人に再度尋ねると、横断歩道が一つあるはずだ、行けるかどうかわからないけど行ってみろ、と言う。無茶言いよるなあ、と思いましたが、時間は迫ってきているし、これでまた地下に入って方向を見失わないとも限りません。そもそも、地下だってこの分じゃ段差なく繋がっている保証はない。横断歩道を見つけ、渡ったのはいいけれど、歩道に上がれない! とてもじゃないけど、後転せずに上れる勾配じゃありません。通行人に引っ張り上げてもらいました。帰りには、小田急づたいに行ってリベンジだ、ということにしました。

 なんとかバスには間に合いました。降りてきた運転手氏に「乗るの?」と聞かれ「うん。」と答えると、運転手氏、再びバスに乗り込んで幅寄せ開始です。ぴったり幅寄せしたバスに簡易スロープを引っかけ、車いすを上げます。本来なら座席を畳んで車いすを接地するのですが、ちょうどドアの横にスペースが空いていて「3台目の車いすコーナー」になってましたので、ここでいいです、とそのくぼみに滑り込みました。よーのすけが乗り込んだ後で、やっとこさ一般乗客の乗り込みが始まります。

 戸山町までは20分ほどでした。バスを降りて、30秒ほど走って右折…。右折。なんだい、この坂は。これを降りろってのかい。下るのはいいのですが、万一、「間違った」なんて言われた日には戻ってこれず、目も当てられません。下ろうかどうしようか迷っているところに、下から介助者に押してもらって上がってくる車いすユーザさんが現れたので、尋ねると、正解とのこと。よっしゃ、と降りかけたところを「ちょっと待って、と呼び止められました。「そっちから行くと歩道が途中でなくなって危ないので、渡ってから行った方がいいですよ。」なんでだよ。戸山サンライズは道の反対側じゃんか。最後で道を渡れと言うことか。何というところに建っているのだ。これでシャトルバスが出ていないとは驚きですわ。

 下る分には大したことないけど登るのは嫌かもしれない坂を下るほど数分、戸山サンライズにたどり着きました。バス停の位置を聞いた装具屋さんがあきれてひっくり返ったのは言うまでもありません。帰りは見かねた装具屋さんが市ヶ谷まで営業車で送ってくれたので新宿駅リベンジは果たせませんでしたけど。

 あるかもしれない、とは思ってたけど、さすがにがっかりしましたね。坂なのは仕方がないにしろ、アクセスのためのそういう情報は先回りして出しておいて欲しいもんです。仮にも身体障害者施設だというのならば。

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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[MailTo_ocean@mbc.nifty.com]