幸禍はあざなえる縄のごとし−名古屋旅行記

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地下鉄と坂と階段と

寝坊した!

 目覚ましをかけたのは6時でした。シンポジウム開始が9時。栄駅から会場最寄り駅まで30分程度で、そこからさらに距離がある模様。8時前に出れば、途中のコンビニでお弁当を買ってちょうど間に合うはずでした。それが起きてみたら8時20分前。明け方に目が覚めて、時間を見るために電気を付けるつもりで間違えて目覚ましを解除したらしい。こんなことなら、面倒がらずにPHSのアラームをセットしておくのだった、と、後悔しても始まらないので、大あわてで身支度しました。前日に、きっちり着るものを並べて持ち物をパックしておいたのが幸いしました。朝食バイキングでトーストと牛乳、卵をかきこんで、ホテルを飛び出したのがなんと9時20分。重度脳性マヒ者とは思えないスピードだわ、と、こんな時にもツッコミを忘れないよーのすけ。

 ホテルの前にタクシーが並んでいるのだから、素直に乗ればいいものを、地下鉄にこだわるところが我ながらアホです。行きがけにコンビニでお弁当も購入し(敷居が高くて自力では入れず、店の外がら店員さんを呼んだ)、栄駅へ。

行き先の状況は皆目不明

 エレベータで地下に下りたまでは良かったけれど、さて、どこが改札だか見当が付きません。昨日はすごくたくさん歩いたような気がします。なにしろ遅れているから余計に長く感じます。ただひたすらに地下道を走り走ってようやく切符売り場が見えてきました。が、ここは自動改札で幅も狭い。情けないことに切符の買い方がわからない。一人だけ立ち番をしていた駅員さんがいたので尋ねてみると、もっと先だと言います。その改札へ連絡をしてくれましたが、そこまでは自力で行けと言われ、切符だけは買ってもらって、さらに先へ。ようやくエレベータらしきものが見えてきました。

 人間、焦っていると見えるものも見えなくなります。エレベータは見えるけれど、改札がどこだかわかりません。柵に沿って回り、やっと改札を入ることが出来ました。名城線に乗って八事日赤駅へ向かいます。

 なにしろ市営地下鉄で、日赤病院の名がくっついている駅です。エレベータがあるのはいうまでもありません。とはいうものの予想どおりエレベータがあるのは病院があるところだけです。これが会場に近い方やら遠い方やらわかりません。エレベータの行き先ボタンは「1階(道路)・2階(病院玄関)」となっています。とりあえず道に出てみよう、と思って1階に。出てみたそこは坂の途中。

 坂を上がるのと下がるのとどちらに行くのが正しいか。腕に自信のない車いすユーザーにとって、そこは思案のしどころです。上に上がるのはめんどくさい。でも下に降りて間違ってた日には上がれなくなる可能性がある(いい加減動力積めよ、という声が聞こえる。)。

 直感的には下方向のような気がして、10メートルほど降りかけたところで、はっと我に返りました。シンポジウム会場は山の上と聞いています。しかも、時間がない。よーのすけ、この日の10時からの報告を聞くためにわざわざ名古屋まで出て来たんでした。Uターンしてえっちらおっちら坂を上り、日赤病院の玄関にたどり着きました。とはいうものの病院休業の土曜10時前です。タクシーいないとまずいぞ、と思いましたが、出入りはあります。見ればタクシーが1台とハンディキャブが1台客待ちをしているではありませんか。

 さすがにエレベーター1階分の差だけありまして、道から病院はかなりの坂です。エレベータに戻れば良かったんでしょうが、何しろ休業日ゆえ、素直につながるかどうか自信がなかったので、車が出入りしているところを目指して進んだんです。よーのすけ、もっぱら手動を使う割には「いかにもぎごちなく」漕いでます。ここでも見かねた通りすがりの女性が助けてくれ、タクシーに乗せてくれました。ハンディキャブならよーのすけの地元で交付されるタクシー券が使えることになっているのでハンディキャブで行ったろか、と思ったのですが、行った先でちょっとした騒ぎになりそうな気がしたので、普通のタクシーにしました。

会場はやはり山の中

 車いすでGO!を実行に移さなくてよかった。会場までは何度も坂のアップダウンがありました。そして会場はそれ自体が山の中でした。何しろPHSの電波が入らない。

 お昼ご飯を食べる場所に行くにも坂を上って降りる。階段を回避するために遠回りを強いられます。数人の友人たちと一緒に動いたのですが、「うわ、階段ですよ。向こうから行ったら繋がっているかしら…。見てきますね。」の繰り返しです。行けるにしても坂ですから(スロープなんていう結構なもんじゃない)、車いすを押し慣れていない人々には非常に迷惑な話です。あぁ、やっぱり電動を貸してもらっておけばよかった。挙げ句、昼食会場の直前で階段に阻まれ、よーのすけたち一行は、別の場所を提供される羽目になったのでした。

 昼ご飯の時には電動を持ってくりゃよかった、と思いましたが、晩の懇親会場が、なんと階段で阻まれたその場所でした。これは、おみこししかありませんわなあ。日頃、体力とは無縁の頭脳労働者集団です。若手の人々にお願いして、えっちらおっちら上がり降りすることになりました。いやあ、電動持ってこなくてよかった。

 帰りは、皆さんと一緒だから、駅まで押してもらえばいいや、と気楽に頼んだところ、「絶対に嫌。」との予想外の答えが返ってきました。こんな断られかたをすることは滅多にないのですが、仕方なくタクシーで。駅までのつもりでしたが、たまたま近くに泊まっていらっしゃる方がいて、割り勘でホテルに直行です。

 風呂に入って寝よう、とバスルームを覗いたところ、昨夜、苦労して直したトランスボードと腰掛けがもとの場所に戻ってました。ホント、健常者って何も考えていないのね。えっちらおっちらまた調整して風呂を入れながら、お客様カードにしこたま意見を書きましたさ(後日礼状が来た。)。帰り支度をし、しっかり目覚まし確認して寝たのはいうまでもありません。

落ち着いて走ってみると…

 翌日は予定どおりの時間にちゃあんと起きました。身支度をしてゆっくりご飯を食べて駅へ向かいます。日曜日とはいえ、地下街にはモーニングサービスをしている喫茶店も少しありました。わかっていたらホテルじゃなくてこっちで食べたかったな。時間にゆとりがあったので八事日赤駅のエレベータでは2階の病院玄関に降りてみることにしました。すると、あらら、昨日のタクシー乗り場と同じ高さです。日曜日の9時過ぎに1台だけ待っていたタクシーに乗りました。慌てふためいていた前日より30分近く移動時間短縮です。

 この日、2時間ほど空きになる時間があったので、前述ろーすハムさんとお会いすることにしてました。奥様も交えたマイクロオフ会です。会場からもう一つの最寄り駅、名古屋大学側に降りたのですが、ろーすハムさん曰く、「この坂、インテグラルMEじゃどうにもなんないですよ。」そうか、それで夕べ「絶対に嫌。」なんてにべもなく断られたのか。電動で来ていたら、絶対駅から歩いてましたものね、このよーのすけ。立ち往生していたに違いない。やっぱり電動借りられなくて正解だった模様です。

うどんを食べておうちに帰ろう

それでもやっぱり公共機関

 シンポジウムも終わり、さて、どう帰ろうかな、と思っていると、会場整理をしていた青年が、「どうやって帰られますか。」と聞いてくれました。出来れば一番近い地下鉄の駅まで行きたいんですけど、と相談すると、では僕が名古屋大学駅までお送りします、と言う。坂があるようですが、と聞くと、大丈夫だというので送ってもらうことにしました。「インテグラルMEじゃどうにもなんない」坂は、確かにすごかった。イスから落ちるかと思ったよ。よい子はマネをしないこと。

 名古屋大学駅は、道にぼこんとエレベータだけがあります。

 コンコースまで降りたところで、またもや友人にばったり会いました。三々五々帰宅とはいえ、会わない方が不思議な状況ではあります。一緒に名古屋駅まで戻り、新幹線の都合上そこで分かれました。なにしろよーのすけ、名古屋で夕ご飯食べたいばかりに、遅めの時間で予約取ったんですから(半分はウソです。念のため。)

 ターミナルビルまでは友人が送ってくれたので、エレベータでレストラン街まで上がります。目指すはみそ煮込みうどん。なにしろ知らない場所であり、タイムリミットがあることなので、時々立ち止まって方向確認しながら進みます。情けないったりゃありゃしません。

 専門店らしきものを発見し、入ってみると、あれ?ここでも知った顔が…。「ありゃ、はづきさん、一人かい。おいでおいで。」と手招きされて寄ってみれば、偉い人たちばかりが今や酒盛りを始めんとするところでした。若手はあっち、と指さす方を見れば、店の奥にこれまた知った顔の集団が。いや、ワタクシ電車の時間が…と言うと、僕も同じ時間だから、ちょうどいいや、押していきますよ、とおっしゃる。非常にありがたいのですが、やりにくいのも確かです。

 酒盛り集団の一員と見られたらしく、なかなか出てこない「鶏玉みそにこみうどん」を催促し、発車20分前に店を出ました。発車15分前までに改札にたどり着かねばなりません。

JRの謎。なんでお客が駅員より詳しい?

 手近な改札に飛び込みまして、駅員さんに連絡を頼むと、「そこで待ってて」と言います。しかし、待てど暮らせど誰も来ません。乗車前にお手洗いに行っておきたかったのに。それに、来た時の記憶では、ここから新幹線乗り場までかなりあったはずです。ギリギリまで付き合ってくださった知人も心配そうな顔で去り、発車5分ほど前になってようやく駅員さん登場です。「向こうの新幹線改札に来てくだされば早いのに。」それはこっちの台詞だよ。新幹線改札まで行けと言ってくれれば移動したのに、ここで待てと言ったのはそっちじゃないか。「すいません、どいてください」と叫びつつコンコースをダッシュで走る走る。ほとんど救急車状態です。ギリギリで新幹線ホームにたどり着きましたさ。

 ゜座席は…。11号車の1列ですか…。11号車の13列か14列に取れば車いす横に置けますのに。どうしてそこを取らなかったんです?」それもこっちの台詞だってば。車いすが置ける席を、ってお願いしたらそこを取ってくれたんですから。お客が座席ナンバーを把握してるなんてありえないですよね。そういう指導は、座席表を持っているみどりの窓口にしておいて欲しいです。汎用トイレがどこにあるかすら、みどりの窓口は把握していないんですから。

 帰路の席はイスの後ろが広く、そこに車いすをしまうことが出来ました。

 横浜駅では横須賀線を使うことにしましたが、「昇降機のあるところご存じですね」と聞かれて、驚きました。昇降機? エスカルのことですよね。横須賀線横浜駅はエスカレータ逆送じゃなかったっけ。怪訝な顔をしていたら、「仕方ないな」という顔をして先導してくれました。狭い階段に無理矢理付けたエスカレータの逆送が嫌なばっかりに、横浜での横須賀線乗車は徹底的に回避していたのですが、いつの間にかエスカル設置になっていたらしいです。

 移動時間が比較的短かったこと、2度目の場所だったこと、全て自分でマネジメントした2度目の旅行(?)だったこともあって、今回は比較的よく動きました。一人でうろうろ動くというのは、往生することもありますが、往生してても誰にも文句を言われない、というところが気楽です。


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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[Mail_ocean@mbc.nifty.com]