幸禍はあざなえる縄のごとし−名古屋旅行記 1

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名古屋まで

なんちゃってバリアフリーの新横浜駅

 「新横浜まで在来線で行って新幹線」、はいつものことです。ただ、JRは乗り換えなどがいろいろありまして返って面倒なので、横浜駅までは京浜急行を使います。よーのすけ、JRは横須賀線なのですが、横浜駅のJRホームはエスカレータ逆送でして。半端じゃない人が乗り降りする横浜駅で、エスカレータ逆送なんて、無謀としか言いようがありません。いつもどおり、京急横浜駅に降り、ふと見ると、「エレベータ工事中」の白い幕で包まれた一角があります。北口側ホームにエレベータが出来たのは知っていましたが、中央改札にもエレベータ作るんだ、すごいな、と思いつつ、エスカルでホームから降ります。パスネット−スイカ乗り換えなので、そのままJR改札に渡されます。JR横浜線はホームまでエレベータで。電車一本待たされます。ぼんやり向かいの横須賀線を見ていたら、横浜線のエレベータと同じ位置に白い布で包まれた一角が。エレベータ工事中に違いありません。NEXのためエスカレータを設置したのでエレベータ付けるスペースも予算もありません、ってずっと言っていたのに。

 新横浜駅には30分前に到着しました。半端な時間です。直接ホームに上げてもらい、水などを買ったものの、少し冷えてお手洗いを使いたくなりました。てっきりホームにお手洗いがあると思い、警備の人に尋ねると、「ない」とのこと。下に降りるエレベータは、例によって改札の外に出るエレベータなので、鍵を持っている人を探さないと使えない。警備員さんが走り回って鍵を持つ駅員さんを探し出し、駅員さんが駆けつけた時には15分前です。まったくもぉ、誰でも使えるエレベータにしておかないからこうなるんだっ。

 焦りつつ下に降りて汎用トイレ行ってみると、見事に使用中。しまった、ここはリハビリセンターと、障害者スポーツセンターがある駅だった。利用度が異常に高いんでした。じゃあいいです、と言おうとした矢先、焦りまくった駅員さん、ドアをノックして、「車いすの人が使います。」開けてください。と叫びます。いや、そこまでせんでも、と言おうとしたら、すぐにドアが開き、中からぞろぞろぞろと制服着た女の子たちが一杯出て来ました。着替えていたわね、君たち。駅員さんに怒られ、「ごめんなさーい」といいながら逃げる彼女たち。入れ違いにトイレに滑り込んで、用を済ませ、手を洗おうとすると、水が出ません。見ると、赤外線水洗のコードが抜けている。管理が悪い駅だなあと、洗面台の下に潜り込んで、コンセントを入れて気が付きました。娘っ子たち、ドライヤー使っていたな。出てくると、車いすの人が待ってました。娘っ子どもを追い出したよーのすけは、いいことをしたようです。

 予定の電車には間に合いました。11号車の1列通路寄り。たしか、車いす用スペースが空いているはず…と思いましたが、残念、ありませんでした。車いすは畳んでデッキに出されます。とはいってもすぐ前です。座席の前のスペースが比較的広かったので、荷物は上に上げず、足元に置くことにしました。

名古屋駅〜栄駅

 名古屋駅の新幹線ホームのエレベータはちゃんと改札の中に降ります。当然解放されてます。とはいえ、新幹線と横浜線と市営地下鉄しか通っていない新横浜駅とは違い巨大ハブ駅の名古屋駅。どこをどう歩いたのやら。「地下鉄で栄駅に行きます。」と言ったらば、名古屋駅の正面玄関まで連れて行ってくれ、地下鉄への引き継ぎが来るまで待ってくれました。折良くクリスマスイルミネーションが点灯した夕方で、「どうせ待つのなら、見えるところで待っていてください。私、こっちで見てますから、と見えるところへ連れて行ってくれました。冬の星座をテーマにしたイルミネーションで、とてもきれいでした。

 ちょっと時間はかかりましたが、地下鉄の駅員さんに引き継がれ、外を回って、名古屋ターミナルビルのエレベータで地下へ下ります。東山線ホームまではエレベータで素直に行けます。「身障者手帳、お持ちですよね。」と聞かれ、「はい?」と答えると、半額になります、とのこと。名札を見れば「名古屋市交通局」の文字が。そうか、名古屋も地下鉄って市営だったんだわ。

 栄駅もまた、ホームから地下コンコースまではエレベータ。「オアシスにエレベータがあるんでそこから上に上がってください。」オアシス?何だいそれは。「1番出口から出たいんですけど」と言うと、1番は階段なんで2番から。とにかくそこをずーーーっと突き当たるまで行ってください。突き当たったら左。」言われるままに、突き当たり、突き当たり、突き当たり…。なかなか突き当たりません。途中、案内板を見たけれど、突き当たるのはだいぶ先になりそうです。1番出口は2番出口の向かいらしいんですが、出る先は十字路の角です。こういうのって、絶対わからなくなるんだよな。ホテルのパンフがあったはず、とバッグを探しましたが、見あたりません。バッグに入れようとしたら、宿泊先をメモしようとした母がいじっていて、それ、持っていくんだからね、と、声を掛けたのですが、そのまま忘れた、というのは後から判明した事実です。

 地上に上がると、雨がぱらついていました。雨用ズボンで良かったわ、と思いつつ、たいしたことはなかったので、ヤッケも羽織らずそのまま出ました。歩いて3分ですから、私の車いすだってせいぜい5分、ってところです。こっちだろう、と目星を付けて歩き始め、駐車場のおじさんに方向を聞くと、そこを渡って左ですぐ見えるよ、とのこと。言われた方に歩いたつもりだったんですが、そこは、やはり左右がわからなくなるタイプの方向音痴、左と右を間違えて、ちゃんと路地に入り込みました。行けども行けども見あたらず、いくら自分が遠くてもこんなにかかるはずはない。なにやら道も狭くなってきて、これは違うや、と、戻りつつ一本一本道を覗いていくと、見えたのは「ワシントンホテル」の看板。確か駅の看板では ワシントンホテルの向かいにあったはず、と、そちらに向かい、ワシントンホテルの周りを一周しようとしたところ、ホテル錦の裏口発見。そこからロビーにたどり着きました。

到着

栄駅周辺

 部屋に入ったのは6時ちょっと前。荷物を置いて一休みし、駅までの道を見つけなければなりません。でないと翌日えらいことになってしまいます。夕ご飯も食べなければなりません。駅ビル「オアシス」にもレストランはあるようでしたが、イタリアンとか焼き肉屋さんで今ひとつです。とりあえず、駅までの道を探してから、こちらに戻って食堂を探そう、と、財布だけ持って外へ出ました。幸い雨は止んでいます。

 しかし、どこをどう歩いたやら。碁盤の目状の街なので、基準位置の方向さえ覚えておけば戻ってこられるのですが、なぜか駅が見つからない。2、3回行きつ戻りつしまして、ようやく駅を発見しました。エレベータの位置を確認し、さて、最初に駅から来た時は、大通りをまっすぐに歩いて一本手前で曲がっちゃったんだから、もう一本向こうに行って、道を入ればいいはず、と、大通りを歩いていくと、あれ? 『ホテル錦』の玄関が。げ、駅の大通りに面していたんだ、このホテル。

 やっとわかりました。出る前に一生懸命見ていたホテルのサイトの地図で位置関係を勘違いしていたらしい。「ホテル錦」と書いたところではない場所が実際の場所だったんです。パンフを持ってきていたら、多分迷わなかったんでしょうけど。3分もあれば十分行けることを確認して、食事が出来るところを探しに行くことにしました。ずいぶん歩き回ったはずですが、イタリアンやフレンチ、創作和食に寿司屋といった店はあるものの、これじゃ横浜でも同じです。それに、やっぱり地下や2階なんですよねえ。ローカルなデパートがあったので、そこへ入り、フロアマップを見たところ、どうやらレストラン街は向かいの第一、第二サカエビル、というところにあるらしい。第二の方が新しいから、エレベータあるだろう、との見込みのもと、第二サカエビルに行き、入り口らしきものを見つけたところ、「地下のレストラン街へのエレベーターを使う方は、このエスカレータを使ってください。」とのこと。やられたよ、と思いつつ、第一ビルの1階に出ていたこじゃれたブティックへ入りました。なんとか地下へ繋がってくれえ、と思いつつ。

 幸いにしてエレベーターがあり、辛うじて地下へたどり着きました。せっかくの名古屋ですもの、となれば、みそかつかひつまぶしかみそ煮込み…。お魚系はどっちかというと苦手なよーのすけ。ひつまぶしはさすがにお値段も結構でありましたので、みそかつ屋に入ることにしました。

 世の中って広いようで狭いです。どこかで見たことがある顔を背後に感じ取り、「あのぉ」とおそるおそる声をかけてみると、やはり同じシンポジウムに出て来ていた方でした。よーのすけは食事介助は必要ないのですが、横に知っている健常者がいるのといないのとでは、そりゃ安心感が違います。といっても、こういう目上の方だったりすると、返って緊張したりしてね。でも、恐縮しつつお手伝い頂く図太さが、「障害者」には必要です。ガイドブックに載っている有名なみそかつ屋だったらしく、おいしかったです。値段も手頃で非常に満足しました。

 食事を終えて戻ってみると、デパートは閉鎖され、最初に入った入り口とは違う出口から出る羽目になりました。こういう事態によーのすけは弱いんです。「はづきさん、方向音痴なんでしたよね。ガイドブックによると、たぶん道を渡ってあっちです。僕らはこっち。」言われたとおりに道を渡ったものの、なんだか反対方向のような気がする…と、渡ってきた方向にUターンし、もう一度建物側を振り返れば、そこはなぜか自分が出て来たホテルの玄関です。周囲を全然見ていないのがよくわかりますね。よーのすけ、どうやら真向かいの建物の周りを一周して、裏側から入っていたらしい。そしてその事実に気付かなかったらしい。

ホテルの住環境

 部屋に戻ると、もう9時を回っていました。翌日の準備をし、お風呂を作ります。トランスボードの位置を変え、バスタブ内に設置されている吸盤付きの腰掛けをうんうん言いながら引っぺがしてシンク下に押し込み、と、四肢マヒ者が一人でやるにはちょっとした大作業です。客室係を呼べばやってくれるんでしょうけどね。レザーパンツが窮屈で、さっさと服脱いじゃってたし、微妙な位置が難しかったので自分で調整しました。とはいえ、このレベルのバリアフリールームで、トランスボードを入れてしまうと、もう車いすごとバスルームを使うことは出来なさそうです。

 出来合いのバリアフリールームにはありがちですが、このバスルームも横の手すりはありますが縦の手すりはありません。入る時には、バスタブのへりに沿って設置されたバーにつかまって滑り降りればいいのですが、出る時に困ります。よーのすけのように立ち上がる人の場合は、手すりにつかまると前屈状態になってしまって立てないし、プッシュアップする人の場合でも、プッシュアップしてフロア側に出ないといけないのに、そちら側には何もないので難しそうです。フロア側に1本縦の手すりがあるといいのですけどね。よーのすけは、例によって、洗面台を手がかりにしてトランスボードによじ登りました。毎回ドキドキする&どこかすりむく瞬間です。でも、さすがはバリアフリールームで、ソープディスペンサーは、バスタブ内に座ったまま手が届く位置にありましたよ。

 ここのホテル、寝間着は浴衣ではなくて、足首まで届く前あきのシャツ状のものでした。はだけないのはありがたいです。PHSのアラームを使うか一瞬迷いましたが、ベッドサイドの目覚ましをセットして布団に潜り込みました。枕が高すぎて、肩に負担がかかりそうだったので、車いすのクッションをバスタオルに包んで代用です。


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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[Mail_ocean@mbc.nifty.com]