彷徨日記

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2003年分 下半期

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12/23(祝)渋谷・青山表参道

 一年ぶりのライブ! 場所は表参道 LAPIN ET HALOT。

11/XX・12/XX横浜駅東口のバスターミナルと上大岡乗り換え3連敗

12/XX(日)横浜中華街探訪と上大岡2連敗

10/XX(金)・11/XX(金)(土)市ヶ谷・飯田橋3連発

 JR市ヶ谷駅と飯田橋駅の中間地点にある場所へ、連続で出掛ける用事ができました。最初は、午後の用事で、昼ご飯をどこかで食べなければ、というおまけ付きの用事です。
 駅前でご飯を食べる。これ、歩行に支障がない人にはなんてことない課題ですが、車椅子ユーザーにとってはちと大仕事です。何しろ、銀座みたいな繁華街で、連れがいてもご飯食べ損ないかけるんですよ。知らないところで一人でご飯食べるなんて、無謀に近い話です。幸いにして、父が市ヶ谷駅をよく知っていたので尋ねたところ、「あ、改札出てすぐのところに喫茶店があるよ。それに、外へ出れば食べ物屋だらけだ。」とのこと。じゃ。大丈夫か、と、呑気に出掛けました。
 利用したのはJR。東京駅で乗り換えです。また「一番後ろの車両」が「一番前」に化ける伝言ゲームがあって、待たされた後、職員用通路を使って中央線ホーム、御茶ノ水乗り換えで市ヶ谷着です。エスカレータでデッキに上げられた後「そこまっすぐ行って右に行くと改札だから。」結構な距離です。改札を出ると、そこには確かにサラダバーと喫茶店がありました。が、サラダバーは止まり木で、喫茶店は2階じゃん。目的地まではタクシー利用なので、あまり駅から離れたくない。タクシー乗り場は駅のスロープを登って左手にあります。とりあえず駅を出て、にぎやかそうな右に行ってみました。しかし、きつめの上り坂を通行人の助けを借りて上り、5分ほど走っても何もない。間に合いそうになくなって、また駅に戻り、道の向かいを見ると、銀行の脇に、喫茶店風のものが見えたので、そちらへ行ってみることにしました。入り口のスロープは少しきついものの比較的大きなサンドイッチ・ショップで、どうにか食事をとって、駅へ引き返し、時間までに目的地へたどり着きました。とはいえ、門前でいい、というのを、どうしても中まで入れてやると聞かず、開いている門を探して走り回り、料金を倍にしてくれたタクシーの運転手氏の親切には、いささか閉口しましたが。
 帰路は、仲間と飯田橋の方に抜け。食事をした後、タクシー乗り合いで東京駅まで戻ったのですが。運悪く、最初に拾ったのが「小型タクシー」。車椅子なんか積めやしない。前はナビで一杯で人が乗れるもんじゃないし。結局2台分乗で丸の内北口に着。タクシー乗り場の角のエレベータでB1Fに降り、改札をくぐりました。そこからは、駅員さんの誘導で電車に乗り、帰宅です。

 2度目と3度目のこの場所は、到着期限が朝9:30。ラッシュの盛りは過ぎているものの、まだ余韻が残る時間です。車椅子ユーザーにとってはもっともうれしくない時間帯です。とはいえしょうがないので、JR。比較的空いている横須賀線ならともかく、かの有名な1分ダイヤの中央線に乗る勇気はさすがになかったので、東京駅でタクシーを拾うことにしました。
 ところが。こんな時に限って、踏切が締まらない事故。電車のダイヤは乱れ、混乱は続き…。せめて運が良かったのは、よーのすけの前の列車から動き始めたらしく、待ち人たちは前の列車に詰め込まれていて、始動2本目のこの電車は比較的空いていたこと。とはいうものの、1時間近くよけいに時間がかかり、素晴らしい遅刻になりましたがな。東京駅では、予想通り駅員さんは来ておらず、乗客に降ろしてもらって、担当者をさがす、とという東京下車の乗務員の申し出を、時間がないので、と断ってエレベータ目指して漕いでいたところ、むこうから、「渡り板」を持って歩いてくる駅員さんと遭遇。「ひょっとして、○○駅から来ました? 前の列車で?」と、尋ねられたので、そうだ、というと、「じゃ、そうですね。まったくもう、いくらダイヤが乱れているからといっても、車両番号は調べりゃわかるんだから、連絡してくれりゃいいものを。」と文句しきり。そんなこと、よーのすけに言っても困るんですけどね。B4Fで、いつも通り裏通路に入って、丸の内出口向かいの公園のエレベータから出て、目の前のタクシー乗り場でタクシーに乗ります。
 さて、問題です。何かが一つ抜けています。
 遅刻しつつも無事会場に着き、ポッケを探って、息が止まりました。手に当たったのはイオカード。東京駅で出口処理をしていないっっっ! 裏を通るので、改札をくぐらないんです。電車が遅れて慌ててたので、全く思い出しもしなかった。カードの残金は半分以上あり、このまま失効させるわけにはいきません。さて、この複雑な事態を、よーのすけは、今夜説明しなければなりません。あわただしい改札口で、言語障害ありありのよーのすけに、そんな芸当ができるのか? 自信がなかったので、事情を書いたメモを作りまして。帰りは、JR飯田橋駅まで、知り合いに車椅子を押してもらい、とりあえず、東京駅までの切符を買ったのでした。
 東京駅で、中央線に迎えに出ていた駅員さんにメモを見せ、改札を一度通してくれるようにお願いします。南口改札を通してもらい、メモを見せました。すると、カード処理をしようとした駅員さん曰く「あれ? 入ったことになってませんよ。」「え? 逗子で入ったんですけど。」と、よーのすけ。「でも、ほら、逗子で打ってないでしょ。」たしかに、逗子の記録がありません。前回も、処理されてなかったので、今回は気を付けてたのに。窓口で機械に突っ込んだの確認してから出てきたのに。なんで。「でも、それじゃ、無賃乗車ってことになりますよね。」とのよーのすけの問いに、「まあ、そうなりますけど、入ってないことになってますからいいですよ。」と、駅員さん。公認で無賃乗車してしまったよーのすけ。
 そのまま、横須賀線に乗り、到着駅で精算をしたのですが。
 翌日も、同じパターンです。土曜日でしたので、少しは空いてる電車に乗りました。改札で、イオカードを受け取った駅員さん、手元の機械にカードを通して裏を確認して、首を傾げ、やおら、窓口を出て自動改札機にカードを通します。そういえば、東京駅で「通して下さい」と頼むと、駅員さん、必ず外に出てきて通してたような気がする。今回は、東京駅ホームで「イオカードですからね。」と、宣言して、表側のエレベータを使い、忘れずに改札を通るのに成功。
 普通、改札を通るのって、わざわざ意識することじゃないですよね。普通は改札を通らないと、駅への出入りができないはずなんですから。でも、そんなことにまで、気を回さなければいけないんですよね。車椅子ユーザーって。おっちょこちょいで忘れっぽいよーのすけには、とても車椅子ユーザーはつとまりませんわ。

10/XX(水)銀座 ー教文館

 藤城誠治という、影絵作家がいます。誰でも一度はどこかで目にしているはずです。カルピスの広告で知っている人が多いかもしれません。つばひろの帽子をかぶった、大きな瞳の少女の横顔が有名です。
 この藤城誠治の作品展が、銀座の教文館というところでありました。影絵ですから、ぜひ一度、光を通した本物を見たいと思っていましたので、出掛けることにしました。こういうときの連れは、毎度おなじみの妹くんです。

 JR有楽町で待ち合わせ。最寄りJR駅から電車に乗ります。普通なら新橋で乗り換えるところを、横須賀線の新橋駅は、ずーっと、エレベータはもちろんエスカレータさえなく、地下4階から手運びというすごいところ。地下3階からはエスカレータが設置されたものの、2階分が1本という、車いすにとってはかなりおとろしい状況。この長いエスカレータ、駅員さん最低2人がかりで支えるのですが、3分の2のあたりで、駅員さんの表情が変わってくるんだもん。去年新橋駅完成のニュースもあり、予め調べればよかったのですが、急に決めたもので、ちょっと時間はよけいにかかるけど、安全な品川乗り換えを選んだのでした。

 最寄りJR駅には、なぜか2台もの車いす。窓口の駅員さんは少々年輩。一抹の不安があったものの、イオカードの処理を頼み乗り込みます。で、不安は的中し、車内でイオカードの裏を見たところ、処理はされていなかったのでした。

 有楽町駅は、エレベータがあり、中央口からだけスロープで出られます。構内にはハンディキャップ・トイレもありました。

妹くんと落ち合い、まずはご飯。でも、その前にトイレね、ということで、ここなら絶対あるだろう、の銀座プランタンへ。ところがぎっちょん。ハンディキャップ・トイレは最上階にしかありません。しかもこれが使いにくいことこの上ない。いろいろハンディキャップ・トイレは見てきたけれど、2本とも掴まれない手すりを実際に経験したのは初めてです。手が届かないんだもん。とってもきれいに上品に作ってあるのにね。

 ご飯だご飯だ、ご飯なんだけど。ショッピングモール銀座INSでとる、というのが、お手頃な普通の選択肢なんですが、どこをどう探しても、地下と2階にしかないレストラン街にアクセスする手段がない。「ま、銀座なんて、ご飯食べるには事欠かないところだからさ、の妹くんの言もむなしく、行けども行けども食堂らしきものはあるけれど、入れるところがない。とうとう教文館に着いてしまいました。

 こりゃ参ったな、と、見回せば、何軒かレストランが入っているらしい銀行のビル発見。あれだ、と近づけば、これまた階段。うう、銀行にはエレベータあるみたいだけど、普通は銀行内のエレベータは別だもんね、とさらに見渡せば、「松屋側のエレベータをお使い下さい」と書いてある。それっとそちらへ回り、ようやくご飯にありつけたのでした。

 教文館は、入り口に階段1段分の段差があるものの、えらく古いビルであるにもかかわらず、車いす用コンソール付きエレベータです。ただ、古い建物らしく、お手洗いが階段の踊り場に設置されているようです。

 銀座・有楽町というのは、古く、連綿とした歴史の延長上にある街です。こうした街は、ある時突然生まれたような、おしゃれだけれどどこか薄っぺらいショッピング街とは違った重層的な美しさ楽しさがあるものです。しかし、このような街は、他方で、車いすユーザーが街へと入っていけるようになった時間の短さを改めて感じさせる街でもあります。

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10/XX(月) 上大岡駅周辺

 横浜市の肝いり再開発事業だった上大岡駅。一度行かねばと思いつつも、延び延びになっていたのが、ようやく実現しました。
 行き先は、上大岡駅に隣接した「ゆめおおおかオフィスタワー」内にある「ウィリング横浜」です。「京急で来るのなら、少々トリッキーだから、気を付けて」と、先方に忠告され、「トリッキー? 方向音痴向けトラップがあるんだろか」と思いつつ、地図を調べたところ、どうやら一応上大岡駅と棟続きの模様。これなら何とかなるやろ、と、予定通り電車使用を決行です。

 京浜急行の最寄り駅から電車に乗ります。途中で、快速特急に乗り換えたい旨、駅員さんに相談すると、「それがですね、JRの事故でダイヤが乱れてまして、この電車もどこまで行けるかわからないんですよ」との返事です。後から聞いた話によると、JRのどこぞの線路に、整備用のシャベルだかツルハシだかを置き忘れて、それを始発列車がはねた事故の影響が、1時過ぎた今になっても完全復旧していなかったらしい。

 JRと京浜急行の決定的な違い(だと思う)のは、ここで、乗り換え予定駅に、駅員員さんを配備しておいてくれること。「この普通列車は、上大岡までは、快特よりも先に到着します」というアナウンスとともに、「このまま乗っていって下さい。上大岡へは連絡しておきますので。」と言われました。それで、いつもならば快特で通過してしまう駅を一つ一つ停まる、という、ものすごく久しぶりの経験をし、かなりびっくりなことを発見しました。

 京浜急行では、最近、駅前再開発事業の一環となった駅がいくつかあり、そうした駅のホームには、車いす用席のあるドアが付くあたりのホームから、電動でせり上がるスロープ設備があります。操作は駅員さんしかできないので、事前に連絡を取らなければならない点には変わりないのですが、ホームの端がせり上がってきて、電車の床と同じ高さになるのです。手動車椅子のよーのすけは、なにしろ京浜急行の駅員さんは手際がよろしいので、「渡り板」を使うとなると何が何でも「渡り板」を出してくるJRと違い、装置を動かさずさっさと引きずり降ろされますので知りませんでした。電動車椅子ユーザーさんと一緒に乗ったとき、一部色の違うホームの前がせり上がってきたのをみて、驚いたものです。この装置が、ごくごく小さな、普通(鈍行)しか停まらない小さな駅にも全て設置されていたのを発見したのは、驚きでした。

 上大岡駅では、駅員さんが1人待機しています。車いすを降ろすと、エレベータがありますから、と向こうを指さします。「自分で漕げ、ってか」と、内心不満ながら、ぼちぼち表示に沿って行くと、相変わらず反対へ回り込もうとしたらしく、後ろから追ってきた駅員さんに、そっちじゃなくて、こっち、と、方向転換させられます。なんだ、追っかけて来るくらいなら、押してくれりゃいいものを。エレベータで、2Fホームから、1F改札に降ります。改札はそこですから、と指さされて、そこから出ます。オフィスタワーの方に出たいんだけどな、と、思いましたが、そこから出ろ、と言われたんでは仕方がありません。歩く人は、出口の一つや二つ違っても、方向修正はそれほど難しくはない、つまり、つながっていない、ということは絶対にないので、あまり神経を使わないのでしょうが(間違うと現在位置を見失う方向音痴は別)、車いすユーザーの場合、出口ひとつ間違うと、「ここから先は、階段をお使い下さい。ゲームオーバー。」になってしまうので、非常に気を使います。ただ、これ、あたりを熟知しているはずだけど、歩いて移動している「駅員」や「職員」に聞いても、全く当てにならなかったりするんだよねえ。

 毎度のことながら、完全に方向を見失ったよーのすけ。目の前は京急百貨店。案内板を探すと、百貨店入り口と反対側の方に「バス乗り場・オフィスタワー」の文字が。百貨店沿いに長い通路をとことこ歩きます。結構長い。所々に公衆トイレがあり、ハンディキャップ・トイレも併設されています。これをまた帰ってくるのか、かなわんなあ、と思っていたところへ見えてきたのはバス停。ピロティ状の大きなバスターミナルです。オフィスタワーはもっと先。並ぶ人々をかき分けかき分けさらに進むと、横断歩道があり、やっとオフィスタワーらしきものが現れました。横断歩道と建物の段差は、スロープで埋めてはありますが、転倒防止がなかったら、ちょっとひるむ勾配です。オフィスタワーエレベータに向かって進んでいるつもりだったのに、途中で表示が途絶え、T字路に突き当たりました。人々が進む左に付いていったら、外へ出てしまいました。引き返して反対側に行くと、行き止まりに見えたかのくぼみにエレベータが。ここは、B1Fだったようです。1Fへ上ると、「オフィスタワー」の矢印がさらに現れ、通路を進むと、突然に大きな吹き抜け状の場所に出ます。

 ウィリング横浜は、オフィスタワーの中の複数階に渡っている施設です。目的地はその11F研究室。場所を確認した後、とりあえず、トイレ、とトイレを探したところ、見つからない。一般のトイレはすぐに見つかるのですが、ハンディキャップ・トイレがない。あるのなら、ハンディキャップ・トイレを使いたいですもの。何せここは、福祉関係者のための施設。この階にないということはないよね、と、エレベータホールの案内板を見ると確かにあります。変だなあ、と、もう一度壁を舐めるように見ながら歩いていくと、見つかりました。給湯室だと思って通り過ぎていたところでした。

 さてしかし、このトイレなんだか変。頭に何かが付くほど広いのですが、手すりもの配置・サイズのバランスもなんとなく変です。ど真ん中に便座を付けてしまっているので、ペーパーホルダーを付けられなくなっていたり、非常ボタンの位置に困っていたり、どことなく中途半端です。いわゆる「福祉施設」によくある、「意気込みはわかるが空回りしてない?」の、「一昔前の最新式設備・業者にポられバージョン」という気がしないでもない。ドア開けたとたんに、あ、カメラ持って来るんだったぜ、と思いました。次行ったら、写真撮ってこなければ。

 仕事が終わって後、せっかくなので、ちょっとだけ上大岡探検をすることにしました。
 頼まれもののお買い物のために、京急百貨店へ。オフィスタワーの3階から、京浜急行の駅、京急Wing、そして京急百貨店につながっています。自分の買い物としては、京急Wingの方がいいような気がしたのですが、何しろ地理がわからないので、とりあえず、京急百貨店に向かいます。

 京急百貨店のエレベータは2カ所です。「青のエレベータ」「緑のエレベータ」と名付けられていますが、これがなかなか見つかりません。ほとんどエレベータ探しに費やしつつ、とりあえず買い物を済ませて駅へ向かいます。情報収集のため、時間にゆとりがあるときは極力同じ道では帰らないようにしているよーのすけ、百貨店に入るときに見つけてあった、京急Wing3階の改札へ向かいます。

 改札をくぐらせてもらおうとしたところで、「すいません、こちら、階段しかないので、京急百貨店のエレベータで1Fに降りて中央改札から入って下さい。」 ちぇ、やっぱりルートは1本だけかい。デパートの外に設置されていて、とうとう中では見つけることができなかった緑のエレベータを発見。1Fに降ります。降りてみると、そこは、往路に通った通路です。もちろんバスターミナルよりは駅よりですが。往路は下りだったその通路、復路が上りなのは言うまでもありません。ところによっては、前輪が浮く盛り上がりを見せています。

 上大岡の駅ビル内だけとも言えますが、ずいぶん距離を走りました。翌日、筋肉痛になったのは言うまでもないです。

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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[MailTo_ocean@mbc.nifty.com]