昔々、絵描き志望だったよーのすけは、かなり頻繁に美術館に行っております。車いすの使い方を知らなくて、根性で歩いて連れて行ってもらっていたときにはさほど気にならなかったのですが、車いすユーザーになってから、「見づらさ」を感じるようになりました。あまり視力がよろしくないので、少しでも近くでみたいのと、下から見上げたときのゆがみがいやだったのとで、車いすに切り替えたばかりの頃は、ロビーで車いすを預けて歩いていました。しかし、次第に疲れるのもいやになって参りまして、展示を見るのも車いすのままみるようになったのですが、そうすると、ものによっては、照明が作品に映り込んでしまい、真っ白で何も見えないことがあるのです。背が低くなるため、映り込まないほど後ろに下がると、人の影になって何も見えず、何とか前に出ると光って見えず、どっちみち何も見えない。背が低い女性程度の背丈だと、ふつうに立っていても光って見えないようなお粗末なところもあるくらいです。
美術館によっては、照明を工夫して、光らないようにしてあるところもあります。とはいえ、ほとんどの場所は、車いすユーザー向きに照明の工夫なんてしてませんし、たとえ光らないとしても、成人が立って見やすいように配置してあるわけで、0号サイズの作品なんか出てきてごろん、何が描いてあるのか見えたもんじゃないです。
やっぱり文句が多かったんでしょうね。展示鑑賞用のリフトアップ車いすなんていうものがお目見えしました。東京都美術館に設置されています。
ほかの場所では見たことがないので、やっぱり実用度はちょっと「?」かな、という気もしますが。少なくとも改良の余地はたくさんありますし、是非とも改良して、実用に耐えるものを大量生産して欲しいものです。
右側に長いレバーがついていて、それを上下にギコギコ漕ぐとジャッキアップ・ジャッキダウンします。よーのすけは技術者でないので、言葉でうまく説明できないのですが、歯車のようなもので上げ下げしている感じです。力はほとんどいらず、介助者でも本人でも上げ下げ可能です。
どうせならフットレストをレッグパイプではなくて、シートフレームのほうに付ければいいのに。
本当に、上がるのはシートだけなので、足がぶらぶらになります。疲れるし、人によっては怖いと思うかも。
車いすには必ずあるシート後傾が全くないので、「滑り落ちる」感が最後まで拭えません。腰と腹筋に自信がない人は、やめた方がいいかも。
車いすに関しては素人な人が作ったらしいことが推測されます。
シートが上がるので、いうまでもなく、リムに手が届かなくなります。
絵の前まで移動してはジャッキアップし、心ゆくまで眺めてから、ジャッキダウンして移動、ということもできなくはないですが、現実の問題としては、面倒でしょうね。ジャッキの音もかなり大きいですし。
車いすユーザーの背が高くなる分、後ろの押し出側の視界を完全にふさいでしまいます。閲覧中は、横に立って、ハンドルとアームパイプを持ってゆるゆると引きずっていけばいいのですが、ちょっと移動が長くなって後に回った場合、前が何も見えないので、とても怖いそうです。
何しろ身長150cmになれますので、段違いに見やすくなります。「展示物を見やすくする」という目標はちゃんと達成できていると思います。
問題は、障害のある身体が座位で移動するという「車いす」としての性能の部分です。館内移動という限られた空間内での移動なので、その性能は限定的でもよいとは思いますが、もう一息欲しいところです。
一番下げた位置 | 一番高くした |
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立っている介助者と並んで撮影できたらわかりやすいのですが、何せスタッフ2人でやってますので。横の標準的なホワイトボードを目安にしてください。
ふつうの車いすと並べると下のようになります。リフトアップ車いすの左にあるのが、よーのすけの車いす、右にあるのが備え付けの車いすです。