心のバリアフリー

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 とある一流企業のバリアフリーサイトに寄稿した一文です。テーマは、「バリアフリーとAT機器(Assistive Technorogy : 支援機器)そして心のバリアフリー」。すでに掲載されています。どうしても現物が見たい方は、頑張って検索するか、メールをください。なお、伏せ字になっているのは依頼企業の商品です。

あなたのとなりに

 「今度ちーちゃんち、遊びに行っていい?」「うん、おいでよ、よーちゃん。」 こんな会話を誰でも一度はしたことがあるでしょう。仲良し2人組のごく普通の会話です。でも、よーちゃんが歩けなかったらどうでしょう。ちーちゃんみたいに「おいでよ。」と、あなたはご自宅に気軽に招待できますか。「えっ、よーちゃんって、車イス使ってるのよね。車イスのままうちに上がるのよね。玄関のドア、通れる? うちまでは誰か送ってきてくれるのかしら。…えぇ、ちょっと待ってよ、うち3階なのよ、エレベータないのよ。どうするの。」

 障害者にとって何が「障害物」になると言って、みんなと一緒に何かが出来ない、ということほど大きな障害物はありません。「障害者」のための住まい、「障害者」のためのスロープ、エレベータetc.。ごく最近になって、公共的な場所では「バリアフリー」が進められるようになりましたし、障害者ご本人を支援する道具や設備は比較的容易に手に入るようになりました。けれども今のところ「バリアフリー」な「バリア」の中から容易に外に出ることはできません。「障害」を持つ私たちが「障害」を持たない皆さんのすぐお隣に行くことが、実は一番難しいことのように思えます。

 人間、ひとりぼっちで何かをする、という場面は、思っている以上に少ないものです。働く、勉強する、お稽古ごとをする、遊ぶ…。どの場面にしろ、友達や同僚、知り合いや顔見知りといった様々な人たちに囲まれているはずです。そういうごく日常の場面で、あなたの隣に「障害者」と呼ばれる人々は登場するでしょうか。

 アシスティブ・テクノロジー(私はこのカタカナ言葉をこのコーナーを書かせて頂いて初めて知りました)がアシストするのは、実はこの部分なのです。車イスは下肢障害者の行動範囲を広げ、***の******は言語障害者の表現能力を高めるでしょう。でも、そういう障害者自身の能力向上がAT機器の最終目標ではないと思うのです。本当に大切なことは、AT機器が「障害」の部分をアシストすることによって、「障害」によって隔てられてきた人々が、ごく日常のあらゆる場面で、皆さんのお隣にちょこんと顔を出せるようになることだと思うのです。それが出来たとき、AT機器は「障害者」を隔てているバリアを本当に取り除くことになります。

 例えば、車イスを使うことによって、私は移動することが可能になります。しかし、車イスで移動する私が、あなたの傍らに座れるかどうか、それは、私が車イスを使うことで差し伸べることができるようになった手を、あなたが引き寄せてくれるかどうかにかかっています。「うちへおいでよ」と。

これは… 絶対ボツだろう

 上記エッセイを書きつつ出て来たボツネタ集。上のエッセイを読んで、「そうよね。その通りだわ。」と感銘を受けた方は、見ない方が賢明です。


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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[Mail_ocean@mbc.nifty.com]