広島旅行記

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宿を取って、電車を手配

 広島かぁ、遠いなぁ、と思ったものの、行った方がいいには違いないシンポジウム。主催者が確保していた旅行者に電話を入れたのが、開催の3週間前のこと。「シンポジウム出席するので宿の手配をお願いしたいのですが、車いす使っているのでちょっとご相談したいと思いまして。」と、おそるおそる切り出すと、担当者尋ねて曰く「はづきさん、インターネットでの予約しました?」よーのすけ答えて曰く「いや、してません(泊まれるかどうかわからないホテルに予約いれるわけない。)。車いす使ってますので、出来ればバリアフリー・ルーム(こんな言葉あるのか?)がいいんですけど。」担当者重ねて曰く「どこのホテル希望ですか。」よーのすけ重ねて答えて曰く「(だから、そういうホテル、そもそもあるのか聞いて欲しいんだってば)Vホテルがいいと思ってるんですが。」。担当者、「あ、わかりました。Vホテルでバリアフリー・ルームお取りします。」と、いともたやすく言ってのけて切ってしまいました。。バリアフリー・ルームお取りしますって、アンタ、値段からしたら、どう見てもビジネスホテルだぜ。そんなもんにバリアフリー・ルームがあるとは到底思えないんだけど。よーのすけでもそれくらいわかるんだから、旅行代理店の人がそれ知らないわけないんですが。あまりの気楽さに、非常に心配になりました。

 わき上がる不安を胸に待つこと1週間。確認の電話を入れたところ、「すいません。バリアフリー・ルームなかったもんで。」とのお答えです。「バリアフリー・ルームがあるところはあるんですが、ツインになってしまうもんで…。お高くなって嫌でしょう。」何というまっとうな感覚。車いす使うんなら介助者連れてこい、スペースがいるんだから、どうしても高くなるのは当たり前ですよ、てなことを言われる話はよく聞くのに。そこで、改めて、少しは歩けるから、バスルームの入り口に段差がなく、上がりがまちをまたぐ形なら大丈夫だということ、ビジネスホテル程度のユニットバスの広さならつかまるところがあるのでいいと思ったことを説明すると、「では、実際に私が行って確認してきます、」と言ってくれました。そして数日後、再度連絡をくれ、バスルームへの段差が25cmあること、でもロビーにはハンディキャップ・トイレがあること、部屋への出入りなどは問題ないことを、値段は少し高くなるが、シティホテルであればバスルームへの段差がない場所があることを調べてきてくれました。そして、「シティホテルの方も見てきますよ。一応両方押さえて、どちらかは泊まれるように手配しますから。切符ですか? ああ、取ってしまって構いません。必ず泊まれるようにしますから。」 「あたりまえです」って感じで、普通の旅行代理店がホテル探ししてくれるという事態に、よーのすけは戸惑い気味です。

 宿泊先はなんとかなりそうなので、新幹線のチケット取りに最寄り駅に行きました。希望の便を言うと、あっさり切符が出てきました。「これ、いす席ですよね。」「?」「個室じゃないですよね。」「2人がけ通路側です。」なんでこんなにアッサリと。

 出発の2日前に、「ワシントンホテルプラザがよろしいかと思います。バスルームとベッドルームは完全にフラットです。」という連絡をもらい、いつものことながら一抹の不安を胸に出かけました。

出発準備

荷づくり

 単独行動が多いので、荷物を持って歩くのは当たり前だと思っているよーのすけですが、さすがに2泊の旅となると、鞄がありません。年に何度も行くわけじゃなし、わざわざ鞄探すのもなあ、ということで、今回は、いつも使っている信玄袋に詰めていくことにしました。

信玄袋とウエストポーチ最初は、信玄袋とウエストポーチだけで行くつもりだったのですが、荷造りした後で、当サイトのけいじばんを見たところ、なんだかいろいろ楽しみにしている人がいるらしい。となると、やはりカメラを持って行くか、ということで。電話にカメラが付いていれば、問題はないのだけれど、よりによってDoCoMoのPHSなので、カメラ付いてないんですわ。しかもカメラは扱いやすいように、かなり大きくて重いものを使ってますので。

信玄袋と2ウェイバッグとウエストポーチ それで、もう一つハンドバッグを持つことにしました。ウエストポーチは、ハンドバッグの中に入れてしまいます。信玄袋を車いすの背にかけ、ハンドバッグは斜めがけにします。

 車いすの背ポケットには、もう一枚、信玄袋を入れてあります。これがホテル外での大物入れになります。

いでたち

 車いすユーザーが旅行するのにどういう服装をしていくか。これは、意外に興味がある人がいるかもしれない。

 今回は、何しろシンポジウムなので、一応まともな恰好していくのがベターです。というわけで。

 ツイードのテーラードジャケットと、ストレッチ素材の黒いコットンパンツがベースです。これに、1日目は移動だけなので、ルーズネックのカットソー、2日目、3日目用に、ノーアイロンのシャツブラウスを持って行くことにしました。カフスボタンをかけるための小道具も忘れずに。

 雨具として、防水スプレーをかけたポケッタブルウィンドブレーカーも放り込みます。

往路新幹線

新横浜

 午後の便でしたので、家でお昼を食べるには早すぎ。新横浜駅で食べることにしました。

 横浜線から新幹線へと乗り換えるわけですが、横浜線のホームから跨線橋まではエレベータです。「すぐに新幹線に乗りますか。」と聞かれたので、食事したい旨伝えると、じゃ、一度下に降ろします、と、改札を出て、エスカレータで1階に降ろされます。

 降りた目の前に小さなそば屋がありました、狭いけど入れそうだったので、入れますか、と言うといすをどけてくれました。食券を買って、注文すると同時にそばが出てきます。さすがは駅。

トイレを使って、ドラッグで水を買うとちょうどいい時間になりました。新幹線の改札で声をかけると駅員が出てきます。エレベータは、改札の中に直接つながるので、施錠されています。

車内へ

 ホームで車掌さんに引き渡されます。今回は、前から5番目の通路側の席。車内販売のワゴンが通りますから、と、車いすを持って行かれてしまいました。少々不安でしたが、まあ仕方がありません。信玄袋を棚に上げてもらい、そのまま広島まで約4時間の旅です。

広島駅

 広島駅には駅員さんが待ちかまえてました。こちらはエスカレータ無しのエレベータ移動。「帰り、市電から来るのですが、方向どちらになります?」と尋ねると、南口側から、と言います。「北口にご案内してるのですが、南の方がいいですか?」と尋ねられたので、とりあえず北口へ、とお願いしました。

夕ご飯食べて、ちょっと冒険

 北口は、完全に新幹線の駅だったらしい。ほとんど新横浜駅前と同じ感じです。駅ビルのレストラン街に入りましたが、よーのすけにとってはいささかヘビーなものばかりです。広島に来たんだからお好み焼き、とも思いましたが、何しろ夜なのでごはんが食べたい。釜飯を一つ取りました。そして、帰りに迷わないため、南口というのを見に行くことにしました。

 南口にはバスターミナルの端にスロープがあって、地下道に続いています。なんだか今日は、ホイールがやけに重いなあ、と思っていたら、そう、背中の荷物が重かったようです。出口のスロープがよう登り切らず、通りがかりの人に手伝ってもらいました。

 南口はうってかわって生活感のある駅前です。ちょうどスーパーがあったので、地下食料品売り場で2日分の水と、ご飯がもの足りなかったのでサラダなどを仕入れました。市電の駅が目の前にあるのを確認してタクシー乗り場へ。「ワシントンホテルプラザ」と言ったつもりが、「早稲田高田馬場?」 いや、そうじゃなくて。

ホテル

 一泊1万円なりの、ビジネスホテルとシティホテルの間くらいのホテルです。玄関先はフラット。絨毯が厚いのが荷物を背負った身には辛いけど。キーはカード式なので、背伸びが出来ない人には無理かもしれません。

入り口から見た部屋 部屋を入ると普通の廊下の幅で廊下があります。向かって右にクローゼットと、写真に写っているドアがバスルームです。冷蔵庫の横に車いすを畳んでおきました。あとせいぜいひと月しか使わないはずなので、修正せずに出してしまいます。派手な車いすでしょう。

バスルーム

そして問題のバスルーム。ドアを開けると洋式便器 ドアを開けると洋式便器と洗面台が並んでいます。
広さはごく普通のユニットバスです。

フラット 寝室との段差は確かに全くありません。

バスタブには手すりもあります。ソープのディスペンサーが地上1.2メートルの所にあって、入浴中に手が届かない、ということを除けば、それほどの危険もなかったです。石けん類は、面倒がらずに持参した方がいいのかもしれません。浴槽に手すり


出かける準備

 なにしろ慣れない場所での身支度なので、2時間見て起きました。顔を洗うにしろ、着替えるにしろ、やはり勝手が違いまして、動線の確保が出来ない。

ハンドバッグは宿に置き、ウエストポーチと予備の信玄袋だけで出かけることにします。レジュメなどはハンドバッグに入らないサイズですから。

 朝食はバイキング形式です。ウェイトレスさんについてもらい、自分で取ります。変な話ですが、こういうとき、ちゃんとくっついていって自分で取りたいものを取らなければいけない、ということを覚えたのは、こんなよーのすけでも、当事者団体の中でのことです。それまでどうしていたかって? 連れに、適当に取ってきてもらっていましたさ。健常者の中でだけ生きていると、逆に引き癖が付くのかもしれないですね。

そして二日間のシンポジウム

会場まではタクシーで行きました。そして二日間のシンポジウムです。

休憩中に見つけた面白いもの

 休み時間に散歩したら、隣の公園で見かけました。公園の入り口にがっちり柵が付けてありまして、あ、こりゃ入れないわ、感じ悪ぅ、と思っていたのですが。
公園に入ろうとすると柵がある

 真ん中にサークルがありまして、車いす中に入れてぐるっと回す仕組みです。
車いす用サークル 話に聞いたことはあるけれど、見たのは初めて。

名物楽しむ間もなく帰途へ

 「えっ、市電って時刻表ないんですか?!」 新横浜駅に止まり、かつ直通の最後ののぞみを予約したよーのすけ、シンポジウム終了ギリギリで間に合うかどうか非常に怪しかったので、いつ頃出れば間に合うかを事務方に聞いて、びっくらしました。来た電車に乗るもんなんです、とのこと。運がよけりゃ30分ですかね、なんて言っている。

 新幹線乗り場に行くの大変かもしれないし、おべんととかも買わなきゃいけないし、トイレも探さなきゃなんないし、ということで、1時間半見て出ることにしました。シンポジウムを途中で切り上げ、「日赤病院前」駅から市電に乗ります。スタッフの一人が心配して付いてきてくれました。

 ホームはスロープですので上がるには問題なし。地元のスタッフさん曰く、「市電は低床化してますんで楽ですよ。…ああーっ、この車両、古いのが来ちゃったよ。」 でも、運転手さん、車掌さんと3人乗務員が出てきて、持ち上げてくれます。15両編成の横須賀線だって、乗務員2人しかいないのに2両編成で3人いるっていうのがスゴイ。

 運がいいやら悪いやら。すんなり着いてしまって、1時間以上も間があります。しかも新幹線は目の前らしい。時間をもてあましていたら、シンポジウムに出ていた人々がどやどやと市電を降りてきました。こんなことなら最後までいればよかった。

 20分前にトイレに入り、出てきたところで、迎えに来ていた駅員さんに会いました。そのままホームに上がり、駅員さんはあちらこちらに連絡を回して、デッキに押し込まれます。

 ところが。いくら待っても車掌が迎えに来ない。あの駅員さん、いったいどこに連絡を回したんだろう。そろそろ岡山、というところで、仕方がないので自力移動をしました。乗客に手伝ってもらって、席に移動し、車いすを畳んで脇に置きます。その現場に車掌が通りかかるも知らん顔。これはこの車掌の問題か。

 車掌さんぼんやりのおかげで、車いすは持って行かれずに済みました。けれども車内販売のワゴンが通るたびに車いすをどけなければなりません。けれども、ふと思いつきました。前席との間に、ホイールだけをはめ込むと、ピッタリはまります。これで、10センチ幅が縮み、ワゴンが十分に通るようになりました。23インチのホイールは入ることが判明しましたが、今度の24インチホイールはどうなりますかな。

 新横浜駅が近づくと、車掌が案内に出てきました。JR東海に変わった車掌は、非常に丁寧な物腰で、新横浜駅の駅員に引き継ぎをします。

 これで、一応その日のうちに帰宅出来ました。忙しくて緊張するのはのはいつものこと、大した事件もなく、無事に行って来られた旅でした。


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車椅子で彷徨えば扉 車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[MailTo_ocean@mbc.nifty.com]