サイト名の由来

　かつてけいじばんで尋ねられて、書いたことがあるので、ご存じの方も多いかもしれません。

　当サイトは、最初、@niftyにありました。今でもトップページだけ残っていますが、そのＵＲＬは、azure_stray。「青い空を彷徨う」というものです。そして、現在は「stray.littlestar」迷子の小さな星。「littlestar」の部分は、レンタルサーバから支給されたドメインですが、当サイト名の由来を知る人々には「よくもまあ、こんなにどんぴしゃりなドメインを」と、驚かれ、うらやましがれたものです。

　色塗り大好きなよーのすけが、背景色をかたくななまでに統一しているのは、このもとアドレスである、azure／青空によっています。１６進法で「#f0ffff」と書かれるこの背景色は、当時、ネットスケープ上の命名法で「azure」と言いました。今では、どのブラウザでも「azure」と入れればこの色が出ると思います。

　「ホームページを作ってみようか」と思い立ったのが、２０００年が明けたばかりの頃。その前の年ごろから、車いす・単独・電車で外出することが多くなっていました。しかも、ライブハウス等の、「普通の車いすユーザー」はあまり出入りしないと思われる場所に出入りする経験もするようになったのです。

　一応「車いす外出情報」を見てから出かけるわけですが、それらの情報は、実際に体験するのとは大違い。これ、どうするんだよ、という状況のこともあれば、実はこれで使えることになっているのか、ということがたくさんありました。一般的な「バリアフリー情報」は、客観的にすぎる。といいましょうか、数が多いのはいいのですが、実際にそれを使おうとしたときのギャップが大きくて、もう少しどうにかならないか、と思ったことがきっかけです。単なる「情報」ではなくて、「障害付き」の肉体を持った一人の人間が、外へ出て活動するという経験を伝えることには意義があるのではないか、と思ったのです。

　それは、家主よーのすけが、十代の終わりに初めて「脳性マヒ者」の当事者団体に顔を出し、そこで、当然のように、様々な車いすで電車を使い、単独で移動しているのを知り、またそのやり方を教わったことで初めて車いすで公共交通機関が使えるのだ、ということを知った、という強烈な体験があったからです。当時の私も家族も周囲の人々も、歩行不能である限り、自動車でなければ移動は出来ない、と思っておりました。ですから、自動車免許を取得することなしには、一人ではどこにも行けないものだ、と思いこんでいたわけです。健常者の中にいる障害者は、障害者が障害者として生きていくやり方に接する機会がありません。歩けなければ自動車免許を取らなければならないと、思い込みがちになるのです。出来なければなんとかする方法もある。そのやり方は、教わらなければ気づかないことだってあるのです。

　そんなテーマを掲げて出発した当サイトですが、サイト立ち上げ当時、ちょうど、よーのすけが大ファンをしているバンド「１３５（いちさんご）」のアルバム「ＭＩＺ−ＩＮＣＯ（みじんこ）」が手に入ったばかりでした。生産中止になってしまっており、１年半かかって探し出したこのアルバムを、よーのすけは、ほぼ毎日かけっぱなしにしていました。

　そのアルバムの中に、「彷徨」という、美しいというか恐ろしいというか、いかにも「１３５」な曲がありまして、よーのすけ、非常に気に入ってました。毎日「彷徨」を聞きまくった結果、「車いすで彷徨」これ以外の言葉が浮かばなくなっちゃったんです。

　この「彷徨」という曲の中に

蒼くにじんだ空　遙か遠く続いて
大地との触れる彼方　かすか星は揺れる

　という一節があり、当サイトの視覚的イメージは、ほとんどここに沿っています。というより、この外へ出られなくなってしまっていると言った方が正解です。大型バナーなんて、１３５ファンが見たら一目で、「あっ、『彷徨』だ。」とわかるデザインです。

　そして、「stray.littlestar」。「彷徨」の詞そのまんまでしょう。

　ちょうど１３５の公式サイト開設と時を同じくして立ち上げたこのサイト、実はそこかしこに「１３５」なネタがこっそり仕込んであったりします。ネットの外では、まず出会うことのない、１３５を知っている人々に向けた密かなメッセージです。

　そして、またそれは、意識せずに散らばってしまえば１００人に１人しか存在しない圧倒的少数の障害者たち、そしてその中でもさらに少なく絞り込まれる「車いすユーザー」や「脳性マヒ者」たち、意識して集まらなければ、人々の中で仲間を見つけることが難しい人々に向けて、ごく小さなメッセージを発信する当サイトの姿とも重なり合うものなのかもしれません。