だれもが使える交通機関を求める神奈川行動2003

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「だれもが使える交通機関を求める神奈川行動」とは

 2003/10/18(土)、「だれもが使える交通機関を求める神奈川行動 2003」がありました。全国統一行動なのですが、県単位で行われています。神奈川県では、1992年に、「だれもが使える交通機関を求める神奈川実行委員会」が発足し、以後、毎年この時期にデモンストレーションをやっています。

 神奈川県の場合、県内の各地から、電車に乗り込んで、横浜駅へ集合。横浜駅で要望書を手渡して、横浜近辺の別の駅へ移動、近くの公園で決起集会の後、駅までデモ行進、というものです。
 例年ですと、たとえ全国紙でも地方版に記事が載ります。去年の朝日新聞には、そこそこの記事が載ったのですが、今年は、衆議院選挙に、阪神ダイエーの日本シリーズ、松井がんばれのワールドシリーズがぶつかっちゃったせいか、はたまた10年が経過して、アキたのか(まあ、飽きっぽいマスコミが10年も付き合った方が奇跡とも言えますが。あ、そうか、去年は交通バリアフリー法実施後初めての行動だったんだ。ってえと、やっぱり1年で飽きたってことか。)、朝日の地方版には掲載されていなかったですね。

 成り行き上、本当に成り行き上で、よーのすけは、このデモに飛び入りで参加する羽目になってしまいました。ちょっと珍しい経験だったので、レポートしてみます。

鉄道利用なくして社会参加なし

 「鉄道利用なくして社会参加なし」。これが運動の理念です。2本の足でてくてく歩くしかなかった時代、あるいは、大量輸送機関がなく、みな自家用車で動くしかない地域とは異なり、現代ニッポンは世の中の仕組み全体が、電車やバスを利用することを前提として成立しております。したがって、これらの輸送機関をごく当たり前に使える人でなければ、普通の生活をすることはできない、ということになるのです。
したがいまして、

  1. だれもが使えるエレベータを
  2. ホームからの転落防止策などを
  3. 交通バリアフリー法が施行
  4. ノンステップパスでだれもが乗れるように

が当面の課題として掲げられています。

よーのすけの参加レポート

なんでまた、こんなものに飛び入り参加

 「毎週土曜日に、新横浜のラポールで講座やってるからさ。一度様子を見に来てよ。」 脳性マヒの活動家、Xさんに言われ、じゃ、来週行きますわ、と、メールで答えたのが前の週のこと。ラポールは、駐車場が十分にあるので車で行けます。約束通り行ってみると。「そんなものはやってませんよ」という事務室の回答。な、なぜ?と、途方に暮れつつ、うろうろしていると、向こうから来る人が「あ、車いすの人だ」と、うれしそうに言って寄ってきました。なんちゅう言い草やねん、と思っていると、「これどうぞ」と手渡されたのが、「だれもが使える交通機関を求める神奈川行動2003」のチラシ。ひょっとして、これ今日やっているんですか、とたずねれば、そうだという。こりゃ、おらんはずだわ。よーのすけは、Xさんのメールアドレスしか知らず、メールを見ていないとすると、何とか本人を捕まえるしか、今後の連絡取れないもんなあ。雨は降っているし、風邪治りかけだし、やばいぜ、とは思ったものの、彼らにくっついて、近くの集合場所へ連れていってもらうことにしたのでした。70%は、野次馬気分。30%は、運がよけりゃXさん捕まえられるやろ、という期待です。

決起集会

 ラポールを出たときは、たいしたことなかったのに、公園に着いたときには結構な降りになっていました。ここ数年、なぜか「交通を求める行動」の時には雨が降っており、新聞記事などでは「あいにくの雨の中」が定番の接頭詞となっております。こりゃ、ラポールに戻るの大変かも、と、さすがに不安になったよーのすけです。ムーンバット製の合羽の威力はさすがで、風がなかったせいもあり、濡れることなく木の下でアジ演説を聞いておりました。とはいえ、残念ながら、集会場所からちょっと遠かったのと(何せ、単なる野次馬だから)、明らかに脳性マヒ系言語障害の語り口で、ハンドマイク通してする演説は、さすがに聞き取れなかったわ。

 野鳥観察者的才能はないので、定かなことはわかりませんが、ざっと見て、200人程度の集会でしょうか。車いすユーザーに杖ユーザー、電動車椅子に手動車椅子、電動三輪車など、様々な移動器具ユーザーと、支持者の集団です。3人のアジテータによる30分程度の演説の後、新横浜に向かってデモ行進です。野次馬のよーのすけとしては、くっついていくか、引き返すか、悩ましいところです。というか、こんな雨の中、手前の実力も省みず、単なる野次馬根性だけで見物に出てくる車いすユーザーもないもんだ。
 と、そこへXさんらしき人影発見。思わず近づいて声をかけましたが、聞こえない様子。やっぱり人違いだったか、と、きびすを返しかけたところへ、数人の男の人が近づいてきました。「行くんでしょう」の問いに、いや、私、単なる野次馬なんですが…ごにょごにょ…と口ごもったものの、新横浜駅まで行けば、タクシーでラポールまで戻れるや、ということに気が付き、デモにくっついていくことにしたのでした。

デモ行進

 新横浜駅前公園から新横浜駅までは徒歩で10分程度。シュプレヒコールを上げながらのデモ行進です。何せ、脳性マヒ系言語障害語り口の「駅にエレベータを付けろお」の雄叫びだもんねえ。よーのすけからみたら、何とも強烈だけれど、何にも知らない人が聞いたらいったいどう聞こえるんやろ。ちゃんと警官も出て、通行止めかけてのデモです。いつも、「遅刻じゃ」と言いながら車走らせているよーのすけとしては、こんなのにかかったら腹立つやろな、なんてことを思いつつ、10分間のデモにくっついていったよーのすけでした。

 デモ行進のさなかに、探していたXさんも捕まえることができました。どこからともなく、まさに湧いて出たよーのすけに驚かれたのは言うまでもありません。
 タクシーを捕まえて戻るつもりでしたが、Xさんがアルバイトの介助者を付けてくれ、押してもらってラポールまで戻りました。

逆行現象もある

 さて、よーのすけの実感としては、日を追うごとに、出掛けやすくなっていると感じている昨今ですが、逆の現象も起きています。
「だれもが使える交通機関を求める神奈川行動2003」のチラシは、以下のような記事で始まっています。

 もし、みなさんが突然電車を使えなくなってしまったらどうしますか?
職場へ、学校へ、通うことができますか? 買い物へ、レジャーへ行かれるでしょうか。
 私たちの周りで、2年半前から実際にそんなことが起こっています。
 01年、三輪電動車イスを使っている私たちの仲間の1人が、JR根岸線を利用するため桜木町駅へ行きました。しかし、「三輪電動車イスは電車には乗せられない」と言われ、全面的に乗車拒否されました。その仲間は、「ついこの前まで、何の問題もなく乗っていたのに、なぜ急に乗れなくなったのか、と、その場で30分以上も訴え続けましたが、受け入れられませんでした。
 JR桜木町駅にはエレベータがあり、その仲間が降りようとした杉田駅にもエレベータがあります。電車の乗り降りや、ホームから改札への移動には何の問題もないのです。

 以下、この現象は、説得的な根拠がないにもかかわらず、JRの公式見解になりつつあること、国土交通省も、最初は反対の立場をとっていたのに、最近ではJRの見解に沿うようになってきたこと、そして、名古屋、大阪でも同様の事件が起きていること…と続いていきます。

 私たちの強い抗議や、「電車に乗せないなんておかしいじゃないの」というみなさんのご支援の結果、国土交通省は、「交通バリアフリー技術企画調査研究会」を設置して研究をしてきました。その結果、03年7月16日に、「公共交通機関におけるハンドル型電動車いすの取り扱いについて」という報告書をまとめました。
 しかし、この報告書では、乗車するために満たすべき2つの条件が設けられました。
  1. 利用者が、補装具給付制度によりハンドル型電動車いすの給付を浮けていること。
  2. 利用できる駅は、エレベータの設置等により段差が解消されたルートが確保されている駅。
 私たちは自由な乗車を求めてきました。今後も「補装具給付制度によりハンドル型電動車いすの給付を浮けている者」などの条件の撤廃を求めていきます。

 移動補助具の進歩は、逆説的に聞こえますが、移動障害者の数を増やしていきます。移動補助具がなければ、出てくることができなかった人々が、補助具を利用して、外へ出てくるからです。移動補助具のユーザーは、交通弱者であることは間違いないのですが、ある側面では「強者」になりえます。車椅子とただの歩行者がぶつかったとき、受け身が取れない車いすユーザーが危険にさらされることは間違いないのですが、同時に、当たり方によっては、無防備で歩いている歩行者にもそれなりの危険が生じます。まして、高出力で重量もたっぷりある動力付き車いすだったりしたら、その危険はますます高まります。駅や多量輸送車両が、そうした事態を全く予想せずに作られていることは確かで、にもかかわらず、それらのユーザーがものすごく増えてきているという現実との摩擦が、今後増えてくることもまた予想されます。

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車椅子で彷徨えば扉
Yoonosuke Hazuki[MailTo_ocean@mbc.nifty.com]
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