原宿にある太田記念美術館。都心でも珍しい浮世絵専門美術館です。地下1階、地上2階建て、エレベーターなし、の、この美術館をよーのすけがレポートします。
しかし、残念ながら、車いすユーザーには、アクセスが難しいところです。エレベーターもスロープもなく、なにより、受け入れ体制そのものにも問題があるように思えます。(2016年10月現在)
この太田美術館に、いろいろいきさつがあった末、各種バリアを踏み越えて、訪れてきました。そのいきさつは、最後に触れます。全くもって、いろいろあってな。
駅からは近いです。腕に自信がなければ、JR原宿から降りて、美術館経由、都営明治神宮前駅で乗ると、ほぼ下り坂で、上り坂ちょっとをクリアできれば行けるカンジ。
敷地に道路から入るために、まず5センチの段差。敷地に入れば玄関まではフラットです。玄関とびらは、外とびらが半間のちょうつがい式ドア、内とびらは半間の自動ドア。
中に入ると受け付けです。ここで上手に交渉しないとモメます。特に「付き添い(という名の保護責任者)がいないと、おそらく大モメします。1階だけの鑑賞であれば、大した抵抗も受けずに無料で入れてくれます。が、畳の小上がりに上がり込むと、職員が飛んでくるかもしれません。さらに、2階、地下を観ようとすると一騒動起きるやもしれません。
実は、よーのすけ、一度、週末に、ひとりで簡易電動に乗って、ぷらっと行ったら入館拒否を食らいました。そのとき、かなり不愉快な交渉をして、2度目に再訪したときの「車いすユーザー対応」が下記です。
美術館側のサイトには、「事前にご相談ください」と記載してあります。けれども、美術館側は不安で頭かいっぱいですので、不安のあまりに、違う情報を伝えるかもしれません。
この「バリアフリー情報」は、その経験を踏まえて、「入るための情報」を提供するものです。正しく必要な、「入ることを前提にした」情報が提供されなければ、よーのすけたち車いすユーザーは、交渉することができませんから。
歩行困難 with 車いすで行くとして、ポイントとなりそうなのは、以下の2点に絞れそうです。
館内撮影禁止ですので、よーのすけのヘタな手書きで。こんな感じ。
床は普通の黒いリノリウム張り。中央に石と玉砂利でミニ石庭みたいなのがしつらえてあります。
縁側付きの和室を模した小上がりがあります。多分奥行きは1間半か2間。後から考えたら、2階の回廊ギャラリーのうち、階段がつながっていない面の下が、全部小上がりスペースになっているようです。奥行きは、1間半から2間ありますから、上がらないとよく見えません。
畳ですから、履き物は脱ぎます。さすがに車いすのまま畳に上がるのは気が引けるでしょうから、最近、旅館などで使用されている、車いす用ホイールカバーのようなものを持参するといいかもです。畳敷きにしている以上、設置者側が用意するのがスジではありますけどね。ホイールソックスとか、車いす車輪カバーとかで出てきます。「車いすのスリッパ」というコンセプトだそうなので、車いすから降りない人は一組持っておいてもいいかもね。スリッパと違って、脱ぎ履きはオオゴトですけれども。
そこから畳に上がるにはもう1段20センチ上がる作りになってます。立ったまんま靴を脱ぎ、そのまま上がっていくことしか考えてません。靴を脱いでから縁側にしゃがんで靴の向きを変えられる人向きです。腰掛けるには低すぎて、座るのも怖い高さ、座ったら立ち上がれない高さです。
つかまれる場所は一つもなく、縁側はつるっつるにラッカー仕上げ、ワックスがけしてあります。高齢者も危険な感じだよ。
この縁側の作りを見ると、我が国が「下駄、草履、つっかけ文化」だ、っていうことを実感しますね。縁側の高さは20センチ。編み上げ靴の靴紐を締めてちゃんと履く、なんていう欧米文化とは異質ですな。わらじの人は裏口の土間から入れ、という文化だ。
狭い敷地に圧迫感なく設計したためか、ギャラリーは吹き抜けの2階建てで、階段室はなく、踏み板と柵のみの鉦折れ階段(かねおれ階段:踊り場で折れている階段)です。
「美術館側は、狭くて急」としていますが、駅の階段よりちょっと緩いくらいかな。車いすお神輿も無理ではないくらいの広さはあります。
2階は、一般民家ほど低くはないですが、むやみに高くもないです。
手すりは、柵がそのまま手すりを兼ねているもの。握りしめるには太すぎるかな。
今のところ、人力で上げるしかない、というのは事実ですので、そこはそれで。
2階は、回廊状というか、キャットウォーク作りになっています。外側の壁4面が展示板となっていて、くるっと一周する感じです。。
展示室の幅は、2メートル程度ですかね。通常の車いすが入って身動き取れなくなる、ってことはありませんのでご安心を。
吹き抜け側には2面の展示ケースが置かれています。展示ケースは、やや高めに感じました。車いすの高さではほぼ見えません。よーのすけの場合、太い木枠がちょうど目の位置に来ます。
トリッキーな言い抜けではありますが、これだけ木枠が太くて出っ張っていると、ガラスケースに触れることなく掴まれてしまいます。もちろんがっちりとは掴めませんが、ちょっと支えるくらいなら。「ガラス面に触るな」とは書いてありますけどね。
1階から地下に降りる階段は、内階段と外階段があります。内階段は、狭い階段室で、よーのすけは使いませんでした。
地下の手拭い屋かまわぬに入る外階段があります。斜面にある建物なので、地下1階は一部が半地下になっており、外階段はそちらにつながるため、階段数が若干少ないです。外階段の手すりのフォーマットは、2階へと1階をつなぐところと同じですが、間口は半間くらいしかないです。内階段の間口も同じくらい。地下へのお神輿はちと厳しいかもな。
展示室までには、さらに3段ぶんくらいの階段があります。ベニヤ板が一枚スロープとして用意されていました。
展示室は、手拭い屋の分だけ上階よりも狭い殺風景なワンルーム。
美術館内にはあるわけもなく。
ラフォーレのレベルの年代のビルにもないんだな、これが。大混雑の原宿でトイレ探すのはなかなか大変だす。
よーのすけが、見つけて実際に使ったのは以下3カ所。いずれも扉の向こうに人の気配がしたので、記録を取る暇がありませんでした。
JR原宿駅とか他にもあるはずですが、よーのすけが見つけられたのはこれだけ。
簡易電動車いすに乗って、ひとりでぶらりと出かけたのが、2016年9月末の土曜日のこと。
二度目の訪問では、対応が変わっています。あまり不愉快なエピソードは載せるべきではないとは思います。しかし、他方で、今ひとつ、完全には信用できないかも、といういきさつがあるので、このレポートをした2度目の訪問に至るまでの経緯を一応公開しておきます。
受け付けでチケット買おうとしたら、「当館は階段しかないので…」とのこと。「じゃ、階段歩いて登りますから、後から車いす上げてくださいな。」と言ったらば、それはできぬ。1階だけなら無料で、と言う。まあいいか、ガラ空きだし、階段手すりあるし、下に乗り捨てて上がってみっか、と、とりあえず中へ。下から見上げると2階は吹き抜けで2階の柵伝いに歩けばちょっとは見られそうだ、と思ったのですが…。
ここでまさかの入館拒否。車いすを隅に乗り捨てて、畳の小上がりを這いずって眺めていたら、事務所の人が飛んできた。小上がりによじ登るとは想定外だったらしい。
「こちらはエレベーターもスロープもないので。」はいはいそれは聞きました。ほっといてください、2階は勝手に上がりますから。手伝ってくれなくていいです。「2階は狭いので車いすを上げられません。」だから、勝手に上がるからほっといてくれ、と言ったのですが…。
よーのすけを入館拒否したときの美術館側のいいぶんをざっくりとまとめるとこうなります。
2016年4月施行の「障害者差別禁止法」のガイドラインに、完全に引っかかってるもんもありますが、その当否はさておき。意味不明のものもいくつかありますな。車いすユーザーを見たことがなければ、一般人の反応は、こんなもんかもしれませんね。
差別的応酬の山をこんもり築き上げた後、防犯カメラで中を見せてもらって、サポート体制の見当を付けました。そして、責任者がいるときに来場日を伝えれば良い、という言質取るところまで持ってきました。
「1階はタダですが、2階と地下は付き添いの分も入場料いただきますからね。」
脅しとも聞こえる最後のセリフ。鑑賞できる保障なしに入場料払え、って言っちゃう?
最初の訪問で見てきていますから、「階段はたいしたことないな」と思いましたが、さすがにちょっとヤバそうなのは、「2階が車いすが通れないくらい狭い」ということ。結局2階へは上げてもらえず、監視カメラでだけの確認でしたから。古いダイソー店舗やヴィレッジヴァンガードじゃあるまいし、常識的には、平面作品を壁掛け展示しているギャラリーで、観賞用通路がそんなに狭いとは思えませんでしたけどね。防犯カメラで見た範囲では、十分な幅もありました。が、カメラで見えないところは半間ないのかもしれない。万が一、ということもありえます。
掴まり歩きができるよーのすけとしては、本当に館の人が言うほど狭ければ、吹き抜けの柵沿いに掴まり歩きすれば十分見やすい距離なので、かえって好都合なんですけどね。
「車いすを上げられないくらい通路が狭くて、歩ききれないほどべらぼうに広い」というのが、考えられる限り最悪の状況でした。なので、信用のおけるガイドヘルパーに加え、歩かせることについては最強の支援者、「よーのすけの母」を応援に頼みました。おまけで「父」。支援者3人体制です。「付き添いがいない」とは言わせんゾ。状況を考えて、車いすは、OX手動のFusion機。
来館予告をして、意気込んで行ってみると、迎える側もチョー緊張してました。こ「責任者」をはじめ、4、5人が事務室からわらわらと出てきて…。先日来た週末には事務室の中にもこんなに人いなかったのにー。これだけの人数出て来るということは、おみこしする気だったんだろうか? あ、もしかして電動で来ると思ってた?
「車いすも買いました。7キロで、軽いって聞いたもんで、これだ、って即買い。」頑張ったのはわかるけど、かなりズレてるよな。軽いのはタイヤのサイズ分で。介助用の車いすに乗り換えさせる、ってことは、自分らがずっと付き添います、って宣言してることになりますけど、それでもいいの?
よーのすけン実家くらいの建坪(けっこー豪邸に住んでいた)しかないから、こりゃ歩けるわい、とは見切ってましたが、今回は、「車いすが通れる幅がない」なぞとは言わずに、乗ってきた車いすを2階に上げてくれました。前回のあの騒ぎはいったい何だったんだか。
今回は歩いて階段上がっちゃいましたが、誰かお神輿頼んでみてくれないかなあ。ねえ。
2階よりむしろ地下に降りる方が少々難物です。展示室はワンルームでゆとりがあるのですが、階段がいずれも狭くて、これはちょっとお神輿は無理っぽい。さらに陳じ質にまでに3段くらいの階段がありますが、そこには手すりがないです。地上から階段を降りた後、館の方のスタッフが割り込んできて車いすを入り口へ引いていったのですが、しっかり他のお客さん引っかけてました。こりゃ、やるな、と思ったら、やっぱり…。でも、引っかけたことにさえ気付かないほど必死で…。こっちに任せてくれる方が安全なんだけどなァ。
まあ、一発目、やってみたから、次に誰か行ったときに、もう一歩慣れているといいですけどね。
「来館通告」を、今回ヘルパーにさせました。自分の所属事務所を名乗って、電話をかけたヘルパーによれば、「すごく感じが良かった。」
しかし、その直後、「入館拒否」の話を耳にして、電話で問い合わせた車いすユーザーさんに言わせると「無理ゲー言われた」。
そして、よーのすけが訪問した後に行った健常の人が、車いす対応について聞いたら「丁重だった」。
これ、長年「障害者」をやってきたよーのすけには、なんかキナ臭い感じがするんですよね。問い合わせるなら、「介助者」を装わないとアレかな?みたいな。
最初の訪問時、「エレベーター及びスロープの設置がないと、サイトに記載してあったかもしれないが、2階には上げないとは書いていないだろう」と、粘りました。「入れないなら入れないと書いておけば」と提案してきました、それ明言したら、完全に差別になりますから、まさかやらないだろう、やったら公式にねじ込める、と思っていたら、記載、こうなってたんですよねえ。
当館にはエレベーター及びスロープの設置がないため、建物の構造上及び安全管理上、1階展示室のみのご見学とさせていただきます。何卒ご了承くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。ご不明な点などありましたら、お電話にて美術館に直接お問い合わせ下さい。
さすがに、誰かが忠告したのか、今は削除されてます。「車いすの人に書けって言われたんで書きました」っていう単なる「考えなし」ならいいんですが、こっちが本音だったらアレかな?みたいな。
これで、よーのすけの持っている情報は全部吐き出したと思います。興味のある人は、うまく立ち回って、お出かけください。持ってるものはすごいです。