よーのすけのおしゃべり修行

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 あまり障害にコンプレックスのないよーのすけが、唯一コンプレックスなのが、この言語障害って奴。せっかくボケかましても、聞き取られなくて、え、何、と聞き返されたときの悲しさといったら、もう…。いや、そういうことじゃなくて。

 仕切直し。

 このホームページの無駄口の多さを見ていただければおわかりのように、よーのすけは、元来とてもおしゃべりです。しかし、美しくしゃべれない、というのが結構コンプレックスになっていて、外では「無口」だと思われていたりします。手伝いをお願いするにしても、ややこしい指示を口答でうまく伝えられない、というのは、非常にやっかいです。移動に困難を伴う障害を持つ場合、「電話」はこの上なく強力なツールになりますが、これの使用を封じられますので、これは大きな制約となります。「自分で言うほどわかりにくくはないぞ」とも言われるのだが、やはり劣等感があるんだなあ。言語障害は、実は歩けない・手が不自由以上の重度障害になりうるものです。

幼児期

 言語を獲得するこの時期、口唇運動の不全は、大きな発達障害をもたらすはず…なんですが。
 よーのすけ、しゃべりだすのは早かったらしい(ちなみに妹くんも言葉は早かったから、そういう環境だったんだろう)。で、このころのよーのすけ、現在の「吃音」風、というか、「息、止まっちゃってない?」みたいな話し方はしていなかったそうです(母の淡泊な記憶による)。のどを締め付けたような話し方をしていたという。しかし、自分の記憶では、最初から「話す=吃る」なので、たぶん3歳頃には、話し方のパターンが決まっていたのでしょう。  大人たちはとにかく歩かせなければ、と思っていたので、ST(Speaking Trainning)は、していません。しかし、このことが後に、大きなしくじりであることが判明します。

言葉の教室

 あまりにも「話すこと」へのコンプレックスが大きいのを見かねたのか、小学校5年生から、隣接小学校で開設されていた「ことばの教室」に週一回通うことになります。特に「吃音」等の治療を目的に設置されていた教室です。舌のトレーニング、長く息を吐く、音読などによるレッスンを受けました。しかし、「脳性マヒ」によるマヒには歯が立たず、特に進展もないまま、小学校卒業と同時に、そこも出ます。

マジでリハビリ…のはずだったけど

 「電話が怖い」ため、就職も躊躇してしまったよーのすけでしたが、あるとき、「30分の報告をすること。ただし言語障害があるから、40分におまけしてやる」と言い渡された。ぎょえ〜、と動転して、思わず「リハビリセンター」に相談に駆け込んでしまいました。

 いくつか検査した後、「結構マヒがありますねえ」という結論になりました。
できるアドバイスとしては、

  1. 無理せず、息継ぎしやすいように、文節の区切りを短くして話す。
  2. 「出てこない言葉」を把握して、そういう言葉は言い換えて話す。
  3. 息が止まっちゃったら、一回息を吐いて仕切り直す。
  4. ゆとりを持った声の大きさを知り、それで話すようにする。

と、あと2項目ほど挙げてくれましたが、いずれも普段、「当たり前」にやり、すでに獲得した技ばかり。「そうでしょうねえ。それだけマヒがあって、それだけちゃんと話せる、という人は、あまりいませんもの。」とは言語療法士氏の評価。
 「そうかもしれませんが、それじゃ困るんで、ご相談に来たんです。自己診断では、呼吸がうまくできていないのに問題があると思うんで、その辺訓練で改善できないものですか。」と、食い下がるよーのすけ。
 言語療法士氏曰く、「呼吸ねえ。おっしゃることはあたっているのですが、呼吸のパターンは、2歳頃までに決まるので、そのころまでにしないと。…普通、そのころまでにトレーニングさせるはずなんですが、してないんですか。」
 このときほど、とーちゃん、かーちゃん、リハビリ関係者一同、みんなしてしくじりおったな、と悪態をついたことはない。
 結局、収穫なしで、放り出されたよーのすけ。

 で、結局「報告」はどうしたかって?
 やりましたよ。並み居る面々を前に、完全原稿を作って読み上げ。最初の20分ほどは、ぼろぼろでしたけど。マイクの使い方がわかると同時に突然ペースが出来てきて。「なんだ、このしゃべり方でマイクを通せば、ちゃんと聞こえるじゃん」とわかったら、もういつものしゃべり方。質疑応答も何とかこなし、妙な自信がついてしまった。
 よーのすけの場合、声のボリュームを上げずに済めば、それほど悲惨なことにはならないみたい。でもそのレベルで話すと、普通に話してても声が通らないので、声のトーンが上がり、吃るみたいです。拡声器持って歩きたいな、と思う、今日この頃です。

「言語障害者との会話」−健常者とのよもやま話

 結局、収穫なしで、放り出されたよーのすけ。

「言葉について、リハビリセンターに相談に行ったら、やっぱり放り出された」という話を、健常者であるA氏にしたところ、こんなコメントをくれました。なかなかおもしろいコメントだったので、再現します。


結局ですね、言語、肉体的にはリハビリ出来ない、ってことになりました。…頭を使って話せ、ってことに尽きるみたいですね。
A氏それは残念でしたね。あなたは、要するに、私たちが外国語で話しているのと同じ状況なんですよね。どの単語を使おうか、あ、これは語尾変化忘れたから、ほかの言い方しよ!とか、考えているのと同じですもんね。
なるほど。そうも言えますね。でも、Aさんは、私と会ったとき、全くヒビりませんでしたね。普通、もう少しひるむものなんですが。
A氏そりゃ、私らの同業者だ、って聞いていたから…
でも、外国語と違うのは、あなた、聞く方は普通に聞くでしょ。あのね、話すのゆっくりだと、聞く方もゆっくりかな、と思っちゃって、ついゆっくり話しちゃうのよ。
え、そうなんですか。
A氏私、しばらくしてそれに気づいて…
だから、今でも、あなたと誰かが話すとき、相手の話し方がゆっくりになるの、聞いてておかしくてさ。言ってあげようかな、と思うこともあるけど、自然に治るから。
あ、それで時々、「この人普通に聞いてるよ」って、おっしゃったりしてたんですね。相手同業者なのに、なんでやろなと思ってました。
A氏…普段そういう話し方してる人だと思ってた? そりゃ、同じことやってる人だから、別に、あなたの理解力疑ってるわけではないんだけどさ。無意識に、話し方変わっちゃうみたいんだよね。こっちが聞く方だけ気を付ければいいのだけれど。
だから、気を付けなくても聞き取れるようになると、普通のスピードになるの。
スミマセン…

しかし… ほんとになんとかならんものかね。(本音)

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車椅子で彷徨えば扉